[005]仲間たち
ふぅ、こんなもんかな。
ヨシキの部屋から農具......クワを拝借して畑を耕し、同じく取ってきた肥料を混ぜ込む。
「クワなんか初めて使ったけど、重いなぁ。」
正直、僕は畑に関してはほとんど初心者だ。研究所の書庫には子供向けのちゃちい本があっただけ。だから、手探りで作っていく。
「広さは......これくらいでいいかな。」
多分、3メートル×10メートルほどだと思う。この広さに肥料を撒いて耕すだけでかなり時間が経ったような気がする。
「喉乾いたなぁ。」
これだけの作業をしたのだ。喉も乾く。
「悪いな、無理させて。」
その時、後ろから声が聞こえた。
「ヨシキと......。」
後ろにいたのはヨシキと、僕の近くで横たわっていた男の子と女の子が2人ずつ。
「あぁ、こいつらは......」
「......シュウ?あなた、シュウじゃない?」
と、ヨシキが説明を始める前に女の子の1人が僕に声をかける。
「......?僕の名前はライだけど?」
「いえ、間違いない、あなたはシュウよ。顔も、声も、あの時の面影があるわ。」
「そう言われても......。」
僕はこんな子知らないけどなぁ?
「キョウカ、一旦落ち着くんだ。彼はシュウではない、ライだ。ライはシュウの遺伝子情報を元に作られた......いわゆるクローンだな。」
え?僕が、作られた?
「ヨシキ、僕が作られたって......」
「あぁ、そうだ。だが、その話は後にしてくれ。とりあえず自己紹介を済ませておきたい。名前と能力だけで構わない。」
「......わかった。僕はライ。一応能力者で、能力は“探求”」
さっさと自己紹介を済ませて他の人の自己紹介を待つ。
「私はキョウカよ。能力は“精神の罠”」
まず、黒く長い髪の女の子が自己紹介をした。
「僕はトモ。能力は“認識阻害”」
そして、隣にいた背の高い男の子が言う。
「俺はコオ。能力は“水の操作”だ!」
更に、元気そうな男の子が続く。
「えと、私はエル、能力は“材質変化”、です......。」
最後に端にいた一番背が低い女の子が言った。
「そして、知っての通り、私はヨシキ。研究者をしている......いや、していた。」
ヨシキはそういうと、僕たち全員の顔をゆっくり見る。
「さて、これからのことを話そう。まず、我が家に入ってから、だな。」
ヨシキに先導され僕は再び中に入った。
「ここは電気も通っていて、更に幾十にも結界が張られているから絶対に安全だと考えてくれて問題ない。」
ヨシキは部屋の奥に座った。
「無骨なものだが、座っても居心地が悪いほどではないからな。少し座って話をしようか。」
そして、ヨシキは僕たち全員が座ったのを確認して話を始める。
「まず、衣食住の充実だ。ここには100食分......つまり、君たち5人で分けるなら20日分の食料がある。それまでに食は整えておきたい。」
「質問。」
トモがそういう。
「何だ?」
「ヨシキの分がない。」
確かに5人というと僕たちだけ。ヨシキはどうするんだろう?
「私の分は部屋に別で保管してある。安心してくれ。」
どうして別に保管を......?あ、もしかしたら、元々部屋に籠る予定だったのかな?
「話を続けるぞ。まず、飲み物に関して。これは、コオに頼るしかないだろう。コオの能力なら水を作り出せるはずだ。」
「もっちろん!任せとけ!」
「そして食べ物。この世界に動物がいるとは思えない。そこで、ライに頼んで畑を作ってもらっている。囲いの部分はエルの材質変化で作ってあげてくれ。」
「ん。」
「では、次。衣だ。と言っても目星は付いている。キョウカ、確か、裁縫ができたな?」
「う、うん、できるけど......。」
「全員の服を作って欲しい。材料はエルに作ってもらってくれ。」
「分かった。」
「最後に、住。これに関してはみんなでゆっくり作っていこう。この我が家をもっと住みやすい場所にしよう。」
「あの、僕は何をしたら......?」
「トモは周りに敵がいないか偵察に行ってくれ。まだ出くわしてないだけでこの世界には確実に、あいつらが生き残っているはずなんだ。」
「分かった。」
ヨシキは次から次へと的確な指示をしていった。
そして、最後に、
「では、我々は一つのグループとして行動しようと思う。せっかくだし、そこに名前をつけようじゃないか。何かいい案はないか?」
僕たちは顔を見合わせる。急にそんなことを言われてもなぁ。
そして、結局、ヨシキの発案でグループの名前は“エデン”に決まった。ヨシキ曰く、目指すべき幸せの世界みたいな意味らしい。今こそよく分からなかったが、僕はいい響きだと感じた。




