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魔王です。女勇者の母親と再婚したので、女勇者が義理の娘になりました。  作者: 森田季節
魔王、ペット選びに奔走する編

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114/178

114 勇者、ペットに名前をつける

「名前も今のうちに決めちゃおっかな。そうね、かわいさとかっこよさを兼ね備えた名前……何かあるかな……?」

 こいつ、いざ動き出すと、ものすごくスピーディーだな。勇者らしいと言えなくもないか。


「そうね、うん、ネコリン、あなたの名前はネコリンよ!」

「それ、猫を引きずってるだろ!」

「それは偶然よ。それに猫に対して、ネコリンって呼ぶことはないから混ざることもないわ」

 強引にアンジェリカが言った。まあ、アンジェリカがペットを飼いたいと言い出したのが発端だから本人がこれでいいと言ってるならそれでいいのだ。


「こういうのは運命なのよ。出会ってしまったのだから、飼うしかないわ。ねっ、ネコリン」

 カラスも空気を読んだのか、「カア」とちゃんと返事をした。猫のような名前をつけられたことは理解しているのだろうか。


 皇太子がペットを選んだことで会場の観客もそれなりに盛り上がっていた。

 トルアリーナも助かったという顔をしていた。あいつはあいつで不安だったらしい。


「ワシとしては水を差す気はないのだが、そのカラスはかっこいいのか? お前、勇者としてかっこよさも重視していただろう?」


 アンジェリカは力強くうなずいた。

「ほら、この子、肩に載せたらすごくかっこいいと思わない? 勇者っぽさもあるわ。あと、この子、これまでの候補の中でダントツに黒いし!」

 やはり、黒いペット候補だけを集めて決めるべきだったのではないだろうか。


「カラスとともに戦う勇者――うん、いいわ。絵になるわ! この子に決めた!」

 アンジェリカもカラスの頭を撫でた。

 カラスもまんざらでもなさそうである。


「そうか。決まってよかったな」

 本音を言うと、ワシはビヒモスがよかった。


 ああいう巨大な獣を飼って散歩するのって、あこがれみたいなものがあるのだ。

 でも、女子受けしないと言われればそれもそうだと思うし、しょうがないか……。場所をとるし、ご近所もなんだなんだと言い出すか。


「え~、無事に魔王様ご一家のペットが決定いたしました。ご覧いただいた皆様、ありがとうございました。それでは、気をつけてお帰りください」


 トルアリーナは粛々とイベントを締めに入っていた。このあたりの決してぶれない姿勢はなかなか立派だと思う。


 ――と、舞台ソデからまた何かが出てきた。もう、ペット候補はいらんぞ。

 メイド服姿のフライセだった。

「ペットでなくてもいいので、どうかご自宅の召し使いにお願いします!」

 フライセが足にしがみついてきた。


「戻ってくるでない! 仕事もクビにするぞ!」

「掃除や家事だけでなく、夜のご奉仕もいたしますから! むしろ、そっちが目当てですから!」

「妻も子供もいるところで本当にそういうことは言うな! 冗談でも言うな!」

 ワシはフライセを強引に引き離そうとする。


 くそっ! そんなに強い魔族でもないはずなのに、しぶとい! なかなか離れない!

「ふふふっ! なんとしてもメイドとして就職して既成事実を作るのです! それまでは何があろうと放しませんよ!」


 その意欲をほかのところに使えば、自然と立身出世できるのではと思うが、そういう正攻法の努力はせんのだよなあ……。


 だが、そこに例のカラスが、ぴょんぴょん跳ねながらやってきた。


 そして、クチバシでフライセの腕をびしびし突いた。

「痛いっ! 痛っ! 攻撃力、高いですねっ!」


 フライセは腕を押さえて、同時にワシにしがみつくのも終わりになった。

 結果的にワシは解放された。


「カラス……ネコリンよ、ワシを助けてくれたのか?」

 この名前、どうにも困惑するな。

「クアクアー」

 おそらく、そうですとでも言っているのだろう。

 ワシも愛着が湧いてきた。


い奴め。愛い奴め」

 ワシもネコリンの頭を軽く撫でてやった。

 今日からお前は我が家の一員だ。



 この日から、ペットのいる生活がはじまった。

 なお、ネコリンは日中は外に飛んで遊びにいくが、夜になると戻ってきて家の中にいる。この家を巣として認識しているらしい。


 常に目を離せないタイプのペットと比べると気楽に飼えるし、ちょうどいいかもしれない。


「いいわね~。ネコリンちゃんがいると癒やしになるわ~」

 レイティアさんが拾ってきたドングリをネコリンに食べさせていた。

 家庭の空気がこれまで異常に明るくなった気がする。これもネコリンさまさまだ。


「やっぱり、ペットを飼うのは正解だったわね。私、ナイスアイディア!」

「アンジェリカ、お前がドヤ顔するのはいいが、準備した者たちにも感謝しておくのだぞ」


「はいはい、さ~て、念願のアレをやるわよ」

 アンジェリカは中腰になって、自分の肩をとんとんと叩いた。


「ネコリン、肩にとまって。カラスを連れた勇者アンジェリカの誕生よ」

 勇者ってこんなに見た目にこだわるものなのだろうか。カラスなら似合わないとも思わんが。


 ネコリンは利口なので、ちゃんと肩に乗った。

 だが、そこで思わぬ問題が起こった。


「お、重いっ! 肩に乗ったらネコリン、信じられないほど重い……」

 アンジェリカの得意げな顔が歪んだ。


「ああ、ネコリンは漆黒ハシブトガラスだからな。人間の土地のカラスよりずっと大型で重いぞ」

「こ、これじゃ肩にとまらせたまま冒険できないわ……」

「いいだろう。ペットなんだから家で飼えば」


「わ、わかったわ……。ネコリンを肩に乗せて堂々と歩けるぐらい、筋肉をつけるわ! ネコリンが似合う立派な勇者になってみせる!」

 アンジェリカがある意味、殊勝なことを言った。


「カアカア」

「うん、ネコリンも応援してくれるのね! 負けないわよ!」


 ペットを飼うことが子供にいい影響を及ぼすというのは本当のことらしい。


魔王、ペットを探す編はこれでおしまいです。次回から新展開です!

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