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魔王です。女勇者の母親と再婚したので、女勇者が義理の娘になりました。  作者: 森田季節
魔王、家族サービスで旅行をする編

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75 魔王、水着に戸惑う

 水着姿のアンジェリカとレイティアさんが走ってきた!


「この日のために、ママとかわいい水着を買いに行ってたの。南国に似合うように花の柄にしたんだけど」

 たしかにアンジェリカの水着は花柄だ。ええと、こういう構造の水着はビキニというのだったか。魔族の土地にはなかったので、あまり詳しくはないのだが。


 あと、腰のあたりに布みたいなのを追加で巻き付けているのは水着の世界でのオシャレみたいなものなのだろう。


 それにしても、なんというか、その……。

「その水着、かわいいとは思うが、その……布の面積が少なくはないか? これではまるで下着だ」

 ワシはアンジェリカのほうを直視できず、目をそらした。

 義理の娘の下着姿をじろじろ見たら、親として論外だろう。それと似たようなものではないかと思うのだ。


「いや、魔王、私が痴女みたいな反応するの、やめてよ……。そんなセクシーなのじゃないし。あと、海に水着を着るのは常識でしょ。裸で泳いでいいわけないし。恥ずかしいとか以前に、それは犯罪よ」

 アンジェリカの言葉は筋が通っていると感じるのだが、いまいち腑に落ちない。


「でも、冒険者って森や山で泉を見つけたら、裸で水浴びしているイメージがあるんだが……」

「それは冒険者の常識でしょ。あと、冒険者ってどっちかというと、男社会だから、豪快なんだと思うわ。それに戦う時には余計なものはできるだけ持っていかずに身軽になってるほうがいいし」

「うむ……。それはそうだと感じる……」


「でも、最近の冒険者の中には水浴び用に水着を用意しておく人もいるらしいわよ」

 人間社会も知らないうちに、けっこう変わってきてるな!


 これは地域的な差なのか。魔族の土地で泳げるような場所って、かなり少ない。有毒なクラゲとか川のほうにまで棲息していたり、そもそも水が濁ってたりして、鬱陶しいのだ。


「それとさ、セクシーっていうのなら、ママのほうが強烈でしょ」

「え~。そうかしら。でも、このほうが胸がきつくないのよね~」

 レイティアさんは、今もいつもと変わらぬ、のほほんとした態度だが、ワシのほうはそうはいかなかった。


 アンジェリカと同じようなビキニに分類されるものなのだろうが、胸のところの布は首のあたりに紐をかけて、引っ張り上げるような構造になっている。

 そのせいか、とんでもなく胸の大きさが強調されている!


「ガルトーさん、どうかしら? アンジェリカみたいに派手な色や柄のは似合わないなと思って、清楚な白の水着にしてみたんだけど」

 ワシは改めて、レイティアさんの水着を確認した。本当だ。シンプルな白だ。胸のことが気になって、色のことすら脳に情報として入ってきてなかった。


 しかし、絶対に清楚ではない!

 どっちかというと、淫靡という表現のほうが適当だ!


 もっとも、妻に淫靡な水着ですねという夫とか、最悪である。

「ええ……。大変よくお似合いですよ……。ワシにはいささか刺激が強すぎますが……」


「あはは! 魔王、ママの水着に照れてるよ! 堅物の奴って、こういうのに耐性がなさそうだけど、本当なんだ!」

 アンジェリカに笑われた。ワシとしては、なんでアンジェリカもレイティアさんも恥ずかしいと感じないのかのほうが謎だぞ。


「ガルトーさん、ごく普通に接してください。ずっと目をそらされたら、わたしも困っちゃうわ」

「ですね……。わかりました……」

 レイティアさんに視線を向ける。

 自分の何かにダメージが入った気がした。


 ああ、目に毒という表現があるが、この場合、まぶしすぎて見ることでダメージが来ているのか……。


 穢れなき純白の水着をレイティアさんが着ているのだから、これは光属性の魔法みたいなもの……。魔王のワシには体質的につらいのかもしれん……。


 ふと、背後から何者かの視線を感じた。

 さっと、後ろを振り向くと、若い男二人がこそこそと移動していった。

「あの子、かわいいけど、怖そうな親がついてるから無理だな……」「それより、隣の子、デカくない? 姉?」「いや、奥さんなんじゃないか」「あれで人妻は犯罪だろ……」


 距離をおいて話していてもしっかり聞こえるぞ。魔王は耳もいいからな。


 今ので、はっきりとした。

 これが先ほどの胸騒ぎの原因か。


 人間世界での海といえば水着!

 母と子の煽情的な姿が衆目にさらされるのだ!


 そして、これはただの杞憂ではない。事実、もう二人に視線を送っていた不埒な男どもがいた。

 まあ、海岸は人の数も多いし、人さらいや悪漢は出ないだろうが、いやらしい目をしてアンジェリカをナンパするような奴は多いかもしれん。

 ただでさえ、南国で開放的な気分になりがちだしな。


 ワシが二人を守るぞ! 家長としてその役目を果たす!


「魔王、やけに暑苦しいわよ。どうしたの? 人間を滅ぼすという意志でも持ったの?」

「別にワシは制御できぬ邪悪な心を封印してるわけじゃないから、そんな心境の変化はない」

 でも、アンジェリカに手を出すような奴は滅ぼさねばならん。

 レイティアさんの場合は、ワシがそばにつくことによって、常に守るので問題ない。アンジェリカはワシがずっと横についていたら、「邪魔!」とか言いそうだから、そういうわけにいかないのだ。


 まあ、父親がずっと横にいたら、ワシが年頃の娘でも離れてくれと思うので、これはしょうがない。


「じゃあ、ママ、波が来るところまで行こっか!」

 また、アンジェリカがレイティアさんの手をとって、浜辺に走っていく。

「はいはい、アンジェリカったら、ほんとにはしゃいじゃって~」


 あっ! これはまずい!

 アンジェリカがレイティアさんを連れていってしまったら、ワシがレイティアさんの横につくというのも難しくなる。

 ここはアンジェリカが嫌がるかもしれんが、ワシもついていくしかあるまい。


「おい、二人とも、待ってくれ! ワシも行く!」

 二人も全力で走ってるわけでもないから、ワシはすぐに追いつける。


「別に魔王も来てもいいけどさ」

 アンジェリカが振り向きながら言った。

「魔王は水着じゃないから、波が来るところはまずいんじゃない?」


 ワシはそれで初めて自分の姿がその場で浮いていることに気づいた。


 この場でしっかりと服を着ている者のほうが圧倒的に少ない。最低でも、この姿では海に入れん!


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