リバーシーが流行りました
いくら四季の変化が緩やかで冬が厳しくなくっても冬は冬。
農閑期と言うくらいだ、農作業も減る。だから結婚式は大抵冬にする。
でも。今年私の村では結婚式が無かった。
手持ち無沙汰な村人たちはチョコチョコ王都に出かけてはシードルやドライフルーツ、冬でも収穫出来る葉野菜などを売り、目新しい物を探しては買って来る。
つまり。リバーシー(ここではパシャメーロ、と呼ばれるようになった。白黒の意味)が幾つか持ち込まれたのだ。
村の集会所(共同作業をしたりもする。土間が半分、木の床半分の小屋。土間の上にも屋根がある。)にいつも何人かが集まってワイワイゲームをしている。
こういう娯楽はあまりなかったようで珍しいみたい。
あ、でもボーリングみたいな屋外でするゲームはある。タック(ピンのこと)と呼ばれている。それもたまに集会所の土間で行われている。
でもリバーシーって子どもも大人も楽しめるからすごく受けてる。家族ですると喧嘩になるから、集会所でするんだって。
なんか縁側将棋ってこんな感じなのかなぁ。
リュートは持ってるけど、あんまりしない。
強過ぎて丁度良い相手がいないのだ。
私は興味が無い上に弱いし、父さん母さんはリクの世話で忙しいし。
教会でたまに神官のタークさんと何局かするくらい。
神官さんたちもこのゲームを気に入ったみたい。
冬の一月の末に初めて持って行ったんだけど、冬の二月の初めにはもう教会に置いてあったもの。
神官さんたちの中ではタークさんが一番強いんだって。
今ではリュートのも教会に置いてある。
やりたい子どもたちに解放しているわけだ。
皆結構楽しそうに遊んでる。
この間父さんと王都に行った時にハウおじさんを訪ねたらリバーシーは今、あちこちの工房で作ってるって。
あとソロバンも。
名称はそのまま。こちらでは数玉という意味になる。
間違い難いので、ギルドの職員さんたちとか、商店の人とかがほとんど今までの計算器からソロバンに切り替えてるそうだ。
従来の計算器は数を習う内だけ使われる教材として教会に置かれるだけになりそう。
それで、今まで計算器を作っていた工房でソロバンを作るようになったのだと言う。
リバーシーは元々そんなに高い値段設定ではないし、ソロバンも高価にするわけにはいかない日常品なので利益は薄いけれど。
ギルドは近いうちに他の国々にも製造許可を出す意向だという。なんか権利がどうとかああだとか。
知らないよ。そんなこと。おじさんに丸投げした。
「でも、良いのか?どっちもリンの思いつきを元に俺が考えて作ったことになってるぞ。」
「良いってば。その代わり、又何かお願いするかも。だからその時はよろしくね〜」
「又何かって何だよ?」
えーとすごろくとか?でもリュートに今は止められているからなあ。
「わからないけど、リュートと思いついたらさ。」
「お前たちは二人でいると色んなことを思いつくのか?」
「うん。まあそうだね。」
「最強だな。全くお前たちは。」
「あはは! 」
久しぶりに言われちゃったよ。懐かしいなあ。
うん。日本で生きていた頃はやたら友人たちから言われてた言葉なんだ。




