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魔王です。女勇者の母親と再婚したので、女勇者が義理の娘になりました。  作者: 森田季節
魔王の娘、パーティー分裂の危機に陥る編

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70 魔王、無茶振りに困る

 これは親としてのワシの真価が試されている!


 試されているのはわかるが――

 どう答えるのが正しいのかわからん。


 そもそも、こういうのに正しい答えとかあるのか? 人間関係ってある場所でいいように見えたことが、ほかのところで問題であるように見えたりするし。ほら、叱っても、後々感謝されることもあれば、恨まれることだってある。


 かといって、それで何も言わないのはおおいなる逃げだ。親以前の問題で社会人としてダサい。それは防がなければならない。


「魔王、黙ってないで何か言ってよ……」

 しばらく、考え込んでしまっていて、急かされた。

 アンジェリカに目には涙がたまっていた。答えがほしくてたまらないのだろう。


 でも、誰もが納得するような答えなんて、どのみちない。人間が絡んでいることだし。アンジェリカがワシの言ったことをそのまま信じるのもいいことかわからない。それは自主性という面でどうなのだ?


 ワシとしてはこのまま男はパーティーから排除して、女子だけのパーティーにすればいいのではと思っている。

 男の影が近くにあると安心できんしな。五人とも女子というパーティーでも作れば、間違いが起こることもない。それに女子会もパーティー全員参加で開ける。

 ……それはワシの願望だ。自分の願望を娘に押しつけてはダメだ。親として一番やってはならないやつだ。


「アンジェリカ、まず、お前はどうしたいと思っているんだ? ワシはそれを全然聞けていないんだが」

 質問に質問を返す形になったが、時間は稼げた。実際、王道のアドバイスとか思いつかないし。

 それに女子はアドバイスがほしいのではなくて、自分のことを肯定してほしいのだなどとよく言う。何かの即物的な攻略法を聞きたいわけじゃないだろうしな。


「それが自分でもよくわからないから、魔王に聞いたんじゃない……」

 えっ! そこから!?

 思った以上に心の整理ができてないな。

 これは落ち着かせるのが先決な気がしてきた。


「アンジェリカ、今のお前は一種のパニックだ。そんな状態ではいい考えなど浮かばない。そこで提案するが……」

 ちょっと間の抜けたことを言って、空気を変えるのもいいかもな。


「……ベッドに入ってぐっすり寝ろ!」

 それで頭をすっきりさせて、どうするべきか考えればいい。


「え? ベッドって、ここの?」

 しまった! アンジェリカはワシのベッドの上に座っていた!


 さらにここ、ワシの部屋だし! なんか卑猥な意味とかと勘違いされるおそれもある! 娘にそんなこと言うわけないぞ。


「違う、違う! お前がお前の部屋に行って寝て、頭をすっきりさせろということだ! そういうこと!」

「ああ、そっか、そうね、うん、そうよね……」

 妙な空気になってしまった。これはこれで暗い空気が抜けたともいえるが、思っていたのとはかなりずれた……。


「ワシはまだお前が答えを出すべき時じゃないと言いたいのだ! だから冷却期間を置け! 今のお前は精神錯乱の魔法を喰らってるような状態だ。敵を攻撃したつもりで、味方を攻撃しちゃいかねないような感じだぞ」

 よし、上手くまとめられた。これで理解も得られるだろう。


 しかし、アンジェリカはむしろふて腐れた顔になった。

「自分がパニックになってることぐらいはわかってるわよ……。だから、魔王に適切なアドバイスを求めたわけじゃない……」

 そのまま、サボタージュを決め込むように体を横にしてばたんとベッドに倒れた。

 ベッドの縦のラインに平行なので、ワシと視線は合っている。


 こいつ……。無茶振りにもほどがあるぞ……。

「人生経験っていう点だとすごく長いし、そのうえ、政治経験もあるし、魔王ならいい答えくれると思ったけど、割と普通のことしか言えないのね」

 イラッと来た。娘じゃなくて息子だったら殴ってたかもしれんぐらい、イラッと来た。


 そんなの、お前がどういうアドバイスを求めてるか闇の中なんだから、適切な意見なんて言えるか! 成功条件不明のギルドの依頼みたいなものだぞ。全知全能の神ぐらいしか対処法わからんわ!


 そういう、その面倒くさい彼女が彼氏にするような質問は、素直に彼氏にしろ。親にするな。

 あっ……でも、こいつの精神年齢からすると彼氏を作るのはまだ危ない気がするので、やっぱり彼氏にするのはやめたほうがいいな。

 だいたい、女子のほうが精神年齢は男より早熟な印象あるんだけど、アンジェリカの場合、そうじゃない。


 だが、このまま、勝手に失望されるのも腹が立つので、そこだけでも解決したい。


「アンジェリカ、お前は勇者だな?」

「当たり前でしょ。天下無双の勇者よ」

 天下無双にしては、かなり恥ずかしい状況だぞ、お前。

「その勇者が自分でパニックになって、何の結論も下せないってひどい有様ではないか? 少なくともリーダーとしてはダメだ」


 アンジェリカの目が大きく見開かれた。

 そのとおりだと本人も思ったらしい。

 やっと、自分のみっともなさがわかったか。


「しょうがないでしょ……。こんなこと、今までなかったんだし……相談に乗ってくぐらい言うわよ」

「お前は相談に乗らせようとしたんじゃくてワシにちょうどいい答えを出させようとした。つまり、魔王に全部任せようとしたのだ」


 また、アンジェリカの目が大きくなった、

 どうでもいいけど、こいつ、けっこう、目の大きさ変わるんだな。化粧次第で、全然違う雰囲気になったりしそう。


「せめて建設的な相談ができる程度には頭を冷やせばいいんじゃないか?」

 アンジェリカはベッドから立ち上がった。

「わかったわ。今日のところは引き下がるわ。とっとと寝て、明日考える……」

「うん、それでいい。そうしろ、そうしろ」


 ドアの前でアンジェリカは一度立ち止まった。

 なんだ、失態のお詫びか?

 それとも話を聞いたことへの謝辞か?


「魔王ってそこまでベッドに加齢臭ないんだね。人間じゃなくて魔王だから?」

「親相手でも一言ぐらいお礼は言え!」

 だいたい、こっちが真剣に考えてたのに、まったくどうでもいいこと考えてたのか、こいつ!


「あれ? 今の褒めたつもりなんだけど……」

「褒め方が特殊なんだよ!」

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