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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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暴竜急襲


 ガマラヤに向かっていたノエル達は、物資の調達の為ゴルグに来ていた。

 本来ならソビアで充分な量を補給する予定だったが、あまり長居をすればギエンフォードに迷惑をかける可能性があった為必要最低限の量しか補充出来なかったのだ。

 その為、今回ノエルとリナとリーティア、そしてライルの代わりに荷物持ちを引き受けてくれたゴブラドの四人が、この町にやって来たというわけだ。

 因みに荷物持ち候補で普通の人間サイズのジャバも名乗り出たが、この町の治安を考えトラブルを回避する為に置いてきた。

「後は砂糖とミルク、小麦粉とイチゴですね、黒騎士様」

「それ、リナさんが食べたいケーキの材料でしょ」

「いいじゃないですか。 黒騎士様のケーキ美味しいですし」

 久しぶりのおしとやかモードのリナのおねだりに、黒騎士のノエルはやれやれとレオナに託されたメモを見る。

「まだ重いものは結構ありますから、あまり買えませんよ」

(わたくし)の事なら気にならさないで下さい黒騎士殿。 まだまだ持てますので」

 ゴブラドは既に背中に各種野菜を詰めた木箱を背負い、片手で樽を持ち上げていた。

「ゴブラド様もこう言ってますし、いざとなればリーティアもいるじゃないですか」

「私の事を怪力みたいに言わないで下さい。 それより、なんでまたそのキャラなんですか?」

「だって、この手の場所は私みたいな女の子がいると結構釣れるんですよ、カモが」

 リナは一瞬本来の悪い笑みを浮かべた。

 要するに、わざと絡まれて返り討ちにして金品を奪おうということだ。

「お金ならまたクロードのが残ってますから大丈夫です。 というより、下手に騒ぎを起こす方が問題だと思いますけど」

「リーティアったら、最近出番少ないからってそんなにムキにならなくてもいいのに」

 リナの一言にリーティアはピクッと反応した。

 リーティア自体は人形だから出ないが、もし生身なら青筋でも出来ているのではないかという雰囲気を醸し出す。

「そのキャラでカモとか物騒な事を言ってる野蛮な人には言われなくないですね」

「あら、私はこれでも10年近くこれやってるんだから、ボロなんで出ないわよ」

「とか言ってますけど、表情ひきつってますよ」

「もう、止めてください。 騒ぎを起こさないってさっき言ったじゃ・・・」

「ヒャ~ッハハ~!!」

 ノエルが二人の仲裁に入ろうとしたその時、笑い声と共に目の前に誰かが飛び降りてきた。

 瞬時に警戒するリナとリーティアは、着地して舞い上がった土煙の中を注視する。

 煙が晴れると、そこには凶悪な笑みを浮かべる一人の男の姿があった。

「見付けたぜ~! 五魔~!」

 男の放つ殺気と五魔の事を知っている事から、ノエル達は聖帝の新たな刺客だと瞬時に察した。

「あなたは何者ですか?」

「へっ、そうだな。 あんまりこの肩書きは好きじゃねぇが、てめぇらに分かりやすいように名のってやらあ! 聖五騎士団最高幹部最強の竜! ガルジ様たぁ俺の事だ!」

 堂々と名乗りをあげるガルジにやはりと思い警戒を高める。

 しかも最高幹部ということは、この男が言うことが本当ならラズゴートやギゼルと同格、つまり聖竜の位置にいることになる。

 ゴブラドを庇うようにノエルが構えると、ガルジはニヤリと笑んだ。

「いいじゃねぇか。 やる気充分って感じだな。 しかし昼間から女二人も侍らせて買い物とはいいご身分だなディアブロ」

「・・・え?」

 何やら様子がおかしいと思っていると、ガルジはキョロキョロと辺りを見回す。

「それよりバハムートってのはどこだ? まさかそのゴブリンじゃねぇよな? どうせなら両方相手にしてやるよ!」

 ガルジがそう言い放つ後ろの建物の影で、コルトバは頭を抱え、ゲレダは呆れた顔をする。

「あのさ、あいつ五魔の顔知らないの?」

「教えましたよ。 特徴もしっかり教えましたよ。 でもガルジ完全に相手の雰囲気だけでディアブロとか決めつけてます」

「相変わらず大雑把な男だね~」

 ますます呆れるゲレダを他所に、ガルジは更に騒ぎ立てる。

「さあどおした!? 魔帝のガキってのも来てるんだろ!? 怖いんならそいつも纏めて相手してやら!」

 意気込むガルジに、ノエルはどうするべきか頭を悩ませる。

 事実この男の殺気は本物だから実力者ではあるのだろう。

 こちらの事情も知っているから聖五騎士団所属というのも嘘ではなさそうだ。

 だがどうも調子が狂うというか、本当にギゼル達と同格の地位なのか疑わしい。

 かと言ってこのまま放置するわけにはいかない。

 既に騒ぎでギャラリーが集まってきている中、ディアブロとか魔帝の子とか重要な情報が駄々漏れだ。

 なんとか止めなくてはと思いつつ、どう対処すべきかノエルを悩ませた。

 そんな中、リーティアが一歩前に出た。

「ん?」

「ガルジさん、と言いましたね。 あなたの探しているバハムートというのは・・・」

 瞬間、リーティアの背中が光りクロードが姿を現した。

「私の事だけど、何か用かい?」

 突然のクロードの出現に、ガルジは目を丸くする。

「な、なんだ? 女から男が出て?」

「バハムートは人形使いだって言っただろ! 人の説明ちゃんと聞いててよ本当!」

 ずっと隠れているつもりだったコルトバだったが、ガルジの様子が見てられずつい出てきて大声で説明する。

「お? おお! そういうことか! つまりてめぇが本物ってこったな!」

 納得したガルジの後ろで項垂れるコルトバの姿に、事情は解らないが何となくクロード達は同情した。

「そうか、てめぇがバハムートか! いいじゃねえか! これで両方相手できら!」

「ガルジ君だったね? まあ確かにここにディアブロもいるけど、鎧の彼じゃないよ」

「あ? んだと!? んじゃ何か? そのデカイゴブリンかチンチクリンな女が?」

「誰がチンチクリンだこらぁ!!?」

 チンチクリンと言われおしとやかな空気を吹き飛ばし本性を出したリナの怒声に、ガルジはポカンとした。

「は、ははは、ヒャ~ッハハ~! そういうことか! 普通の女だと思わせて油断させようってか! 危うく騙される所だったぜ!」

 騙すも何もそっちの早とちりだろとその場にいた者は皆思ったが、もはや訂正するのも面倒だった。

「どういたしますか? ここはうまく言いくるめて逃げた方が?」

「いや、多分そいつは無理っぽいな」

 ゴブラドの提案をリナは却下する。

 リナはガルジから発する凶悪な殺気が偽物でもなんでもないと感じていた。

 下手に逃げれば手痛い痛手を負う、それがリナの判断だった。

「しゃあねぇ。 ここは俺がやるか」

「いや、もし本当に聖竜なら私が相手するのが筋だろう。 それに」

 クロードは指を動かすとリーティアの全身に鎧が展開された。

「最近どうもいい所がないんでね、そろそろ活躍しときたかったんだ」

「まださっきの根に持ってんのかよ」

 苦笑しつつも、リナはクロードに譲るように一歩下がった。

「てめぇ一人か?」

「ああ。 それに勝負は一対一が一番面白いだろう?」

「はっ! 優男の割にわかってんじゃねぇか! いいぜ、ならたっぷり相手してやんよ!!」

 今闘気を剥き出しに、二人の竜が激突した。


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