×英知ー01(林檎)
「よー茉莉。お前オレンジ派なの?」
自販機の前でオレンジジュースを飲んでいると、英知が片手を上げながら僕に聞いて来た。
「いや、特にどっちが好きとかは無いよ。気分によるね。」
僕も片手を上げて挨拶を返しながら質問に答える。
「ふーん、そっか。俺はりんごジュースが凄い好きでさぁ、」
言いながら、カシャリカシャリと小銭を入れていく。
「ここに来るとつい買っちゃうんだよ。」
ピッ、と宣言通りににりんごのボタンを押す英知。何だか少し微笑ましい。
ガシャリ、と落ちて来た缶を拾い、またカシャリシャリと小銭を入れていく。
「ん?お使いかい?」
「そーなんだよ。あいつら自分から動く気が無いんじゃないか、ってたまに思うよ。」
ガタ、ガシャン。カシャリ、カシャリ。
「ま、俺もそんなに嫌ではないからいいんだけどな、いい息抜きにもなるし。」
ガシャン。
「あ、そーだ。今から俺たちの部屋に来ないか?茉莉。鞘香が何か新しいの作ったらしいぜ。名前はちょっと忘れちまったけど。」
「いや、是非行きたいんだけど。栞と待ち合わせしてるんだ。悪いけど、また今度誘ってくれ。」
にやりと笑い、やけに小さな声で英知が聞いてきた。
「お前らやけに仲いいじゃん?何?付き合ってんの?」
「な!!ち、違うよ!!僕はただ、【能力】とかの説明を受けてるだけで………」
「くく、焦る所が怪しいなぁ。」
「いや本当にっ………」
「あはは、いいよいいよ。じゃ、またな、茉莉。」
「………………ぁあ。」
何だかもやもやしたまま会話が終わってしまった。
もやもやを流し込もうと、ジュースを一気にあおってみたが、やはり何の意味もなかった。