×頴娃ー01(無意識)
食堂へと続く、白く細長い道を、一人で歩く。
カツン、カツン、と嫌な足音が響く。
………本当に、何度通っても、この道は好きになれない。
カツン、カツン。
篭るように響く足音が、不安を掻き立てる。
ふっ、と目の端に、黒い影がよぎった。
ん?今僕を追い抜いていった黒い影。
アレは…………
「頴娃君!!」
「ああ、茉莉さん。奇遇ですね。こんな所で会うなんて。」
奇遇も何も、食堂へと続く一本道なのだから、ココは割りと会う確立が高いと思うんだけど。…………そうでもないのか?
「それより危なくないの?歩きながら本を読むなんてさ。」
「ああ、コレは癖みたいなものですので。慣れれば意外と大丈夫なものですよ。」
危ないと思うんだけどなぁ。
「ふぅん。でも、人にぶつかったりとかしないの?」
「いえ、人がいれば、【能力】で大体の位置が分かりますから。それ以前に、人とすれ違う事なんて、【此処】では滅多に有りませんし。」
「そういうものなんだ。」
「ええ、そういうものなんです。」
……………本当に【能力】で位置が分かるんだとすると、僕を無視して追い抜こうとしていた事にならないか?
…………………いや、まさか。頴娃君に限ってまさかそんな事は。と僕が自問自答していると、慌てたように頴娃君が付け加えた。
「あ、いえ、別に茉莉さんの事を無視しようとしてた訳じゃないですよ。本を読むのに夢中になってて……。つい無意識に【能力】を使ってしまっていたみたいで。」
やはり理由が有った事に、僕は何だか少しほっとした。
「あ、今から食事ですよね、茉莉さん。よかったら、ご一緒しませんか?」
喜んで、と返事して、僕たち二人は食堂へと歩いていった。