[004]始まりの物語(1回目)
「ん......」
光が差す。
「目が覚めたか?」
「......?」
目の前に顔がある。
「あぁ、悪いな。私はヨシキだ。」
後頭部が柔らかい。そこで、僕は上を向いていることに気がついた。
「君の名前を教えてもらってもいいか?」
「あ......ライ、です。」
目の前にいる女性......ヨシキは20代前半のように見える。服は全員黒ずくめ。そして、黒いベレー帽をかぶっている。
「すまないが、こっちの足も痺れてきてね。そろそろ立ってくれないかな?」
「......え?」
視界には顔の他に少し控えめな胸が見えた。......って、膝枕!?
「ご、ごめんなさい!」
急いで立ち上がろうとしたが、上半身を起こして次に立とうとしたところ足に力が入らない。僕はすぐに座り込んでしまった。
「あ......れ............?」
「あぁ......何されたのかは知らないが、変な干渉を受けてるからねぇ。」
「変な干渉......?」
「そう。生命維持を外部からの異物に依存しているって感じか。」
ヨシキが何を言ってるのか分からない。
「もう少ししたら体も慣れるだろう。そうしたら私と来てくれ。何者かは知らないが、ライ、お前の体の生命維持をしてくれてるやつに感謝するんだな。」
10分ほどすると、体に力が入るようになってきた。
「もう大丈夫か?」
「う、うん。」
でも、気になることが一つ。
「ここにいる子たちは大丈夫なの?」
近くには4人、子供たちが寝転がっている。
「問題ない。結界魔法を施しているからな。歪な魔法でもこういう時は役に立つ。」
......結界魔法?そんなものがあるの?
「さて、行こうか。我が家に。」
「我が家?」
「あぁ、そうだ。」
少し歩くと、洞窟のような穴がある場所についた。
「ここは......。」
「言っただろう?我が家だ。」
ただの穴にしか見えないよ?
「安心しろ、ここは私が隠れ家にしている......していた場所だ。何重にも結界が張られているから、安全だ。」
ヨシキは穴の中に入ると、壁にしか見えない場所で何かを押した。
「ほら、電気も通っている。」
ヨシキがそういうと同時に穴の中が明るくなった。
「入りなよ。元々研究室として作ったからまだ無骨だが、これから居心地のいい場所にしていくつもりだ。」
恐る恐る中に入ると、木で出来た壁が広い空間を象っていた。
「奥に10個ほど部屋がある。一番左の部屋は私が使っているから、それ以外なら好きな部屋を自分の部屋にしてもらって構わない。」
「は、はい。」
電球は広い空間に反して1つだけ。そして、家具系統のものも一切ない。
「さて、とりあえず、案内はここまでだ。今から君......ライにはして欲しいことがある。」
「何?」
「畑を作って欲しい。」
「......ん?」
「そのままの意味だ。幸い、肥料や種、農具はここに保管してあるのだが、場所がない。というわけで、この我が家の前にでも大きめの畑を作ってくれないだろうか。私は君たちをここへ運ぶことすら出来ないほど、非力でね。」
まさか、そんなことを頼まれるとは思わなかった。
「道具の類は私の部屋に置いてある。ライなら上手くできると信じているよ。」
「え、えぇ?」
「私は残してきた子たちのところへ戻る。何かあれば、我が家の中に戻れば絶対に安全だ。では頼んだ。」
ヨシキはそう言い残すと、穴を出て直ぐに来た道を戻っていった。
僕も再び外に出る。
「酷い、ね。」
目に入る色のほとんどが灰色。建物の残骸や......亡骸のようなものまで。
「まだ、13歳なんだけどなぁ、僕。」
普通の基準で言うと、中学生になったばかり。そんな子に畑を作れ、なんて......。
書庫に篭ってなければ分からなかったなぁ。
踏みしめた土の状態を確認する。
「うん、これなら、大丈夫かな。」
じゃあ、作るかな、畑。




