[006]魔獣
エデンのみんなと暮らし始めて1ヶ月が経った。
「ヨシキ、畑で小さい大根を間引いたから、適当に料理して!」
「ふむ、やっと主要な作物が育ってきたな。ギリギリ間に合って良かった。」
最初の頃はとりあえず早急に食べ物を作ろうと考えて、カイワレダイコンのような直ぐに育つ作物ばかり育てていたのだが、やっと余裕が出来て、日数がかかる作物を育てられるようになった。これで、毎日サラダだけの日々は脱出間近だろう。
ちなみに畑はヨシキが成長促進の魔法をかけてくれているおかげで成長速度が約2倍になっている。現在育てているのは、大根、ジャガイモ、ミニトマトの3種類だ。......といっても、ここにあった種のうち、育てやすい食べ物がこの3つしかなかっただけなんだけど。
「ヨシキー!コオとヨシキの分の服も出来たわよー!」
「わかった。今そちらへ向かおう。」
料理はヨシキが担ってくれるらしい。調理器具は結構色々あるので、どんなものができるか楽しみだ。
「ヨシキ、こんな家具はどう?」
「いいんじゃないか?これはリビングに置こう。」
みんなが自分の担当することをこなしていて、こんな何もない世界でもある程度楽しく過ごせている。
「水を足しといたぞ。」
「コオか。ありがとう、助かる。」
今のところ特に困っていることはない。やっぱり、ヨシキの采配のおかげだと思う。無駄なくみんなが活躍できるのは彼女のおかげだ。
......と、トモが息を切らしてやってきた。
「ヨシキ!みんな!何かが来てる!」
「なんだって!?わかったそちらへ向かおう。」
コオが走ってきた方を見ると、何か青白く光るものが遠くに見える。
「狼型か。まだ少し時間があるな。みんなは我が家の中へ避難した方がいい。」
「でも......。」
「大丈夫だ。私は負けない。私を信じろ。」
「......分かった。」
僕たちは家の中に避難するも、気になってヨシキの方をじっと見つめる。
3分ほど経った時。ヨシキと狼は対峙した。互いに警戒しあってほとんど動かない。
しばらくすると、狼が動いた。
ヨシキは狼の突進を紙一重で避け、その丸出しのお腹に殴りを入れる。
狼はその攻撃で狼狽えたのか、方向を変えて逃げようとした。
が、そこにヨシキの容赦ない蹴りが入る。そして......
「これで終わりだな。」
ヨシキがさらにもう一度殴りを入れると、狼の動きは止まった。
戦闘を終えたヨシキは狼の死体を持って僕たちの待つ家に歩いてきた。
「喜べ。今日はお肉が食べられるぞ。」
「ヨシキ、それ、何?」
「ん?あぁ、魔獣さ。魔法を使う動物だと思ってくれて差し支えない。狼型は自己強化以外の魔法は使えないが、魔法を撃ってくるやつもいる。」
それって、結構危ないやつのような......?
「ヨシキはなんでそんなに強いんだよ。」
コオの疑問は最もだ。あんなにやばそうな動物をすぐに倒してしまうヨシキは、強すぎるような気がする。
「日々の鍛錬と......これのおかげさ。」
ヨシキは腕に巻いていたピンクの何かを解く。
「リボン......?」
「あぁ、そうだ。これは私が前に作った体を強化するリボンだ。」
ヨシキはすごい人だと思ってたけど、こんなものまで作るなんて、ヨシキって何者なんだ?
「ヨシキー、それ、私も欲しい。」
「エルがそういうなら俺も欲しいな。」
「僕も......。」
「私も欲しいわ。」
みんながそう言うなら......
「僕も欲しい。」
「分かった分かった。ちゃんと全員分作ってあげるさ。ちょっと時間はかかるけど、いいか?」
「「「「「うん!」」」」」
なんか、面白そう。そして、ヨシキとお揃いは嬉しいなぁ。
「さて、リボンのことで頭がいっぱいになってるところ悪いが、まずご飯の準備を始めようか。みんな、手伝ってくれるか?」
「「「「「うん!」」」」」
「元気な返事で何よりだ。じゃあまず、ライは......」
やっぱり僕はエデンが大好きだ。




