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魔王です。女勇者の母親と再婚したので、女勇者が義理の娘になりました。  作者: 森田季節
魔王、娘が他国の勇者と戦うことに心配する編

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91 魔王、勇者をあわてて鍛える

数字は出せないんですが、マンガワンさんでの漫画の連載、新連載の中ですごく上位に入ってたようです! うれしいです! 小説のほうもしっかりやっていきますので、よろしくお願いいたします!

 ワシは空間転移魔法で、アンジェリカとともに王都にやってきた。

 王都には何度か来たことがあるので、しっかり空間転移魔法の範囲内である。


 アンジェリカは王様のところにお目通りに行ったので、その間にワシは冒険者ギルドに向かった。


 ギルドに入ると、冒険者たちから「げっ、魔王が来た!」「おいおい、ギルドに魔王が来る時代かよ……」「やっぱ、強そうだよな」なんて声が聞こえた。


 やはり、顔を見ただけですぐわかるのか。どうでもいい。好きなように噂してくれ。


 受付の若い女性はワシが前に来たことで、かなりビビっていた。

 別にギルドを攻撃したりはせんぞ。でも、たしかに、今のワシはちょっと顔が怖いと思う。どっかの都市一つぐらい焼き討ちにしそうな、いかめしさがあるはずだ。


「あの……ど、どういったご用件でしょうか……? 冒険者が失礼なことでもしましたか? その場合はお詫び申し上げます……」

 クレーマーだと思われているらしい。魔王がクレーマーとしてやってきたら、接客側はかなり最悪だよな。ワシでもわかる。


「情報を知りたい。隣の公国の勇者についてだ。場合によっては冒険者を雇おう。情報量が必要ならいくらでも出す」

「ということは、勇者コククのことですね……。ギルドで知り得ている範囲であればお話しできますが……」


 ワシは勇者コククについての内容を確認した。隣国の冒険者とはいえ、この国のギルドでの仕事をしたこともあるらしく、データがちゃんとあった。


 ギルド登録されている冒険者にこっちから依頼する時のためのプロフィールみたいなものがあり、それは資料として入手できる。

 本人の営業のために作成したプロフィールだから、不都合なことは書いてないだろうが参考にはなる。少なくとも業績は絶対に書いてあるから判断材料として使える。


 ワシはそれを王都のカフェテラスで何度も確認しつつ、ため息をついた。


 やはり、人間の冒険者としてはすぐれているようだ。

 でなければ、勇者になどなれんからな。公国では期待の星というか、おそらく実力でもナンバー1なのだろう。


 一番の問題は、アンジェリカと比べて強いか弱いかという点だが――

「多分、アンジェリカよりも強いな……。一対一なら隙を突けるだろう……」


 能力的な面は、アンジェリカよりずば抜けて上というほどのことはないと思う。

 公国はモンスターも同業者である冒険者も弱いし、修行する相手にも恵まれていなかったということだろう。


 しかし、アンジェリカは経験が浅い。

 一対一の対決となれば、経験が豊富なほうが確実に有利だ。人間同士の対決だからこそ、モンスターとの戦いと違って心理も読みやすい。


 アンジェリカはただでさえ、すぐに表情に出るタイプだし、フェイントでもかけられたら、あっさり罠にはまるのではないか。


 しかも、アンジェリカ側と違い、相手は勝った時に得るものが大きい。

 王国の勇者を破った者として公国に凱旋できる。気合いだって無茶苦茶入っているだろう。


「あっ、魔王、いたいた~」

 そこにアンジェリカがやってきた。このカフェを待ち合わせ場所に設定していたのだ。


 アンジェリカは席につくなり、右の人差し指で頬を軽くかいた。

 どうも、言いづらいことがあるらしい。

「なんだ? 怒ったりしないから思ったことを言え」

「あのさ、公国の勇者との対戦のことなんだけどさ……聞いた感じだと、けっこう強いみたいだね……」


「今になって気づくな! だから、不用意に対戦を決めてしまって、よろしくない事態になっておるのだ!」

 ワシはドンとテーブルを叩いた。ちなみに力任せに叩くとテーブルを破壊することになるので、かなり力はセーブした。


「怒らないって言ったじゃない! 魔王だからってウソをついちゃダメなんだから!」

「それは……まあ、そうだな……。以後、気をつける」

 言ったことは守らなければならない。


「いや~、どうせ、公国の冒険者なんて楽勝だよねと思ってたんだけどさ、この五十年ぐらいで急速にその差が縮まってきてるらしくて、王国の冒険者が負けることもあるみたいだね……」

 そういう研究、もう一日早くしておいてほしかった。


「その割にまだ公国の冒険者は弱いって風潮はあるみたいで、余計に向こうはフラストレーションがたまってるっていうか、ハングリー精神があるっていうか……」

 短時間の割には、よく理解してきておるではないか。

 惜しむらくは、その理解が対戦がすでに確定してからだということだ!


「お前は早とちりなところをなおせ……。それで人生を損するのはお前だ」

「しょ、しょうがないじゃない……。何かのきっかけがないと、公国の冒険者事情なんて確認しようとしないしさ……。うん、私は悪くはないわ……」

 いや、絶対にお前にも非はあるぞ。


 しかし、アンジェリカを責めても何も解決はしない。今更、誓約書を破棄する理由はつけられんだろう。

「やむをえん。今日から徹底して特訓をするぞ。あんな勇者に負けないようにお前を鍛える」

「望むところよ! そうよ、今から超強くなれば、何も問題ないのよ!」


 その部分では意見が一致した。

 だが、時間は限られているからな……。

 この短時間でどれだけ強くできるのだろうか……。


 ワシはその日からアンジェリカの力量が上がるようにできるだけのことをした。


 トレーニングメニューも運動などに関する魔族の専門家に作らせた。

 日中は魔族の城に連れていって、こちらの軍人とできるだけ実戦形式の練習をやらせた。敵の仕掛けた罠にはまらないためには、罠にはまって痛い目を見ているのが最も早い。


 さらには家での食事も、筋肉がつきやすく、かつ体力の回復が速いものにした。レシピをレイティアさんに見せて作ってもらった。


「これ、どれも薄味でおいしくないわ……」

「我慢しろ。強くなるためだ」

「あとでお菓子食べよ……」

「いいや、ダメだ。間食は一切禁止。運動選手の気持ちになれ!」


 メンタルも鍛えておかないと、モチベーションが高い公国の勇者に勝てない。


小説2巻は2月19日刊行予定です! よろしくお願いいたします!

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