×千寿ー03(裏表)
「ねぇ?」
「なんですか?」
「このトランプが、ダイヤの5だったら、私の肩を揉みなさい?」
「嫌です。」
「何でよー。」
と、だるそうな声を出しながら、手にもったトランプをひらひらさせる。
何でも何も、それをやるとしたら、表裏が逆だからね。
書いてあるマークを読むだけなんて、そんなの僕にだって出来る。
仮に、ちゃんと裏向きにして当てたとしても、そんな僕に何のメリットも無いような賭けに、乗る筈もない。
「じゃあ、僕の持ってるこのトランプが、ハートの6だったら、僕の肩を揉んでくれますか?」
「いやよ。それマーク見えてるじゃない。そんなの誰でも当たるわよー。」
「…………………」
自分の事を棚に上げすぎだと思う。
「ほら早く。もう何でもいいから肩揉みなさいよ。」
「いやですよ。…………何で今日はそんなにダルそうなんですか?」
「疲れた。」
「何に?」
「何かに。」
「…………………。最近運動でもしたんですか?」
「別に。大体【此処】のどこにそんな広いスペースがあるのよ。」
「亜空の部屋とか。」
「……面倒くさいから却下。」
「…………………。というか、…………うん、まぁいいや。」
「まぁいいや、って何よ。中途半端に言いかけないでくれる?」
「………【能力】を使ったら疲れたりするんですか?」
「別に。私は特に疲れないわ。人それぞれだと思うけど。」
「そうですか。」
「…………それにしてもダルいわねー。」
「…………………。……そうですねー。」