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      2


 木々が囲む公園。

 天気は良くない。

 雨は降らないだろうが昼前に西から流れてきた厚い雲が空を覆う。

 8月の半ばにかかわらず風は少し冷たい。

 体を温めたいのか、それとも鼻を突く香辛料の匂いに以前のことを思い出したのか自分手にはカレー弁当が入っている袋が握られている。

 ベンチに座る。

 蝉の鳴声は聞こえるが子供はいない。

 膝の上に弁当を広げる。

 香辛料の匂いが鼻を突く。

 あの女性を思い出した。

 「おいしそう。」

 女性を思い出して少し笑ってしまう。

 思わずツッコミを入れてしまった自分も恥ずかしい。

 カレーを口に運ぶ。

 口の中に広がる香辛料の匂いは変わらないが以前より辛くはない。

 「隣、よろしいですか。」

 半分ほど食べ終えたところで右から声が聞こえる。

 声の方を向くとあの女性が立っていた。

 自分が少し左にずれると女性はベンチに腰掛けた。

 自分は弁当を食べ進める。

 視線を右に向ける。

 やはりあの女性だった。

 女性はひざの上に弁当を広げた。今日はのり弁だ。

 今時の女性でものり弁を食べるのか。

 隣の女性を見る。

 歳は20代後半位。自分よりも年下だろう。

 長い髪を後ろで一つに束ねている。

 姿勢は良い。自分のように背を丸めることなくまっすぐと伸びている。

 美人の部類に入るのであろう。

 考えれば恥ずかしい。

 気づいてないのだろうか。

 赤の他人にツッコミを入れた自分が横にいること。

 気づいた自分が恥ずかしい。

 昼休みが終わるまで15分。

 少し早いが自分は腰を上げた。

 「あの。」

 右から声が聞こえた

 声の方を見る。

 あの女性がいる。

 顔はこちらを向いている。

 自分を対象に出した声。

 赤の他人に向けた声。

 自分は女性に向けて。

 「なんですか。」

 問いかける。

 答えは少しの沈黙の後だった。

 

 

 

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