×千鶴子ー02(蜜柑)
「あ、茉莉君。こんな所で珍しいわね。」
自動販売機の横にある、古いタイプのベンチで、みかんジュースを飲んでいると、千鶴子さんがやって来た。
チャリチャリ、ガチャンと何かを買った後、僕の正面に腰を下ろした。
「で?今日は何でこんな所にいるのかしら?」
そもそも、僕がここにいるのは、そんなに珍しい事でもないのだけど。
まぁ、千鶴子さんとこの場所で会うのは初めてだから、珍しいと、言って言えなくもない気がするけど、その表現はやっぱりおかしいと思う。
「……ちょっと休憩です。」
「あら?オレンジジュースなんて飲んじゃって、エロいわね。」
「……………え?何が?何で?」
「だって〈おるぇんじじゅーす〉よ?〈おるぇんじじゅーす〉。」
「そんなの完全に言い方の問題じゃないですか!!」
「そうかしら?」
「そうですよ!!それに、それだったら、何でもこじつけられちゃうじゃないですか!!」
少し首を捻りながら、千鶴子さんはおしるこをずずず、と啜る。
おしることは、また……何とも微妙なチョイスだ。
「……なんでも、は無理だと思うのよ、さすがに。」
「いや、それは言葉のあやというか……」
「例えばこのおしるこなんか……」
ごくごく、と一気に飲み干して続けた
「どう考えても無理じゃない?」
「いや、おしるこは文字の並びがなんとなくエロ………って何を言わせるんですか!!」
慌てて自分自身に突っ込みを入れた。
無断で人の体を動かさないで下さい。
千鶴子さんは、にやにやと僕の事を見つめていた。
「うふふ、やっぱり貴方とはいい友達になれそうだわ。」
「…………」
面と向かってそう言われると、なんとなく恥ずかしい。
「じゃ、またね。」
ビシッ、とよく分からないポーズを決めた後、千鶴子さんはゆっくりと歩いて去っていった。
…………………彼女は、要注意人物だな。と思った。