表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先導者ヨシキの物語  作者: 奈々宮 紬
1周目
4/10

[004]始まりの物語(1回目)

「ん......」


光が差す。


「目が覚めたか?」

「......?」


目の前に顔がある。


「あぁ、悪いな。私はヨシキだ。」


後頭部が柔らかい。そこで、僕は上を向いていることに気がついた。


「君の名前を教えてもらってもいいか?」

「あ......ライ、です。」


目の前にいる女性......ヨシキは20代前半のように見える。服は全員黒ずくめ。そして、黒いベレー帽をかぶっている。


「すまないが、こっちの足も痺れてきてね。そろそろ立ってくれないかな?」

「......え?」


視界には顔の他に少し控えめな胸が見えた。......って、膝枕!?


「ご、ごめんなさい!」


急いで立ち上がろうとしたが、上半身を起こして次に立とうとしたところ足に力が入らない。僕はすぐに座り込んでしまった。


「あ......れ............?」

「あぁ......何されたのかは知らないが、変な干渉を受けてるからねぇ。」

「変な干渉......?」

「そう。生命維持を外部からの異物に依存しているって感じか。」


ヨシキが何を言ってるのか分からない。


「もう少ししたら体も慣れるだろう。そうしたら私と来てくれ。何者かは知らないが、ライ、お前の体の生命維持をしてくれてるやつに感謝するんだな。」



10分ほどすると、体に力が入るようになってきた。


「もう大丈夫か?」

「う、うん。」


でも、気になることが一つ。


「ここにいる子たちは大丈夫なの?」


近くには4人、子供たちが寝転がっている。


「問題ない。結界魔法を施しているからな。歪な魔法でもこういう時は役に立つ。」


......結界魔法?そんなものがあるの?


「さて、行こうか。我が家に。」

「我が家?」

「あぁ、そうだ。」



少し歩くと、洞窟のような穴がある場所についた。


「ここは......。」

「言っただろう?我が家だ。」


ただの穴にしか見えないよ?


「安心しろ、ここは私が隠れ家にしている......していた場所だ。何重にも結界が張られているから、安全だ。」


ヨシキは穴の中に入ると、壁にしか見えない場所で何かを押した。


「ほら、電気も通っている。」


ヨシキがそういうと同時に穴の中が明るくなった。


「入りなよ。元々研究室として作ったからまだ無骨だが、これから居心地のいい場所にしていくつもりだ。」


恐る恐る中に入ると、木で出来た壁が広い空間を象っていた。


「奥に10個ほど部屋がある。一番左の部屋は私が使っているから、それ以外なら好きな部屋を自分の部屋にしてもらって構わない。」

「は、はい。」


電球は広い空間に反して1つだけ。そして、家具系統のものも一切ない。


「さて、とりあえず、案内はここまでだ。今から君......ライにはして欲しいことがある。」

「何?」

「畑を作って欲しい。」

「......ん?」

「そのままの意味だ。幸い、肥料や種、農具はここに保管してあるのだが、場所がない。というわけで、この我が家の前にでも大きめの畑を作ってくれないだろうか。私は君たちをここへ運ぶことすら出来ないほど、非力でね。」


まさか、そんなことを頼まれるとは思わなかった。


「道具の類は私の部屋に置いてある。ライなら上手くできると信じているよ。」

「え、えぇ?」

「私は残してきた子たちのところへ戻る。何かあれば、我が家の中に戻れば絶対に安全だ。では頼んだ。」


ヨシキはそう言い残すと、穴を出て直ぐに来た道を戻っていった。



僕も再び外に出る。


「酷い、ね。」


目に入る色のほとんどが灰色。建物の残骸や......亡骸のようなものまで。


「まだ、13歳なんだけどなぁ、僕。」


普通の基準で言うと、中学生になったばかり。そんな子に畑を作れ、なんて......。


書庫に篭ってなければ分からなかったなぁ。


踏みしめた土の状態を確認する。


「うん、これなら、大丈夫かな。」


じゃあ、作るかな、畑。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ