初会話
3
女性は恥ずかしそうに言う。
「この前は変なこと言っちゃって・・。」
言葉が止まる。
少し顔が赤い。
「いえ、こっちも変なこと言っちゃって。」
思い出すとこっちも恥ずかしい。
その後弁当を食べ終えるまで会話は無かった。
弁当を食べ終えペットボトルのお茶を飲み干す。
横を見ると女性も食べ終えていた。
休憩時間が終わる。
弁当が入っていた袋に弁当の空き箱をしまう。
ベンチから立ち上がる。
女性も同じタイミングで立ち上がる。
「すみませんでした。」
女性が言う。
何に謝っているのか。
恥ずかしい感情からつい出てしまったのか。
「大丈夫ですよ。」
それ以外の言葉が思いつかなかった。
公園の出口に向かう。
出口にあるゴミ箱に弁当の空き箱を捨てる。
女性も弁当の空き箱をゴミ箱に捨てる。
「それでは。」
女性は会釈をしてその場を離れた。
後ろ姿を見送る。
女性に背を向けて足を進める。
西の空を見る。
さっきまで空を覆っていた厚い雲は少し薄くなっていた。
雲の切れ間に青空が見える。
明日も晴れるだろうか。




