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98 魔王の妻、発光する

 いつもレイティアさんはまぶしいと感じていたが――


 比喩ではなく本当にまぶしかったのか!


「えええっ! レイティアさん、何が起きてるんですか! むしろ、起きてください! 異常事態ですよ! レイティアさんの体がおかしいです!」

 ワシはレイティアさんの体を揺さぶった。

 寝相が悪いとかそういった次元のことではない。特異体質にもほどがある!


「うぅん? あなた、何かありました? もしかして、怖くて一人でトイレに行けないとか?」

「違いますよ。そんな情けない魔王がいたら嫌です! もっと重大なことです!」

「重大?」


 レイティアさんはまだ何もわかってないらしい。

「そういえば、明るいですね。ランプの灯かり、つけたんですか?」

「いえ、つけてません。発光しているのはレイティアさん本人です!」


 しばらく、レイティアさんが固まった。

「も~、夜中にふざけないでくださいよ~。わたしが光るわけないじゃないですか。ホタルじゃないんですから~。それにホタルって発光してるの、大半はオスらしいですよ~」


「いえ、レイティアさん、おなかのあたりを見てください。これ以上ないというほどの証拠がありますから」

 レイティアさんは自分のおなかを見た。


「うわ~、まぶしいですね~」

 そんなにゆるい反応で終わるようなことではないと思うが、パニックになっても何も解決しないし、むしろありがたいか……。


「これはどういうことなんでしょうか、あなた」

「いえ、むしろワシが聞きたいぐらいです」

「アンジェリカに聞いてみようかしら。あの子は勇者だから、光ることも知ってる気がするし」

 そういうものなのだろうか。勇者だから発光に詳しいなんてことはないと思うが……。


 けど、どちらにしろアンジェリカにも説明せねばなるまい。

 それにレイティアさんが光っている間に伝えたほうが信じてもらえるだろうし。発光が収まってからだとしょうもないウソをつくなと言われそうである。


「それじゃ、あなた、あの子の部屋に行きましょうか」

「あっ、でもワシがあいつの部屋に入ると怒るかもしれんので、ワシは部屋の前で待ってます」


 レイティアさんが光ってくれているおかげで、夜中でもまったく問題なく、アンジェリカの部屋まで移動できた。


 レイティアさんがアンジェリカの部屋の扉を開けて入っていく。

 自分の体にあそこまでの変化が起きて、あんなに堂々としていられるものだろうか。

 レイティアさんって幼い頃、何かとんでもない経験をしたのではないか? いくらなんでも性格の差という次元を超えているぞ。


 ワシがのぞくのもどうかと思ったので、念のため外側からアンジェリカの部屋の扉を閉めた。当たり前だが、途端に暗くなった。


 約二十秒ほど後。


「ママ! どうして光ってるのよーっ!」

 アンジェリカの絶叫が聞こえてきた。

 最低でも、アンジェリカが何も知らないことはこれで確実になったな……。


「まさか魔王に変なことされたんじゃないわよね? 光る媚薬を使われたとか……」

 あいつは何を言ってるんだ! そんなアイテムないわ!


「違うわよ~。ガルトーさんもびっくりしてたわ」

 これでワシが疑われることはなくなっただろう。


「ねえ、アンジェリカ、ママってかっこいい? 新しい力に目覚めちゃったのかな~?」

「呑気に言いすぎでしょ! とんでもないことになってるんだから焦ってよ!」

 このあたりのアンジェリカの反応はワシと同じようだ。


 夜中ではあるが、家族会議を開くしかないな……。



「ええー、というわけで、レイティアさんの体に関する家族会議を開きたいと思います……」

 ワシが年長者だし、司会をすることになった。魔王だったので、議長みたいなポジションをやるのは慣れている。

 レイティアさんが拍手をしていた。飲み会みたいな場ではないので、拍手はいらないです。


「夜中に起きてるって、なんだかわくわくするわね~」

「ママ、子供っぽすぎるわよ」

 ううむ……。当事者が一番のんびりしているから緊迫感はみじんもないな。


 なお、灯かりはレイティアさんの光を使っている。

 有効活用してる場合かと言われそうだが、ふざけているわけではない。


 部屋を明るくしすぎてしまうと、レイティアさんの発光の強さがわからなくなってしまうのだ。たとえば、急に光が強くなったりしたら、何かヤバそうだぞとわかるわけで、そのためにも部屋は暗いほうがいいのだ。


 しかし、ヤバそうとわかっても、対処策は何もわからんが……。


「魔王、この魔法に心当たりはないの?」

 アンジェリカはまだ少しワシを疑っているらしい。

 そりゃ、ワシがレイティアさんと同じ部屋で寝るようになってから発現したわけだから、しょうがないか。


「ない。そもそも魔法かどうかすら不明だ。むしろ、勇者であるお前に心当たりがないか聞きたい」


「洞窟の闇を照らす魔法はあるわ。でも、こんなふうに人間が光ったりしないわよ。洞窟の中で思いっきり目立つし……」

 アンジェリカの言うとおりだ。こんなの、モンスターを引きつけるまとみたいなものだ。危険にもほどがある。


「お前もわからんとなると……ワシらの魔法によるものではないのか。あっ、そうか」

 わしは、ぽんと机を叩いた。


「何よ。原因がわかったの?」

「原因まではわからんが、偉い魔族のワシは周辺にかかっている魔法をまとめて解除する技を持っている。『深淵に響く咆哮ほうこう』というものだ」


「あ~、勇者パーティーが攻撃力や防御力を高める魔法を連発してきた時にリセットするやつよね。魔王の立場の奴って、よく使うわよね。かつての勇者も、当時の魔王のそれで苦しんだって手記によく書いてたわ」

 本で自分の能力を娘に知られるって変な気分だな。


「じゃあ、てっとり早い解呪の方法があるのね。一件落着だわ」

 いや、発光した原因がわからなければ全然解決してないぞ。

ガガガブックス2巻の発売日(19日)が近づいてまいりましたが、活動報告にフライセのキャラ設定画像を追加いたしました! ごらんください!

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