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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
亜人救出編
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亜人の村


 ガルジとの会合から数日、ノエル達はガマラヤのある森に辿り着いた。

「ここからは私がご案内しましょう。 ささ、此方に」

 ゴブラドはノエル達の先頭に立ち、森の中を案内する。

 ゴブラド以外のリムを初めとしたゴブリン達も、久しぶりの帰郷ということもあり今回は数人付き従ってきた。

「随分森の奥にあるんですね」

「ええ。 本来ならもっと切り開き外とも交流しやすいように道を整備したいのですが、当時は亜人に対する差別意識の強い者も多かった為、そういった者の襲撃を防ぐ為この様にしているのです」

「そんな理由があったんですね」

「はい。 ですが最近は商人の方が来るので多少整備してある場所もあるんですよ。 ほら、見えてきました」

 ゴブラドが指を指すと、石畳で舗装された一本道が見えた。

 石畳はドワーフの作らしく、細かく丁寧に造られ、少しの歪みもなく楽に歩ける。

 これなら馬車が通っても殆ど揺れることはないだろうと、初めて訪れるノエルとイトスはその技術に感心した。

 ゴブラドはそんなノエル達の様子に、嬉しそうに顔をほころばせる。

「もう少しで、村の入り口が見え・・・」

「うらぁ!!」

 ゴブラドの言葉を遮り、突然何者かがノエル達の目の前に飛び出してきた。

 ノエル達が避けると、先程まで歩いていた場所に巨大な刀が降り下ろされる。

「何事か!?」

 ゴブラドは慌て、リナ達も臨戦体勢に入りる。

 すると、周りから複数の人影がノエル達を取り囲む。

鬼人(オーガ)か。 めんどくせぇ連中が来やがったな」

 取り囲む者達を見てリナが呟いた。

 取り囲む者達は皆着物に身を包み、額には大小様々な角を生やしている。

 彼らは鬼人(オーガ)と呼ばれる亜人で、亜人の中でも特に戦闘に特化した戦闘部族だ。

 ノエルは先程刀を降り下ろした人物を見た。

 漆黒の2本の角を額に生やした長い白髪の青年で、その顔は整っており野性味に溢れている。

 だがその纏う空気は、今いる鬼人(オーガ)達の中では飛び抜けて鋭く、彼がこの集団のリーダーであることを悟らせる。

 鬼人(オーガ)の青年は己の身の丈程ある出刃包丁の様な形の巨大な刀を肩にかつぎ、牙を露にし此方を睨みつけている。

「とうとう見つけたぞ、この人拐いが!」

 その表情は怒りに満ちており、すぐにでも此方を襲わんとする勢いだった。

 このまま戦闘かとノエルが思うと、ゴブラドが1歩前に歩みでる。

「ラグザ殿! これは一体どういうおつもりか!?」

 ゴブラドの怒声にラグザと呼ばれた鬼人(オーガ)はふと我に帰ったように瞬きをした。

「え? ご、ゴブラドの旦那?」

 顔見知りの姿を確認し戸惑う鬼人(オーガ)達は、冷静になったのかやがて側にいるリナ達にも気づき始める。

「おい、あれディアブロ様じゃないか?」

「もしかして、あの大男ジャバウォック様じゃ・・・・」

「おいおい、よく見たら五魔が全員いねぇか?」

「馬鹿な!? この10年姿御隠れになっていた五魔様が何故!?」

 明らかに動揺が広まる中、ゴブラドは声を張り上げる。

「静まれい! この方をどなたと心得る!? 先の大戦で大恩あるノルウェ陛下の御子息、ノエル・アルビア様なるぞ!」

 ゴブラドの言葉に、鬼人(オーガ)達は衝撃を受け固まる。

 一方の紹介されたノエルは恥ずかしく、鎧の中で顔を赤らめた。

「我等の大恩ある御方の御子息に刃を向けるとは、一体どういうつもりか!?」 ゴブラドの一喝に鬼人(オーガ)達は混乱しながらも刃を納めた。

 そしてラグザは前に出て頭を下げる。

「すまねぇ。 知らねぇ事とはいえ、無礼な事をした。 謝罪を受け入れてほしい」

 素直に頭を下げる鬼人(オーガ)達に、ノエルは頭を上げるよう促す。

「気にしないでください。 それより何があったんですか? 人拐いと言っていましたが」

 あのラグザの怒り様は、ハッキリ言って普通ではなかった。

 ラグザだけではない。

 鬼人(オーガ)達の殺気は凄まじく、非常事態が起きている事を想像させた。

「それは・・・・・とにかく村に来てくれ。 あんたらが来たなら他の連中にも知らせねぇと」

 ラグザは一人の鬼人(オーガ)に目配せすると、その鬼人(オーガ)は村の方へと走っていった。

 ラグザは他の鬼人(オーガ)達に警戒を続けるよう指示すると、ノエル達を村に案内した。

 ラグザに従い進むと、大きな櫓と木の柵で覆われた町が見えた。

「うわぁ」

 町の入り口で、ノエルは思わず息を飲む。

 入り口には先程の鬼人(オーガ)の報告を聞いた亜人達が集まってきていた。

 大地の民ドワーフに森の使徒と呼ばれるエルフ、様々な動物の姿の獣人に植物の特性を持つドリアード、果ては巨体のトロールや仮面とローブ姿のドルイド達までいる。

 無論、ゴブラドと同じゴブリン達もだ。

 これだけ多くの亜人達に、ノエルとイトスは圧倒される。

 暫く進むと大きな建物の前で、それぞれの種族の代表と思われる人達が待っており、ノエルや五魔達を見ると頭を下げた。

 すると、シスター姿をしたエルフの女性が代表して前に出る。

 白く澄んだ肌にフードの隙間から見える桃色の髪、そして水色の瞳はまさに神話のエルフそのものと言っていい美しさを体現している。

「お久し振りでございます、五魔様、ゴブラド殿。 そしてお初にお目にかかりますノエル様。 (わたくし)はここのエルフの長をしておりますキサラと申します。 現在薬学長と医学長を兼任しております。 以後お見知りおきを」

 丁寧に挨拶をするキサラの所作は優雅の一言であり、エルフ独特の神秘さをより引き立てる。

「初めまして。 ノエルと申します。 本日は騒がせてしまい、申し訳ありません」

「いえ、それは此方も同じです。 同胞が皆様に無礼を働き、誠に申し訳ありません」

「気にすんなって。 それより早く中に入れてくれよ。 訳はそこで聞く」

「畏まりました。 では、此方に」

 リナに促されたキサラに案内され、ノエル達と各種族の代表は建物の中に入っていった。






 建物に入ったノエル達は大広間に通される。

 そこは町の大会議場であり、各種族の代表は円卓を囲む様に座り、ノエル達も席に着いた。

 その時各代表の紹介がされた。

 まず最初にドワーフの王、ガンズ・グロリア・ドルジオス3世。

 アザ黒い肌にたっぷりの髭を蓄えており、現在ドワーフ達の鍛冶、建築全てを取り仕切っている。

 続いてロブロ・レオノア。

 獅子の獣人であり、この町の全ての獣人達の長である。

 百獣の王と呼ぶに相応しい王冠の様になびく(たてがみ)に鎧姿で、正に威風堂々という言葉がよく似合う。

 狩りや家畜の世話を担当している。

 その横に座るのは魔術を得意とするドルイドの長であるマグノラ。

 神官の様なローブに仮面姿をしており、この町の魔法研究の第一人者だ。

 ドリアードの長は老人の様な姿をしており名前がない。

 ドリアードは一族全てで個という考えがあり、誰も名前を持たない。

 現在は植物操る力を利用し農業の管理をしている。

 トロールの大親分ジャック。

 その体は筋肉質というよりデップリしているが、亜人1の巨体を持つ一族のトップにふさわしく3メートル程の巨体を誇る。

 本人曰く頭を使うのは苦手で、力仕事を主に担当している。

 次にゴブラドの代わりにゴブリン代表をしていたゴブリド。

 ゴブラドの息子でリムの兄だ。

 ゴブラドには負けるが人間の大人位の身長はあり、精悍な青年といったイメージだ。

 そして最後に先程ノエル達を襲った鬼人(オーガ)のラグザ。

 若き鬼人(オーガ)のリーダーにしてこの町1の戦士。

 一番数が少ない鬼人(オーガ)達を率いて町の警備を担当している。

「改めて先程の無礼を謝罪する。 すまなかった」

「おめぇは頭に血が上ると見境なくなるからな。 もう少しドシッと構えてろって。 この俺みたいに。 だっ~はっはっはっ!」

 ドルジオスがラグザをからかう様に言い、背中をバシバシ叩いた。

「おや、主も奥方に似たような事で注意されていたと思うが?」

「ぐ!? あいつは今関係ねぇだろうが!?」

 ドルジオスが顔を真っ赤にし慌てると、レオノアは小さく笑みを浮かべる。

 その光景に固かったラグザの顔が少し緩まる。

 二人ともノエルに手を出した事を気にするラグザを気遣ったのだろう。

 怖そうな見た目によらず優しい人達なんだなとノエルは感じられた。

「さてさて、謝罪もいいがそろそろ本題に入ろう。 ノエル様達をお待たせするのも、気が引けますからな」

 穏やかな表情で言うドリアードの長の言葉に、まずゴブラドが立ち上がる。

「では失礼ながら私から1つ確認があります。 皆様の所に、我が配下のプレスとナッパは来てはいないのですね?」

「はい父上。 ノエル様やリナ様達の事を伝える使者は誰一人としてこの地には来ていません。 ですので、正直我々も父上やノエル様がいらしたことに混乱している状況でして」

 ゴブリドの言葉に、ゴブラドは「やはり」と表情を強ばらせる。

 実はゴブラドは伝言が上手くいっていないのではないかと薄々感じていた。

 もしノエルと五魔の事をこの町の住民が聞けば、協力するしないは別として必ずコンタクトを取ってくるはずだ。

 仮に使いを出せずとも、植物を操るドリアードや魔術に長けるドルイドがいる。

 だから何らかのメッセージは必ずあったはずだ。

 それがなかったということは二人は町にたどり着けなかったということだ。

「恐らく、今我々が抱えている問題と関係があるのでしょう」

「ラグザさんのいった人拐いですか?」

 ノエルの問いにキサラが頷いた。

(わたくし)達はこの半年余り、謎の集団に襲撃を受け続けています。 その集団の目的の1つが、(わたくし)達同胞の拉致です。 既に種族問わず、100名以上が連れ去られています」

「そんなにですか!?」

「ここには強力な亜人やギエンフォード将軍の兵もいると聞いたけど、それでも駄目なのか?」

 イトスの言葉にキサラに代わりマグノラが説明した。

「勿論ですとも。 ここにはラグザやレオノア殿達の様な屈強な戦士もいますし、我らドルイドの魔術結界もある。 しかし、どうも敵の方が上手らしいのです」

「というと?」

「どういうわけか、敵さんは此方の防衛網の隙間を見抜くのに長けている。 どんなに固めようと僅かに空いた隙間を縫う様に入り込む。 加えて相手は亜人の特性をよく知っているようでしてな、現に誘拐が難しい巨体のトロールですら被害に遭っています」

「おのれ! 我等の聖域を汚す愚か者が! 見付けたら必ず報いを受けさせてやる!」

 机を叩き激昂するジャックの様子に、ノエル達もラグザの先程の怒りも納得した。

 半年にも及ぶ攻撃で仲間が連れ去られていれば、ラグザやジャックの反応は当然だ。

 他の各種族の長達も内心では同じ気持ちだろう。

「つまり、プレス達はその集団に拐われたと?」

「その可能性は高いです。 現に我らもギエンフォード様に救援を要請しようとしましたが、全て妨害されております」

 キサラの説明にエルモンドはふひひ、と不気味に笑った。

「なるほどなるほど。 大体読めたよ、相手の正体」

「なんですと!?」

 エルモンドの言葉に、各種族の代表達は驚愕する。

「それは真かエルモンド殿!?」

「勿論だよレオノア君。 恐らく撃退すること可能だろうね。 どうだろうノエル君?」

 エルモンドの問いに、ノエルは頷いた。

「わかりました。 僕達もその集団を倒すのに協力します」

「お、お待ちください! いくらかなんでも、ノエル様達にそこまでしてもらうわけには」

「その通り。 此方としてはありがたいが、来たばかりのノエル殿達を此方の問題に巻き込むわけには」

 ノエルの突然の申し出に戸惑うキサラとレオノアに、リナは「問題ねぇ」と言った。

「こっちもギエンフォードの頼みでお前らの様子見てこいって言われてんだ。 人拐いくらい相手してやるよ」

「ギエンフォード将軍が? 我らに助けを?」

「ええ。 本来なら直接来たかった様ですが、今はそれが出来ない為私達を送ったのです」

 リーティアの説明に、キサラ達は安堵の表情を浮かべる。

「ああ、神はまだ(わたくし)達を見捨てていなかった」

「五魔が味方に付いてくれりゃ千人力だな!」

「うむ。 我等も命運もまだ尽きていない様だ」

 希望を得て一気に活気づく会議場の空気に、彼らがどれだけ追い詰められていたかがわかった。

 ノエルは本来の目的と関係なく、彼らを助けなければと感じた。

「ではエルモンドさん。 その相手の正体についての話を・・・」

「あ、少しお待ちくださいノエル様」

 話を進めようとしたノエルをキサラが遮った。

「どうしました?」

「この後の話し合いに参加させたい方がいるのですが、よろしいでしょうか?」

「構いませんけど、ギエンフォードさんの部下の方ですか?」

「いえ。 あの方達は今度重なる襲撃で負傷し動けない状況なのです。 実はノエル様達の少し前にいらした方で、傭兵をされているとか」

「おお! この前ラグザが襲って返り討ちにされた時の嬢ちゃんか!」

「ドルジオスのおっさん!」

 自分達以外にも襲い掛かり、返り討ちにされたことを暴露され慌てるラグザに、キサラはコホンと仕切り直す。

「その方には以来住込みで警護をお願いしています。 ですのでこの場に来て頂いた方がいいかと」

 ノエルはリナとエルモンドを見ると、二人は小さく頷いた。

「わかりました。 ですが万一の為に僕達の素性は隠しておいてください」

「畏まりました」

 ノエルの許可を受けたキサラは近くに控えていた部下にすぐに呼びに行かせた。

 暫くすると、細身の剣を腰に下げた若く美しい金色の髪の女性が部屋に入ってきた。


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