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剣帝と呼ばれた一兵卒  作者: もやひと
アグムルーベ街道戦
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当惑

 今回の戦において、ブラナテラ軍の大将にして指揮官を務めていた人物、ルドヴィクスは、パウルスに事の説明を求めた。

 パウルスは極力簡潔に、こう答えた。

「運良くリーベルタ陣営のしんがりへ至り、幸運にも我が軍の矢が飛来したお陰で、敵軍大将の虚を突くことができました」

 嘘はついていないが本当のことも言っていない、というやつである。

 事実、戦うのが嫌で崖に穴を掘って隠れていたところ、たまたま敵軍大将が通りがかり、たまたまできた隙を突きました、などとは言えよう筈もない。

 ところで、ブラナテラ軍の兵士は左胸に勲章をつけている。パウルスの左胸のそれは、若草色の下地に黄色の一つ星。これはパウルスが一兵卒であり、実戦参加が初めてであることを意味していた。

「君は今回が初陣か」

「はい」

「訓練校の卒業成績は」

「二級です」

 二級――五段階評価での、上から二番目である。

「ふぅむ……」

 ルドヴィクスは不思議がる仕草で、パウルスの全身をくまなく観察した。

 パウルスはそこで初めてひとつの手抜かりに気づいた。

 彼の装備は土を被りこそすれ、傷一つついていないのだ。

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