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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
亜人救出編
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傭兵


「何か用、キサラさん?」

 部屋に入ってきた女性は落ち着いて清んでいるが、傭兵らしい勇ましさを感じさせる声でキサラに問う。

「すみませんエミリアさん。 今此方の方々と例の集団に対抗する為の話し合いをしているので、貴方にも是非参加してほしいのです」

「それは構わないけど、彼らは一体?」

 エミリアは訝しげにノエル達を見た。

 まあ黒い鎧に身を包んだ騎士に3人の美女、怪しい笑みを浮かべる男にそれに従う少年に野性的な大男という統一性のない面子だ。

 怪しく見えるのは仕方ない。

 それを察したか、ゴブラドが立ち上がりエミリアに歩み寄る。

「初めましてエミリア殿。 私はゴブラド。 ゴブリン領主(ゴブリンロード)をしております。 現在諸事情で村を離れておりまして、息子のゴブリドに名代を任せております」

「ああ、話には聞いているわ。 エミリアだ。 傭兵をしてながら旅をしている」

 ゴブリドの事に納得したエミリアは差し出された手を取り握手した。

「この方達は私が離れている時に懇意にしていまして、今回の村の事を聞き協力をお願いしたのです」

 ゴブラドに促され、ノエルは黒騎士としてエミリアの前に立った。

「黒騎士です。 以後、よろしくお願いします」

 ノエルは手を出すが、エミリアはゴブラドの時のようにその手を取らなかった。

「悪いけど、正体を隠している者とはあまり馴れ合わないようにしているの。 依頼主の意向だから協力はするけど、必要以上に関わる気はない」

 そう言うと、エミリアはキサラ達の後ろに控える様に立った。

「おいおい、随分な態度じゃねぇか。 うちの黒騎士様がわざわざ挨拶してるってのによ」

 そんなエミリアにリナが突っかかる。

「気を悪くしたのなら謝るわ。 でもこれは此方の主義だから」

「主義だかなんだか知らねぇけどよ、こっちとしてはこいつが頭なんでな。 あまり舐めた態度取られると困るんだよ」

「ちょっとリナ、なに考えてるんだよ?」

 いつになく絡むリナに、イトスが仲裁に入る。

「うるせぇよイトス。 おい、エミリアとか言ったな。 あんまり舐めた態度取るなら、そんだけのもん持ってんだろうな?」

「ちょっと待てよリナ!」

 好戦的に笑みを浮かべ挑発するリナにイトスが慌てるが、エミリアは静かに剣に手をかける。

「それがお望みなら、喜んで受けるけど」

「待ってくださいリナさ・・・さん! ここはどうか納めてください」

 危うく様付けで呼びそうになるのを堪え仲裁に加わるキサラだったが、リナは止まる様子はなかった。

「リナさん」

 流石にノエルが声をかけると、リナは「任せとけ」というように自信に満ちた目をした。

 その目を見て、ノエルは何かを察して止めるのを止めた。

「やり過ぎないで下さいよ」

「おおよ」

「ノ・・・黒騎士!?」

 リナを止めなかったノエルにイトスが驚く中、リナは前に出て構え、エミリアもそれに応じる。

 キサラ達は戸惑い、リーティアとレオナは呆れたような苦笑し、ジャバは少し興奮気味で二人を見、エルモンドはこの状況が楽しいというように笑む。

 やがて二人の間に気が満ち始める。

 そして、次の瞬間それは一気に炸裂した。

 リナの拳とエミリアの剣がぶつかり合い、周囲に軽く衝撃が走る。

 二人は一撃ぶつけ合い制止すると、やがてリナは小さく笑みを浮かべる。

 エミリアも同じ様に笑み剣を収める。

「これで満足?」

「おう。 悪いないきなり」

「構わないわよ。 こっちも色々見れたしね」

 互いに矛を収めるリナとエミリアに、イトスは訳が分からないというようにポカンとした。

「なあ、これどういうことだよ?」

「まあ、リナ流で相手の実力図ったってとこよ。 あの子もそれを察してのってくれたみたいだけど」

「んな!? それだけで喧嘩吹っ掛けたのかよ!?」

「互いの実力を知っておくのは大切よ。 そうするのには、あれが一番手っ取り早いしね」

 レオナの説明に驚くイトスに、エルモンドはふひひと笑いながら補足する。

「それに単純に実力だけじゃなくて、あの子の人となりも多少なりと見ることが出来たしね」

 エルモンドの言う通り、リナの挑発に乗せられる事のない冷静さ、威圧に動じない胆力、その意図を察して乗る機転と洞察力とわかったことは多い。

「君もそうじゃないかい、エミリア君?」

「そうね。 少なくともあなた達がそのリナって人を信頼しているのはわかったわ。 特に、黒騎士さんとの信頼感は強そうね」

 すぐにリナの意図を察したノエル。

 そして恐らくこの集団でトップクラスの力を持ちながらノエルの為に真っ先に動いたリナ。

 そんな二人の関係性を、エミリアはすぐに察した。

 無論、ノエル以外の面々も同様だ。

 エミリアはノエルに近付くと今度は自分から手を差し出した。

「この手の集団でそれだけ信頼関係を持てているなら、ある程度は私も信頼して良さそうね。 改めてよろしく」

 素直なエミリアに、今考えると最初に拒絶したのも自分達を試すためでは、とノエルは思った。 

「此方こそ。 よろしくお願いします」

 ノエルがその手を取り、キサラ達はホッとし、自分だけ意図に気付けず落ち込むイトスはエルモンドに慰められていた。

「うがう! ノエルとリナ、仲いい! エミリアとノエルもこれで仲良くなった! よかった!」

 嬉しそう言うジャバの言葉に、その場にいた全員が固まった。

「・・・・ノエルって、あの魔帝の?」

 一瞬ポカンとしたエミリアが聞くと、ノエルは乾いた笑いを漏らす。

「ジャバてめぇ! 何バラしてんだよこのやろう!!」

「うが!? 俺なにもしてない!!」

 折角ノエルの正体をバラなさいままある程度信用させることが出来たのに、ジャバに全てぶち壊されたリナはジャバに掴みかかる。

 レオナ達はそれを宥め、エルモンドはその状況に大笑いし、会議場は暫く混乱したのだった。


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