×栞ー01(印象)
目が覚めると、枕元に栞が立っていた。思わずベッドから転げ落ちそうになる程びっくりした。
そんな僕を見て、栞はいつもと変わらぬ落ち着いた声で聞いてきた。
「ねぇ茉莉君。一つ君に相談があるのだが。」
「…………そ、相談?」
「くくくく、驚きすぎだよ。君はいつも実にいいリアクションをしてくれるね。」
馬鹿にされているようで、少し腹が立った。
「いいだろ、別に。…………で、何さ、相談って。」
「ふむ。相談というよりは質問なんだが。君は誰の事が好きなのかな?」
「はあ?」
何を言い出すんだこの女は。
「ん?聞こえなかったのかい?だから、君は誰の事が好きなんだい?」
「いや、聞こえているけど。ん、いや、まあ、え?」
「あはは。何をしどろもどろしているんだ。ここのみんなの第一印象はどうかな、って聞いているんじゃないか?」
そんな馬鹿な。どういう解釈をしたらそういう事になる。栞は確かにさっき誰の事が好きって聞いて…………ん?待てよ。うーん。めちゃくちゃひねくれた考え方をすれば、そういう風に取れなくもない………………か?
だとしても。
何でそういう聞き方をするんだよ!!
…………………っと、危ない危ない。ここで逆上したら、栞の思うつぼだ。
僕は落ちついて、聞かれた事を答える事にする。
「そうだね。みんな第一印象は凄くよかったよ。仲良くなれそうな気がする。」
僕がそう答えると、ちっ、と舌打ちが聞こえたような気がした。
そして栞は、用は済んだといわんばかりに、
「そうか。昨日は大変だったね。今日はあまり無理をしない事だ。」
と言って、部屋を出ていった。