スク水の女の子が水没した世界でラジオ体操をする話【短編】
────8月の、真っ青に透き通るような空の下で、その少女はラジオ体操をしていた。
この水だらけの世界でただ一人。まるで何かを守るかのように。
〜数日前〜
「ん。ここは…?」
少女が目を覚ます。ここは橋の上だろうか。
情報を得ようとあたりを見回すと水没した大量のビル。
おじいちゃんの家の外壁に生えていた蔦のような植物が所狭しと生えていることから相当な時間が経っていることが分かる。
なのになぜ建物に劣化が見られないのだろうか。
そしてなぜ少女はスク水を着ているのだろうか。
少女は少し考えたが更に重要なことに気づく。
「?…記憶がない?だめ、おじいちゃんのことしか思い出せない。」
なぜか『おじいちゃん』との記憶──それも一部分しかないようだ──以外の
記憶がなくなっていることに気づく。
やはり少女も一人では不安なのだろう。
どこか気怠そうな表情の少女はこう呟く。
「人さがそ…」
〜数カ月後〜
────今日も少女は一人で踊る。
入道雲がきれいな8月の空の下で。
まるで自分を守るように。
「やっと…見つけた…」
彼女の目の前にあるのは水晶のような浮遊体。
月光を閉じ込めたと言われてもすんなりと信じてしまいそうな、そんな雰囲気があった。
この数カ月、目に入ってくるのはビルか蔦のような植物か、
またはいやに透き通った水と空ぐらいしかなかったのだ。
そして見つけたこの水晶。
これが今の状況のヒントになるはず…。どこか確信した様子で少女は言った。
妖しげな光を放つ水晶に手が吸い寄せられていく。
少女の白く細い指先が水晶に触れたその瞬間。
パリンと乾いた音を立て、水晶が割れた。
「ぁ」
その時、少女はすべてを思い出した。いや、思い出してしまった。
いまから千年以上前、オートマタである私が進んだ技術とともにやって来た事。
共に進歩していた人間が私を脅威に思い破壊しようとした事。
私を守る派閥と進んだ技術で戦争をし、殆ど絶滅してしまった事。
残った数十人の人間が私と暮らした事。
毎日みんなと楽しくラジオ体操をした事。
最後の一人──おじいちゃんは私に孫のように接し、一人になっても辛くないようにと、
私の記憶をあの水晶に閉じ込め、破壊しようとした事。
みんなの記憶を忘れたくなかった私は抵抗し、水晶を遠くに隠し、気絶した事。
────おじいちゃんはもういないということ────
〜???〜
────10月、秋らしい澄んだ空が広がっている。
その下で少女は一人哀しく踊る。人間達と少女が生きていた証拠を一人で。
深呼吸の運動を終え、どこか満足気に微笑んだ少女はこう呟く。
「今いくね、みんな──おじいちゃん。」
その瞬間少女は操り人形の糸が切られたかのように倒れ込んだ。
はい!バリです!処女作です。異世界物とか書きたいんですけど、文章力上げるために短編からがいいらしいので、何本か書いてから長編に行きたいです。いろいろと酷い出来だと我ながら思いますので、
〇〇直したほうがいいよーみたいな感想をくれると嬉しいです。これからもよろしくお願いします。