×亜空ー01(例外的)
この食堂は本当に不思議だ。
どういう仕掛けになってるんだろう。
誰かが作ってるんだろうか。
もし誰かの【能力】なのだとしたら、ずいぶん変わっている。【食事を作る能力】とか、意味が分からない。
…………………まぁ、別にどうでもいいか。
食事の水準は基本的に高いし、
労せず食事にありつけるなんて、幸せな事だ。
働かざるものも、【此処】では食事に困らない。
とかどうでもいい事を考えていると、僕の斜め前に、誰かが座る音がした。
「いよっっ!!どした!?難しい顔して、考え事か!?」
亜空だった。この微妙な位置関係は、おそらく【代償】のせいだろう。
「いや、そんなに大したものじゃないよ。………僕そんなに変な顔してた?」
「ああしてたしてた。アウストラロピテクス版考える人、みたいな。」
どんな顔だよ!!
「…………………気をつけるよ。」
「ああ、いや、冗談だって!!そんな深刻になるなよ!!」
分かってるよ。
冗談だって分かってて返したんだよ。
もし本気で言われてたら、何かショックだよ!!
喋りながらも、亜空はどんどん食事を進行していく。
器用な奴だ……………というより確か亜空の【代償】って。
「…………………君、凄い勢いで食べるね。危なくないの?ほら、【代償】とか。」
「お、聞きたいか?聴きたいかい兄さん!?」
変なテンションだなぁ。まったくもう。
「あ、うん、まぁ。」
「なら教えてしんぜよう。実はな―――」
そこでぐいと手を伸ばして、僕の耳を掴むと、急に小声になって続けた。
「――――実は、例外的に【触ってるものは認識できる】んだよ!!これが。」
「………それにしてもその勢いは。」
「あはははははは!!そこら辺はほら慣れだよ!!慣れ!!」
さいですか。
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無駄に押され気味なまま、その奇妙な食事会は終わった。