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タヌキモ

作者: さきこ

冬の日の学校の帰りのことだった。

いつもは小学校が一緒だった友達と帰っていたけど、その日は皆部活やら委員会やらで忙しいらしく、一人だけで帰ることになった。冷たい風の音と、自分の足音だけが響く。普段とは違く見える通学路が、とても寂しく感じた。


黙々と歩いていた時、ふと横を見ると家と家の間に小さな道があることに気がついた。大人が一人ぎりぎり通れるくらいの道。草が無造作に生えていて、舗装はされていなかった。今まで周りをちゃんとみたことがなかったからか、全く知らなかった。

なんとなく気になったので、とりあえず行ってみることにした。


歩いていると、その道が思った以上に長いことに気がついた。一人だし早めに帰ってきたので時間もある。ちょうどよかったので最後まで行ってみることにした。カバンが重くて邪魔だったので、途中で置いていった。


進んでいくうちに、周りがだんだん暗くなってきた。日が落ちるにはまだ早いと思って空を見ると、曇ってきていた。生暖かい風も吹いてきていたので、雨が降るまでそんなに時間はないだろう。おかしいな、朝の天気予報だと今日は快晴のはずだったのに。でもなんとなくここで帰るのは癪だったので、とりあえず進むことにした。


しばらくして、頬に一滴の水が落ちてきた。やっぱり雨が降ってきた。帰ればよかったと後悔した。とりあえず雨宿りをしようと周りを見渡すと、道の側に木でできた小屋があった。年季は入っていそうだけど、作りはしっかりとしているようだった。

ドアノブをひねると、鍵がかかっていなかったのかすんなりと開いた。


お邪魔しますと一人で呟いて、中に入った。中はがらんとしていて、入ってきたドアの他には左の壁に一枚の開かない窓がついているだけだった。

しばらく窓の正面で外を眺めながらぼーっと座っていると、とても眠たくなってきた。静かで薄暗くて、外よりも暖かかったからだろうか。


寝てはいけないとハッとしたとき、入ってき

たドアの向かい側に違う扉があることに気がついた。こんなのあったっけ。薄暗かったから気づかなかっただけかなぁ。そう思いながら試しにドアノブをひねってみた。今度は鍵がかかっていたのか、開かなかった。


何度かガチャガチャと捻っているうちに、手がなんだかヌルヌルとしてきたというか、抵抗感が無くなってきた。なんだろうと思って手を離してみると、ドアノブが赤く染まっていた。

思い出したように掌が痛くなってきた。ヒリヒリして、指が全く動かなくなった。

なんだか怖くなったので、帰ることにした。


小屋から出ると、空が紫色に染められていたので、荷物を拾って急いで帰った。急に走り出したので、よろけてそのまま転んでしまった。


家に帰って掌を見ると思いの外重症だったらしく、血だらけで服が汚れてしまっていた。消毒して包帯を巻いた。



翌日学校で、クラスの友達にその話をしてみた。

そんなことあるわけが無いと彼は言った。信じていないようだった。夢でも見たんじゃないかと。だけど昨日の出来事は本当にあったことだ。右手がそれを証明していた。

だったら連れてってやるよ、と僕は返した。信じないなら仕方ない。彼は乗り気ではなかったようだけど。


放課後、彼と一緒に昨日の道まで行った。

道はちゃんとあった。もしかしたら夢だったのかもしれないと不安になっていたから、安心した。


道を進んでいくと、昨日よりも草が増えている気がした。なんだか景色が活き活きとしているような、なんともいえない違和感があった。


小屋の前に着いた。扉を開ける。中を見ると、窓も扉もあって、昨日と変わったところはなかった。ただ、赤く染まっていたはずのドアノブは元の銀色に戻っていたけど。


彼は、開けられなかった扉を開けてみようと言った。一度ドアノブを捻るだけなら昨日みたいなことにはならないだろうと。怖かったけど興味があったので、やってもらうことにした。


ドアノブを捻る。するとカチャンと小気味のいい音がなって、扉が開いた。

驚いた。まさか開くとは。昨日のはなんだったんだ。


ドアの中は階段になっていた。下の方は暗くて見えない。だけど湿った風が入ってきているので、どこかに繋がっているのかもしれない。


僕は入ってみようよと友達に言った。興味があった。この先がどうなっているのか。自分の開けられなかった扉を彼がすんなり開けられたことに納得がいかなくて、自分もなにか見つけてやろうという気持ちもあったけど。

彼はどちらでもいいといった様子で、いいよと返した。



階段を降りていくと、なんだか変わった臭いがした。今まで知らなかった臭い。形容し難い臭いで、頭がクラクラした。


後ろから、友達が気持ち悪くなってきたから帰りたいと言ってきた。同じ気持ちだったので、引き返そうかと言おうとした時だった。振り返ろうとしたら足が滑った。足元が油か何かで滑りやすくなっていたんだろうか。

不幸にも、その先には大きな穴があった。

あっと思ったときには遅かった。目の前にあった穴に落ちた。


その瞬間、僕の身体が溶けていた。




気がついたら、俺は一人で立ち尽くしていた。一緒にいたはずの友達は、目の前で転んだと思ったら穴に落ちて、溶けてしまった。混乱した。何が起きた?どうしてこうなった?

気分が悪くて頭も回らなかった。

とりあえず帰ろう、そう思った。


階段を登って小屋から出ると、空が紫色に染められていたので、急いで帰った。

気分が悪くてフラフラしていたので、途中で一回転んだ。


家に帰ってもとても気分が悪かったので薬を飲んだ。顔色がとても悪かったので、早めに寝ることにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あなたらしい世界観だと思いました。 もっとストーリーを深めればさらによくなるかと思われます。頑張れ~。 [一言] これからちょくちょく書いてくれるのを期待しているよサキさんww
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