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先導者ヨシキの物語  作者: 奈々宮 紬
1周目
10/10

[009]特異点を越えた者

ぐにゃり。


世界が、記憶が、歪んだ。


さっきまでの時間が嘘みたいに。


キノウとの時間を嘲笑うかのように。


どうしようもなく、世界は歪んだ。


目は空いているのに、見えない。


耳を澄ましているのに、聞こえない。


立っているのか、座っているのか、寝ているのかさえ分からない。


ただ、そのまどろみの中、誰かが私を呼んでいる気がした。



急に世界は動き出す。


その瞬間、今までの世界は止まっていたということに気づく。


音が聞こえる。


私の生きたいって音が聞こえる。


感覚が順番に解放されていく。


自分が水のような物に浮いていることを知る。


自分があんな熱い中、眩しい中、生き残ったと知る。


そして、灰色の世界が広げられた。



私の目覚めと共に、私は放り出された。


「いた......かった............」


うつ伏せのまま、周りを見渡す。


瓦礫や壊れた建物が永遠に連なる世界。


そこで、私は、3度目の目覚めを経験した。


「これ......は............?」


ふと、腕に何かが巻いてあることに気がついた。


「魔法...使い......?」


それは“魔法使い”という文字が刻まれた、ピンクのリボンだった。


よく見ると、そのリボンの下にも、強く何かを巻いた跡が残っている。大きさ的にこれも同じリボンかな......?外に放り出された時に取れちゃったみたいだけど。


「誰か来た......?」


と、うつ伏せになってるから気づく。地面がテンポよく揺れている。......急にそのテンポが速くなる。


「ココロ!大丈夫かっ!」

「......ヨシキ?」


前を見た私と私を見ていたヨシキの目が合った。


「目覚めたのか!?大丈夫か?どこか怪我とかは......」

「大丈夫、だよ?」

「そうか......よかった............本当によかった......」


全身黒い格好をしていたヨシキは一筋だけ、涙を流した。そして、私を抱きしめてくれた。


「苦しいよ......」

「そ、そうか。すまない。では、少し急だが、我が家へ向かおう。」

「我が家?」

「うむ、私たち“エデン”が楽しく過ごしている家だ。」


ヨシキたちが楽しく過ごしている場所......?


「......行きたい。」

「連れて行ってやるさ。歩けるか?」


歩く前に立とうとしたが、上手く足に力が伝わらない。


「やはり、無理か。そうだな......おんぶでいいか?」

「うん、ありがとう。」


私はヨシキの背中に乗った。まだ感覚が弱くて物理的な暖かさは感じなかったが、ヨシキの私を想う言動が私の心に暖かさを与えてくれた。

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