×鞘香ー01(反撃実験)
「ほら、ほら、茉莉くん!!ほら!!」
ほらほら言われても、きっとこれ嫌な目に合うよね?
触りたくないんだけど?鞘香さん。
「ほっらっ!!早くっ!!」
ぐいぐい僕の身体を後ろから押してくる。
鞘香さんは、今日は熊のきぐるみを着ていなかった。
調子がいいのだろうか。それはいい事なんだけど、それとこれとは別な訳で。
じりじりと【びさそぅ】の方へと押されていく僕。
微妙にシリーズの新しい作品だ。動作するかどうか確認して欲しいらしい。
………というかコレは、実験代という奴でしょ?そうですよね、鞘香さん。
ちなみに、正式名称は【微妙にサンドバッグ型反撃装置】だそうだ。
…………嫌な予感しかしねぇ!!
質量感のある赤い塊の方へと、少しずつ誘導されて行く。
英知は、大丈夫だって、とにこやかな笑顔で言いながら、僕の拘束を手伝っている。
何気に凄い力である。どういう風にしているのか分からないが、身動きがほとんどできない。
関節でも極められているのだろうか?
………………いや、助けてくれよ!!
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「どうだった?」
にこにこしながら聞いて来る鞘香さん。
確かに反撃されて痛かったけど、想像とは大分違った。
「………なんですか、コレ?」
「だから【びさそぅ】だよ!!」
「いや、そうではなくて―――」
まだひりひりする指先を押さえて続ける
「何で反撃方法が電気ショック何ですか?もうちょっと直接的なのを想像してたんですが。」
「を?何でって?気分だけど?それにそんな直接的な反撃なんてされたら痛いじゃない?」
気分かよ!!
…………………指先がひりひりする。
もっと出力を上げたらこっちの方が恐いかもしれない。
………というより、そもそも、
「何でこんなものを作ったんですか?」
僕がそう聞くと、一瞬不思議そうな顔を浮かべた後、直ぐに満面の笑みを作り、断言した。
「だって楽しいじゃない!?」
「…………………」
もっと色々言いたい事はあったんだけど、その楽しそうな顔を見ているうちに、何だかどうでもよくなってしまった。
静かに溜め息を吐くと、いつの間にか横に立っていた英知が、そっと僕の肩に手を置き、
「そのやるせない気持ち、よく分かるよ。」
と、言った。