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魔王です。女勇者の母親と再婚したので、女勇者が義理の娘になりました。  作者: 森田季節
魔王、娘を後継者にする編

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46 魔王、後継者の問題で悩む

今回から新展開です! よろしくお願いいたします!

 唐突だが、ワシのフルネームはガルトー・リューゼンである。

 レイティアさんには、もっぱらガルトーさんと呼ばれているし、ほかの者からはだいたい魔王と呼ばれているので、苗字のほうは普段意識してない。


 でも、リューゼン家というのは言うまでもなく名門中の名門である。

 でなければ、魔王に即位などできん。長らく、魔王はリューゼン家から選ばれてきた。大変、由緒のある家柄なのだ。


 そして、リューゼン家の親戚はちゃんと存在する。

 実は血筋が近い者はけっこう過去の後継者争いとかで死んでるので、あんまり残ってなくて、その結果、たいして実力者と呼べる者もいないのだが、とにかくいることはいる。


 本当にいることはいるというレベルなので、ワシもその日まですっかり忘れていた。


「では、今から魔族中央委員会を開催する」

 議長がそう宣言した。

「皆の者、魔王様に敬礼!」


 みんなが立ち上がって、ワシに礼をする。

 いずれも重要な地位についている者たちだ。アンジェリカがいたら、みんなボスっぽいと言うだろう。実際、魔族十六将という、ワシ以外でトップ十六に選ばれている強キャラとワシの秘書であるトルアリーナしか参加できない。


 見慣れた光景ではあるが、正直、堅苦しいなと思う。

 この委員会、儀礼的な要素が強すぎるんだよなあ……。重要な意思決定機関というのはわかるんだけど、もっと簡素化を進めたほうがいいんじゃないだろうか。


 ――と、過去に何度か提出しているのだが、無闇に伝統を破壊するべきじゃないみたいなことを言われて却下されている。

 魔王中央委員会は、議題を多数決で決定するので、魔王とはいえ、ワシだけで押し通すことはできんのだ。だからこそ、意思決定機関としての価値が高いともいえる。


 厳密には、ワシが委員会の外側で強制的に勅命として決めることもできる。

 でも、そんなことをすると、委員会を軽視しているとか文句を絶対に言われるのであまりやりたくないのだ。

 ぜいたくをして怒られるとかならともかく、簡素化を強行してうじうじ言われるとかあほらしい……。


 魔族中央委員会のほうは、淡々と進んでいった。

 今回はもめている議題もないので、こじれることもなく終わるだろう。うん、早く帰宅して、レイティアさんの手料理が食べたい。


 前半最後の議題が終わって休憩時間になった。

 早速、ワシはトイレに行く。

 会議中にトイレに行くと目立つし、発言してる奴がみんな偉いので、誰の発言の時に退出しても角が立つのだ。その者をないがしろにしたような印象を与えてしまう……。


 本当に、そういうしょうもないことに気をつかうの空しいのだが、なかなか人的関係の部分って改善できんよな。

 トイレから戻ると、会議室で魔族たちが雑談をしていた。この時間だけはみんなリラックスしている。このノリで会議もやってくれんかなあ。


「魔王様、再婚おめでとうございます」

 ワシにあいさつをしてきたのは、黒ずくめのローブと顔もすっぽり覆ったマスクで全身を黒く隠しているアンナイスという者だ。


「お前、夏場は暑いからその服装、やめたほうがいいんじゃないか? 中身はかなり汗かいてるだろ」

 ワシは魔王なので部下のコンディションも把握している。

「いえいえ……ちゃんと水分補給をしているので大丈夫です。サウナだと思えばどうということはありません……」


 戦闘の場とかじゃいから顔を出していいと思うが、そのあたりは本人のプライドみたいなのもあるんだろう。ファッションとはやせ我慢である。

「あと、最近太りまして、顔をさらすのが恥ずかしいのです……。普段、顔を隠している分、顔出しのハードルが上がっていまして……」

「そうか、みんな大変だな……」


 強そうに見せるのも楽ではない。地味なオッサンが十六将に選出されると、みんなあの手この手で強キャラ感を出そうとするものだ。

 顔を隠してしまうのは、よく使われている方法だが、こんなふうに顔出しそのものが難しくなってくるという弱点もある。


「それはそれとして、再婚のことを寿いでくれてうれしいぞ」

 勇者の母親と再婚ということで、それはないだろうと思っている者もいるはずだ。


「ええ、なにせ、これで後継者が決まったようなものですからな。それは魔族の未来にとって、とても素晴らしいことではありませんか」

「え? 後継者って何の?」


 素でワシは聞いた。

 存続を危ぶまれてる伝統芸能的なものとかあったかな。魔族は長命なので、割と継承は簡単なんだが。


「いえいえ、次の魔王候補――つまり皇太子のことですよ!」

 皇太子! そういや、ずっと決めてなかった!

「いやはや、亡くなったササヤ王妃にお子様がいらっしゃいませんでしたので、魔王様の次の魔王が誰になるのか、みんな固唾を飲んでうかがっていたのですが、ようやくよい候補ができましたな!」


 たしかに血筋の近い者がいまいちいないので、皇太子がどうなるのかの憶測は流れていたように思う。

 さほど仲のいい者もおらんし、うかつに決定するとそいつが魔王になろうとして、ワシの命を狙うおそれもあるので、わざと発表していなかったのだ。


「ところで、皇太子ができたって誰のことを言ってるの?」

「それは、魔王様の義理の子となったアンジェリカ殿でしょう」

 アンナイスはあっさりと答えた。


 マジかよ!


 そりゃ、子供は子供だけど、血もつながってないし、勇者だぞ? それでOK出るの?


 ワシはそのへんのことを遠まわしに尋ねた。

「勇者といえば、かつては魔族の最大の敵とも言える存在だったわけで、それぐらいのインパクトがあるほうが魔王にはよいだろうという話になっております」

 ああ、許される流れなんだ……。


「それに魔王様もご存じでしょうが、リューゼン家にはろくな者が残っていませんので……。誰を指名してもしっくりこないので、いっそ、このほうが不公平感がないかと」

 リューゼン家、本当に落魄したな……。


 それはそれとして。

 皇太子候補がアンジェリカになっているとは思わなかった……。


皇太子(王太子)という表現は男女兼用らしいので、女性でも皇太子と表記します。よろしくお願いいたします!

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