幼いながらも工夫した
村の裏山というか丘と(でも裏丘って変だよね。その天辺より向こうに行くのは親に禁じられた)、その麓のやや平らな野原から私たちは色々な物を採った。
子どもの手で採取するのだから根こそぎ採ることはない。私たちより大きい子は午前中は隣村の教会で習い事をしていて、帰りはお昼くらいになるから、採取は午後からになる。大人たちは仕事に一区切りつけてからだからやはり午後。でも採取しに来ない人もいる。
山菜や薬草は畑の周りにも生えるし、果物は育ててるリンゴや洋梨、桃(うちはリンゴだけだけど洋梨や桃のそっくりさんを育ててる家もある)で充分という人もいるから。
まあそんな訳で私たちが採取する姿を見る人は誰もいなかった。畑は全部村を挟んだ裏山の向こうだし。
薬草は冬でもそんなに寒くならないこの辺りでは一年中生えている。だから必要な時に採って生の葉を煮出して飲むのが普通だ。でも、それだと青臭さが鼻について、かすかな甘さなど飛んでしまう。ざっくり言うと不味い。
それで当時三歳のリュートが干した薬草を作って両親に見せた。うっかり置いといたらこんななっちゃったけど良い匂いがするの、とか言ったんだって。
それを煮出すと青臭さが取れて甘味も引き立って美味しい。
それから我が家ではお茶がわりに干した薬草を布袋に入れて煮出して飲むようになったのだと言う。私が二歳になる前のことだから私は覚えてない。優人だった頃のリュートはお茶が好きだったからなあ。お茶が飲みたい一心だったんだろう。ちなみにスキルの「鑑定」によると干しても効能は変わらないらしい。
私が二歳になった年の秋。裏山に何本かあった柿の木から柿の実を採っては母さんに持って行き、皮を剥いて貰って干した。渋柿だったから。
裏山に少ししかない甘柿は人気があって村の大人がこれだけは採りたがる。リンゴなどの果物は基本売り物。家で食べるのは傷ついたり小さかったりで売れない物だ。
それでも結構な量になるけれど、同じ果物ばかりだと飽きるから、口が変わる甘柿は喜ばれる。
見向きもされない渋柿だから私たちでも採れたのだ。
リュートが木に登って落とす柿を下で私が広げて持ってる布で受ける。
二人合わせて二十個ほどをナップザックに入れて持ち帰る。山菜や薬草は持って行った布に包めるだけは採って、リュートが運ぶ。それを二十日くらい繰り返した。
空気が乾いているせいか数日で出来上がった干し柿を初めて食べた時の母さんと父さんの驚いた顔はちょっと凄かった。
それから干しリンゴも作ってみた。美味しかった。これでほぼ一年中果物が食べられるようになった。山菜もゆでてから干すことにした。それまでは塩漬けにして保存していたらしい。キノコも干してスープの出汁に使ってる。毒キノコを採らずに済む「鑑定」のスキルはありがたい。
あ、干してばっかりいるのは砂糖が結構高価だから。
もう少し南の国だか地方だかでしか砂糖キビが出来ないので輸送費がかかって値段が高いんだって。
ビートとかハチミツとかがあると良いんだけどなあ。
ミツバチはまだ見つかってない。
かといって果物を塩漬けにするのも嫌だ。うちでも少し作ってるけど梅干しっぽい何かになってしまう。
塩漬けの山菜はクセが強いししょっぱ過ぎる。水に浸して塩戻ししてもちょっと勘弁してほしいくらい。
塩は岩塩が近くの山から採れるから大人たちがたまに数人で行って採って来てる。なんか当番制みたい。
大豆っぽい豆はあるから麦味噌作れないかなぁ。
王都には月に一度か二度、父さんが荷車に野菜とか麦とか卵とかを載せて売りに行く。帰りに母さんから頼まれた物を買って来る。布や糸や、作ったことの無い作物の種とか。
ヤギのミルクは例のカッテージチーズかバターにして村の中での物々交換に使われることが多い。バターは出来る量が少ないから売り物にはならないのだ。牛やヤギを飼ってない家も何軒かあるんだよね。
うちで作ってない作物とか、鶏を飼っている家で屠殺があると肉と交換する。
本当、早いとこチーズ作りたいなぁ。チーズなら売り物になる気がするんだよ。
今のところ、着々と書き貯めていますが、見直さないといけない箇所とかがだんだん出始めました。
その為に投稿のペースを
次話からは週に一度くらいの投稿になると思います。
多分水曜日辺りになるかと。
すみませんがその旨よろしくお願いします。