面倒なこと、嫌いなんだけど
「何か欲しいスキルがあればおっしゃってください」
いきなりそんなこと言われてもわからない。
「スキルってどういうこと?それって練習とか勉強して身につけるものよね?」
「あちらには魔法やスキルという名の特殊技能があります。魔法は生まれつきの適性が無いと最低限しか使えません。主に持っている魔力量の関係ですが。
スキルは専門の技術を早く身につけることが出来るようになる技能のことを指します。これは生まれつき持っている人、持っていない人がいますが、持っていない人でも努力次第で習得可能です。」
例えば魔法習得のスキルと魔法の適性を持ってるとすごい魔法使いになりやすいってことかあ。
「いくつまでお願い出来る?無限じゃないわよね?」
「優人さんとの話し合いにより、魔法の適性は既にありますので、スキルは三つまでつけられます。」
優人と交渉したんだ、大変だったろうな。あいつは容赦ないからね。
「それじゃ「言語習得」「体術習得」「魔法習得」でよろしく」
「わかりました。けれどもそんなに早く決めなくても良いのですよ?時間はありますから、どうぞゆっくり考えてください」
「それじゃ出て行く少し前に声かけてもらえる?変えて欲しかったらその時に言うし、このままで良いと思ったらそう言うから。」
「はい」
私はソファに寄りかかり、楽な姿勢を取ってさっさと目を閉じる。寝つきの良さは私の特技の一つだ。どうせ変更なんかしない。一つのことをずーっと考えるのは面倒だし苦手。後悔は人生にはつきものってものよ。下手な考え休むに似たりってね。ぐう。
「花梨さん。起きてください。」
この声は不思議。大声では決してない、むしろ静かな声なのに無視出来ない。幸い私は寝つきも寝起きも良い方だ。身体を起こして軽いストレッチをするとすっきりした。
「あ、尋ねるけど、病気になったり怪我したりした時って魔法で治せる?もし出来ないなら言語習得より薬の調合のスキルをお願いしたいんだけど」
「あなたの魔法適性…というよりチー…失礼しました。あなたの魔法ならば大抵の病気や怪我ならば癒せます。どうします?薬調合のスキルになさいますか?」
「ならいいや。言語習得でお願い。生まれてから薬のことは頑張ってみるよ。」
「ではそれらとは別に「鑑定」をつけましょう。」
「いいの?三つまでって言ってたのに。」
「いえ、あの、優人さんに譲歩すると際限が無いような気がしてそう言っただけです。あなたは欲が無いのでかえってつけてあげたくなりましてね。」
「それじゃありがたく。」
「ではドアを開けて出てください。幸運がありますように。」
「ありがとう。あなたにも良いことがありますように。お世話になりました。」
そう言えば。
「ごめんなさい。あなたの名前を聞いてなかったわ。教えてくれない?」
「…神に名はありません。」
神様だったんだ。うわ、タメ口で話してたよ。
「失礼な物言いをしてごめんなさい。」
「楽しかったですよ。ありがとう。」
白い壁に今まで無かったドアが現れる。ノブに手をかけて開けて見るとドアの向こうは何の変哲もない白い廊下が続いてる。
優人が無造作に出て行ったわけだわ。そう思いながら廊下に出る。
廊下に出て、一歩踏み出した途端に落とし穴に落ちたような落下感があって。
あっと言う間もなく。どうやら私は産まれたらしい。