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出会い②

 突然現れた少女に驚く。

 というか、この剣が創った世界に他に人が居るとは思っていなかったし、居るなんて剣は言っていなかった。

 それに、僕は人と話せないのだ。どうしろというのだよ……


「どうしたんじゃ?っと、この姿が不思議か?」


 そう聞きながら自分の体を見ている少女。しかし、その喋り方が聞き覚えがある気がする。そう、ついさっきまで話していた剣なのだが、いま、それはない。

 まさか……、剣、なのか?


「ふふふ、そうじゃよ。我がヘルベティア。この世界で最強の剣、片翼の人魔剣が一振りじゃ」


 どうじゃ!と言いながら胸を張る彼女は控えめに言っても可愛かった。

 整った顔立ちであり、白く長い髪は、後ろで雑にまとめただけだが、ずぼらには見えずに美しくさえ見える。

 元の剣の色と同じような、白をベースに青いラインが入ったドレスに身を包んでいる。

 背中が開いた形状のドレスのおかげで、少女からは幼さというよりも大人びた印象を抱く。しかし、この大胆な格好は、お洒落ではなく『翼』の所為なのだ。

 そう。彼女には『翼』が生えているのだ。神々しく美しい白い翼が。しかし、その翼は片方しかない。それが彼女を『片翼の』と名乗らせた原因なのだろう。


 『片翼では飛べないのじゃから、こんなのただのアクセサリーの様な物じゃがな』と彼女は悲しそうに呟く。

 しかし、それでも美しいと感じてしまう僕はおかしいのだろうか?

 彼女の美しさは、たとえ片翼だとしても損なわれる様な物ではなく、むしろ片翼という不完全さすらも美しさに変えてしまっている。


 そんな彼女に僕は目を奪われたのだろう。彼女に魅入ってしまった。

 それに気が付いたヘルベティアも「なんじゃ?我に見惚れたのか?」なんて聞いてくる始末。

 それに慌てて答えようとすると、「すまんのぉ、我には心に決めた相手がいるのじゃ」と笑いながら言ってくる。

 どうやって反応すればいいのか僕は分からないい。

 そんな僕を置いてヘルベティアは話を始める。


「おぬしがこの世界で何をするにせよ、我はついていくぞ?暇じゃったからの。

 とはいえ、我という、ちーと?とかいう物に頼らないとしても、この世界は平和じゃないし、優しくなんかない。

 おぬしも見たじゃろ?我が創ったこの箱庭に逃げる前、兵士の最後を。戦うための訓練なんて笑いながら踏み躙れる様な化け物がいくつもおるのじゃ。むしろ、あれは弱い方じゃぞ?

 そんな世界に生きる術の無いおぬしを放置したら、一日だって生き残れまい。

 故に、おぬしに再度問おう。我を使わぬのか?」


 その聞き方で、僕の心はぐらつく。今までさんざん断ってきたのだが、ヘルベティアの言葉は優しさ、親切心からきているのが分かるからこそ、僕は迷ってしまったのだろう。


 でも、断るって決めたから。

 そう思いながら僕は首を横に振る。


「それがおぬしの選択か。

 本当におぬしは面白いのぉ。他の転生者は簡単に強力なチカラを手に入れようとしておったのじゃが、ここまで頑なにチカラを拒否するとは……」


 あきれたようなヘルベティアに申し訳なく感じた僕は謝ろうとしたが、それすらも彼女は笑い飛ばした。


「何を申し訳なさそうにしておるのじゃ?おぬしの生き方に我は文句など言わぬぞ?おぬしの人生じゃからな、好きなように生きてほしいのじゃ。

 じゃがのぉ、流石に丸腰は不味いのじゃ。

 武器を持っていないとそれだけでなめられてしまうのじゃ。

 じゃから、これはお願いじゃ。

 我みたいな協力ではないのじゃが、使用者はもともと居らんかったし、製作者はもう生きておらん所為で埃をかぶってしまっている刀が在るのじゃ。

 別に使え、と言っておるわけでは無い。じゃから、装備だけしてくれんか?」


 そう言って虚空から一振りの刀を取り出す。

 黒い鞘に、黒い柄、そして、艶消しされた黒い刀身。

 全てが黒で染められた刀は、何故だかとても美しく感じた。


「製作者は、我のもう片方の翼である魔王じゃ。

 銘は……、いや、言わぬ方が良いじゃろう。きっとおぬしなら何時かは分かるじゃろうしの」


 与えられたチカラなんて必要ないと思っていたのに、何故だかこの刀には手が伸びた。

 少し驚きながらもヘルベティアが刀を渡してくれた。

 ヘルベティと違い、強すぎるチカラを感じなかったというのも原因の一つだろう。

 しかし、それよりも初めて持ったはずなのに、少し重い、その重さすら、しっくりくる。

 まるで、自分のために創られた様に、何度も握ったかのように手になじむ。


「それには一切の強化魔法は仕込んでない。ただ、壊れず、鋭く、軽い。それだけじゃ。

 唯一の特殊能力は、今のおぬしには使えんし、気にすることは無い。

 それはただの使い勝手の良い刀ってだけじゃ。

 それを生かすも殺すもおぬし次第じゃ。

 使ってくれるか?」


 それに対して、今度は首を横には降らない。

 何故だかわからないのだが、この刀は放したくなかったのだ。

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