魔力を測ったら
秋の一月が少し過ぎた頃(カレンダーがないと何日かが本当に判らなくなるよ)。魔力の測定器の修理が終わって教会に戻ってきた。
測定器は直径二センチくらい、長さ五十センチくらいの棒で、一部にガラスがはめ込まれている。大きな温度計みたい。
この春から教会に通い始めた子どもが一人一人それを持つ。しばらくするとヤンさんかアリーさんが測定器を取り上げて記録する。
リュート以外の三人が終わってリュートが測定器を持つ。ヤンさんが測定器を取り上げて記録しながらリュートに
「魔力がかなり高い。明日から魔法を教えるから」
と言った。
次は私。アリーさんが取り上げてすこし目を見張った。記録するとヤンさんを呼ぶ。ヤンさんは記録と測定器を交互に見比べて私に言った。
「魔法師になれるぞ。リュートと一緒に王都の学園に推薦できる。」
「二、三年後までに考えます。」
「…それもそうだな。リンはまだ七歳なのだから。」
他の子たちも驚かなかった。
リュートと私は生活魔法をすぐに使いこなせるようになったので。
おまけにリュートは魔力を使って植物を目に見える早さで成長させられたし、私は魔法を使おうとしてる時に油断すると宙に浮くし。
きちんと魔法を制御出来るリュートは年上の子たちからも尊敬されてる。私は…すごいけどちょっとかわいそうみたいな目で見られる。なんでだろう?
深くは追求しないけどさ。
その日。リュートと帰り始めたらヤンさんがついてきた。今日判定した魔力のことで親に話がしたいんだって。
道々はラムドルのことを沢山聞かされた。
リュートの言う通りに作ったらちゃんと出来たこと。
報告を受けた王都にあるこの国の教会本部は初め半信半疑だったけれどヤンさんが持ち込んだ現物を飲んで司教(教会で一番偉い人)の目の色が変わったこと。
今は実験的に王都とナル村の教会だけで作っているけれどいずれは全国に広げるつもりであること。
ギルドに卸すか、教会で販売するかは教会内部でも揉めてるから未定になっていることまでも。
教会で売るんだったら薬草とか果物の香りをつけたらどうかと言ったらヤンさんは考え込んで黙ってしまった。
家に入ると父さんと母さんがびっくりした。でもとりあえずヤンさんにも食事を勧める。シードルのおかげで家計も潤って以前よりスープに入る肉も増えた。
食事を終えるとヤンさんが父さんと母さんに話を始めた。
「リュートとリンの魔力を今日判定しました。リュートの持つ魔力は多く、癒しと浄化を使えるほどです。」
浄化魔法は癒し魔法の上級魔法だ。癒しと清潔を同時に発動させる。そして範囲が広い。癒しも清潔も一人の人に作用するのに対して浄化魔法は家全体、畑全体を綺麗にして癒す。病気が出た畑や流行り病が発生したりした時に使われる。でも使える人は多くない。
ヤンさんは使えるってアリーさんから聞いたけど。
「リンはリュートより魔力を持っています。多分ですが聖化を使えるかと」
聖化魔法は浄化魔法のさらに上。村全体とか町全体とかを清め、癒す魔法であり、王都の司教くらいしか使えない。(王都の教会の長が司教。その下に司祭。司祭の下が神官。)でも使える人は少ないと言われている。
思わずリュートと顔を見合わせてしまった。
「それでご両親にお願いがあります。リュートとリンを王都の学校に行かせていただきたい。
すぐにではありません。リュートとリンの年齢を考えて三年か四年後になると思います。
それまでに答えを出していただければ。
学費に関しては教会の推薦があれば無料になりますし、生活費等も支給があります。学生寮もありますから。」
ヤンさんはそう言うと家を出て行った。
どうしようか、リュート?




