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君と僕の勘違い  作者: きがしま
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プロローグ

どうもよろしくお願いします。

視点変更多いので読みにくいかも

――――身体はもうぼろぼろだった。普通ならば意識を失う状態だったが、許容をはるかに超えた痛みと、負けたという悔しさ、そして何より、ここまでやって止められなかった、という惨めさが意識をつなぎとめていた。

 自分を倒した相手が構えを解き、走り去っていく音を聞きながら、かつての記憶を思い出していた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 俺は親を知らない子だった。

 と言っても珍しくなどない。今の世の中ではそうじゃない子供を探すほうが大変なほどだったのだから。

 ――――戦乱期。

 それがこの大陸に訪れていた。しかし、大規模なものはかつてよりも少なくなり、総力戦にはなりにくい小競り合いばかりだった。しかしながら家壊され、人は死に、そして家族を失った子供たちが生まれる。それがまるで常識の様に存在する、嫌な世の中だった。俺は何時の間にか薄汚れた路地で暮らしていた。その日を生きるのに必死で、生きるためには何でもやった。人から奪い、殺し、そうやって生きるしかなかった。

 しかしある日、いつものように狩りを行っていた俺の前にそいつは現れた。

 今思えば、彼がすべての元凶だった。


「―――君には天を取り得る才能がある。こんなところで腐らせるにはあまりにも惜しい。どうだ、それを輝かせる気はないかね。もしも僕の言うとおりにしたなら食うに困ることはないし、何より、ともに暮らす友を得られるだろう」

 そのように大真面目に語る男に会った。実に信じがたい話だった。唐突にそんなことを見知らぬ男に告げられたのだ。まるでこれまでに起こったこともこれから起こることすべてを知っているかの如く、男は語りかけてきた。

「そんなこと言われたって信用できるわけがないだろ。仮に事実だったとしてそれを俺に伝えてあんたに何の利益があるんだよ」

 警戒心からそう返すとその男は

「意味か、意味などないさ。ただ単にこの戦乱の世で輝き得る存在が無為に消えていくのが耐え難いだけさ。僕は人間の可能性、その輝きの極みを見たいんだよ」

 そんなことを熱心に身振りまで交えて語ったのだ。その姿には嘘が全く見えず、信じてもいい、と思ってしまった。

 そして彼にやるべきことを訪ねて得た、この町にある城へ行き、そこで赤い髪の女の子に会いなさい。その後は彼女に仕え、騎士として戦うのだ、という言葉を頼りに行動した。

――――今思い返すと、なぜだか、男の顔はよく覚えていない。確かに顔を見て話をしたはずなのにそこだけモヤがかかったかのように思い出せないのだ。ただ、俺にやるべきことを伝えるときの熱心さは特徴的で、そのときの言葉が全て脳に刻まれていた。

 言いつけ通り向かった先で、この世で最も大切な存在となる少女――リリィ――との運命の出会いを果たした。

 そして俺は彼女に仕え、この国を勝利に導くために戦っていくのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 名もなきただの子供だった俺は赤い髪の娘に拾われ、彼女のもとで戦い、そこで得た友とともに戦士として名をはせ、今や一軍の将にまでなったのである。

 どこにでもいるような戦災孤児から将にまで上り詰めた俺は今、




――――俺自身を拾ってくれた彼女を打ち倒すために戦いを挑み、何の成果も得られず、敗北を喫したのである。

 遠のく意識の中、ともに戦場を駆け抜け、唯一彼女を打ち倒しうる友に願いを託した。

――――後は頼んだぞ――――



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「そこをどいて!戦いを終わらせるにはもうこうするしかないの!」

 彼との戦いで所々に傷を負ったリリィが焦った表情でこちらに叫んだ。

「......昔約束しただろ、止めるって。もし通りたければ彼と同じように叩き潰して行けばいい。そして3人で過ごすんだ。昔描いた夢のように」

 約束を果たすためにここにいる僕はその願いをかなえるわけにはいかなかった。

「そんなこと言ったって、もう夢を見られる時間は終わったの!王家の人間は責任を果たさなきゃいけい。だから......邪魔をするというなら騎士から除名し、王の名のもとに貴方を排除します」

「まるで僕なんか簡単に叩きのめせるみたいじゃないか。僕はこの国の騎士で最強だぞ?今まで君が倒してきた弱い奴らと一緒にされちゃ困るな」 

とは言ったものの、実際に勝てるかといえば分が悪すぎる。そもそものスペックからいっても彼女には届かないし何より、使う術式の相性が悪すぎる。勝ち目が2割あるかも怪しい。

「その言葉は訂正しなさい、あの人は弱くなんかありません。命を懸けて向かってきました。いくら貴方でも彼を侮辱するのは許しません」

 ほんとなあ、この二人は......うらやましいというか、妬けるな。僕だってずっといたのにさ。

「気に入らないなら撤回させてみなよ。負ける気はないけどね」

 槍を召喚し、構えつつ口上を述べ、対する彼女は手甲を呼び出し構える。

「リタストニア王国第一騎士団団長ミシェル・フォンブラード」

「リタストニア王国第2王女レイチェル・フォン・リタストニア」

「「参るッ!」」

 そして二人は激突した。





一人壁にもたれかかり、戦いの余波で天井が吹き飛び、見えるようになったそれを見上げため息をつく。

――――駄目だった。槍も折れて、もう魔力も尽き無様に負けた。彼女はもう儀式を始めているだろう。

「約束、果たせなかったなあ......」

 ずっとそのために鍛え生きてきたのに、結局何もできなかった。

「まあ覚悟してたけど、悔しいなほんとう」

 彼女の向かった方向から膨大な魔力の奔流を感じ、この戦乱も終わったな、と確信する。意識を暗闇に落としつつ思うのはやはり、

「ああ、終わってしまった。こうなる前に全部終わらせるべきだったな......」






こうして一つの時代が終わった。

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