弟リクの誕生祝い
冬の一月三日。(これくらいなら判るんだよ)
リクの誕生祝いをした。
正確に言うと、一日の鐘が鳴った翌二日に村のお披露目をして、さらにその翌日の三日に王都や近隣の村や王都に住んでいる親類がきて祝ってくれた。
と言っても大したことはしない。
村のお披露目は村の人がやって来て家の入り口で挨拶する。その際お祝いの言葉と何かしらのお祝いの品(ドライフルーツを少しとか小麦粉とか布とか)を貰う。それだけ。
三日のお祝いもバラバラに訪れる親類が(大抵奥さん一人で来る。家族でとか夫婦で来てくれる方が珍しい。)おめでとうを言って祝いの品(親類が住む村で作っている物をくれることが多いみたい。この国にサツマイモがあるなんて知らなかったよ。あと栗も。)を贈って帰って行く。
勿論貰う側であるうちも何かしらお返しをする。
村のお披露目でのうちのお返しは味噌を少し葉っぱに包んだ物だった。
何でもうちの味噌は美味しくて村でも評判なんだって。普段は味噌のやり取りなんかしないんだけど。共同作業をする時、持ち回りでお昼を作ることがある。きっとその時に食べたんだろう。
親類にはシードルを少し、陶製の徳利のような物に入れてお土産として渡した。
まだうちの村でしか作ってないし、お酒が好きな人も多いからすごく喜ばれた。
お祝いでいただいたサツマイモ、少し残して春に植えたいなあ。煮て食べたんだけど割と美味しいサツマイモだったよ。
栗は貰った時点で茹で栗だったから増やせないけど(中に虫がいることがあるから茹でて売るんだって)。
リクが大きくなって裏山や野原に採取に行く頃はきっと私もリュートもこの村にいないから(側で色々教えてあげられる人が必要なの)。
母さん、リクがちゃんと採取出来るまでは一緒に行ってあげてね。
お祝いの夜。眠る前の挨拶で母さんにそう言ったら涙が出てきた。
父さんが慌てて私を抱き上げて、母さんが私の頭を撫でてくれる。
「あまり先のことは考えなくて良いわよ。リンが望むならずっとここにいたって良いんだし。ね?」
「そうだよ、リン。慌てて大人にならなくて良いんだ。お前は父さんと母さんの大事な娘なんだから。」
代わる代わる慰めてくれる母さんと父さんの言葉を聞いて又泣いてしまった。
私は今はまだここにいたい。大好きな父さんと母さんと一緒が良いんだ。
おやすみ、と父さんたちに言ってリュートと私の部屋に入る。そしてリュートにそう告げた。
「身体の年齢にお前の精神のある部分が引きずられているんだろうな。まだ七歳、小学一年だぞお前。両親の側から離れたいと思うわけがない。」
「うん。」
「俺はお前の側にいるぞ。相棒。」
「うん!」
「あんまり先走るなよ。」
「うん。」
「リン。」
「うん。リュート。」
「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう。おやすみ。」
「おやすみ。」
ありがとう。リュート。
あんたがいてくれて助かったよ。
いつか、私、あんたの役に立てるかなあ。
立てると、いい、なあ。
…おや、す、、み、、、。




