×亜空ー03(芸術的爆発、下)
「うん。まあそうだね。」
とりあえず乗ってみた。
否定してばかりでは会話が続かない。
「だろ?じゃあ茉莉は、例えばどんな事をつい言っちまうんだ?」
やっぱり乗るんじゃなかった、と思った。
どうしよう、今更嘘でした、では通らないだろう。
…………やっぱり通りそうな気もするな。亜空はそんな小さな嘘くらい気にしないだろうし。
でも、なんとなくそれは嫌だ。
「芸術は爆発だ。とか、かな、多分。」
仕方ないので、適当に思いついた言葉を言ってみる。
「何で?」
ぐ、何でと来たか。僕も逆の立場だったら同じ様な事を聞きそうな気がするが、コレはきついな。
なんせ、何も考えずに言ったのだから。
「んーと、いや、ほら、何となく、だよ。」
自分でも嫌になるくらいしどろもどろになりつつ答える。
「そっか、じゃあそれ言ってみろよ。きっと理由が見つかるぜ。」
えーー。
そう来るか。
…………………乗りかかった船だ。こうなったらもう、最後まで乗ってやる。
「芸術は爆発だ。」
「どうだ?何か分かったか?」
「いや、分からない。」
何が分かるのか分からない。
そもそも何でこんな事をするハメになったのかも分からない。
「もっと大きな声で言ってみろって。叫ぶくらいの気持ちでさ。」
え、嫌なんだけど。普通に。
…………………でも、最後まで乗るって決めたしな。
「芸術は爆発だ!!」
僕は。
「もっと!!」
「芸術は爆発だー!!」
何を。
「もっとだ!!」
「芸術はっ!!爆発だーっ!!」
しているんだろう。
「君がそんなに芸術のなんたるかについて興味があるとは知らなかったよ。」
栞にじっくりと見られていた。
いつの間に来たんだろう。
全然気付かなかった。
「どうだ?何か分かったか?」
亜空が聞いてくる。
「分からない。………僕は…………もう…………何も………わからないよ。」
ああもう本当に。何も分からない。分かりたくない。
僕は何をしているんだろう。
とりあえず、これ以上ないくらい、恥ずかしかった。