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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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聖都

今回は聖帝サイドです

なのでノエル達は出ません(笑)

 アルビア王国帝都・イグノラ・・・その中央にそびえ立つのが旧魔帝の本拠地にして現聖帝フェルペスの居城、アルビア城だ。

 かつての魔帝の城というイメージはすでになく、白を基調とした美しくも壮大な城は聖帝の居城に相応しいと評判だ。

 そのアルビア城の城下町では多くの人が集まっていた。

 特に城の巨大な門の前では多くの民衆が集まり、その時を今か今かと待っている。

「一同、控えよ!聖帝・フェルペス・アルビア様の御見えである!」

 兵士の声にざわついていた人々が静まり返ると、門がゆっくりと開いていく。

 そしてフェルペスの姿が見えると、民衆から歓声が上がった。

 今日は聖帝が魔帝を倒した記念すべき日。

 フェルペスは祝典の為、こうして民衆の前に現れたのだ。

 聖帝フェルペスは民衆に柔らかい笑顔を向けると、前へと歩み出す。

 金色に輝く髪を靡かせ歩くその姿は、40前半とは思えぬ程若々しく、魔帝を倒した英雄に相応しい精悍とした姿だった。

 その傍らにはお付きの兵が二人、フェリペスを護る様に付き従う。

 フェルペスは用意された壇上の上に上がると、手を前にかざす。

 すると歓声が止み、静寂が場を支配した。

「・・・皆、今日はよく集まってくれた! 魔帝を破って10年というこの日に、諸君とこうして語らうことが出来る事を感謝する」

 よく通る澄んだフェリペスの声に、民衆達は静かに聞き入る。

「10年という時間を掛け、この国も漸く魔帝の影が薄くなり、本来の輝く国へと戻りつつある。 これも一重にこの場にいる皆・・・いや、この国全ての民の尊い努力の賜物だ!」

 瞬間、民衆から拍手と歓声が響くと、フェリペスはそれを制し続けた。

「だがこれはまだ途上だ。 周辺諸国から見ればまだ我々は魔帝の恐怖の国という認識が強い。 警戒し軍備を強めている国もあると聞く・・・だがしかし! それはじき治まる! なぜならば、我が国には素晴らしい強者達がいる!」

「聖五騎士団だ!」

「その通り!」

 民衆の言葉にフェリペスは大きく頷いた。

五魔(フィフス・デモンズ)等という邪悪な力ではない! この国を護るに相応しい真の強者、聖五騎士団が我々にはいる! 彼らの力と、諸君の力が合わさったその時こそ、周辺諸国は知るだろう! この国は!生まれ変わった事を!」

 賛同の大きな歓声が湧く中、フェリペスは更に力強く続ける。

「だから皆! 今しばらくその力を、この国の為!このフェリペスの為にどうか!どうか貸して欲しい! 皆の想いを!この聖帝フェルペスに預けてくれ!!」

「フェルペス様万歳!」

「聖帝陛下に栄光あれ!!」

 フェルペスの演説に、辺りは民衆の大きな歓声と熱気に包まれた。






「ふぅ・・・」

 祝典を終え、フェリペスは玉座に座り小さく息を吐く。

 そのフェリペスに、目元を覆う金色の兜と鎧に身を包んだ騎士が歩み寄る。

 その姿は金色の鎧が霞む程の高貴さ、優雅さを感じさせた。

「お疲れ様でした、陛下」

「おお、アーサー。 今回はすまなかった。 あれだけ民衆が近い中警備を組むのはなかなか大変だっただろう」

「問題ありません。 聖王・アーサーとして当然の役目です」

 聖王・アーサー、聖五騎士団第一部隊隊長にして、聖五騎士団全てを統括する総団長で、事実上この国のナンバー2に位置する実力者だ。

 無論、戦闘力も聖騎士最強クラスであり、その姿もあり聖王の名に相応しい人物として周囲から畏敬の念を抱かれている。

「いやぁ、しかしこういうのはなかなか慣れないから疲れるよ」

 アーサーが来ると、フェリペスは先程の威厳のある姿とは打って代わり、どこか気の弱そうな表情となった。

「聖帝に即位されて10年ですよ。 そろそろ慣れていただかなければ・・・」

「わかってるんだが・・・こればかりは性格でね。 本来私はああいう大々的な物は苦手なんだ」

 これがフェリペスの本来の姿だ。

 民衆やごく一部を除く臣下の前では聖帝として振る舞うが、本来彼はそういうことを好まない気の弱い物静かな男なのだ。

 だがだからこそ、彼の性格を知る臣下は魔帝を打ち倒したその行動を高く評価し、忠誠を誓っている。

 聖帝の素顔を知っているアーサーも、その一人である。

「それも国が整うまでの辛抱です。 全て終われば、あの様な陛下直々の行事も減らせるでしょう」

「それはそれで少し寂しいが・・・まあ、その分皆に頼らせてもらおう」

「お任せください、陛下」

 アーサーは口元に笑みを浮かべ、恭しく頭を下げた。

 すると、部屋の扉が開き一人の男が入ってきた。

「これはこれは陛下、お役目御苦労様でした」

「おお軍師殿。よく来てくれた」

 軍師と呼ばれた貴族風の男の登場に表情を綻ばすフェリペスに対し、先程まで穏やかだったアーサーの表情に若干の不快さが滲み出る。

 この軍師という男、聖帝即位後ふいにフェリペスが連れてきた男で、アーサーですらその素性はおろか、本名すら知らない。

 元は他国で軍師をしていて、国が魔帝に滅ぼされた後フェリペスに拾われたというのが表向きな素性だが、端から見れば軍師は充分怪しい存在だった。

 だが能力は本物で、事実彼の力がなければ国の再建は後5年は遅れていただろう。

 アーサーもそこは評価しているが、最近フェリペスが軍師の言いなりになっている様に見え、その事が不快だった。

「軍師殿、陛下は祝典の挨拶を終えられたばかりでお疲れだ。 仕事の話ならもう少し後で・・・」

「これはこれはアーサー様。 いや、(わたくし)としてもそうしたいのですが、陛下にどうしてもお伝えしなければならないことがありまして」

「よい、アーサー、話を聞こう」

 恭しく頭を下げると、軍師は話を始めた。

「話というのは他でもない。魔帝の子息、ノエルアルビアの事でございます」

「!見つけたのか!?」

「目撃情報によると、ノットと呼ばれる田舎町で、そこを縄張りとするチンピラ集団と一悶着あったそうです。 いやはや、手配書の効果がこれ程早く出るとは」

「本来なら、魔に堕ちたとはいえ叔父の息子を手配等したくはないのだが・・・」

「事態が事態故、仕方ありませぬ」

「それで、ノエルは保護したのか?」

「いえ、どうも邪魔が入ったらしく、ノエル様を捕らえることは出来ませんでした」

「邪魔だと?何者だそれは?」

「いや、それが・・・捕らえたチンピラの親玉の話なのですが、半分発狂していて事実かどうか・・・」

「構わぬ。言ってくれ」

 アーサーの問いにわざとらしく勿体ぶる様な素振りを見せながら、フェリペスに促され軍師は口を開いた。

「あの男はこう言っていました・・・ディアブロが出た・・・と」

 瞬間、フェリペスはガタンと大きなを立て玉座から立ち上がる。

「ディアブロ…ディアブロとは・・・あの・・・」

「恐らく、五魔(フィフス・デモンズ)の魔王かと・・・」

「生きていたのか・・・陛下?」

 アーサーが見ると、フェリペスら顔面蒼白になり脂汗をかき、小刻みに震えていた。

「ディアブロ・・・五魔(フィフス・デモンズ)の・・・魔王・・・」

「陛下、大丈夫で・・・」

「うわああああああああ!?」

 フェリペスは突然発狂したように叫びだし、頭を抱え悶え始めた。

「陛下!」

「ついに来た! ついに奴等が復活した! あの時現れなったからもしやと思っていたが・・・とうとう私に復讐しにやってきた~!!!」

「陛下! 落ち着いてください! 大丈夫・・・大丈夫ですから・・・」

 アーサーはフェリペスを抱き締めると落ち着かせるように声を掛け、静かに玉座に座らせた。

「貴方には我々聖五騎士団が付いています。 魔王ごとき、この聖王にお任せください」

「そ、そうだな・・・私にはお前がいる・・・それにあれも・・・すまなかった。もう大丈夫だ」

 フェリペスはなんとか平静さを取り戻すと軍師に向き直る。

「それで・・・ノエルとディアブロはどうなった? 他の五魔は?」

「いえ、恐らく全員は揃っていないでしょう。 もし揃っていれば、ここも既に攻め込まれているかと・・・」

「く、アルベルトが余計な事さえしなければ…」

「しかし、もしノエル様とディアブロが共に行動をしているならば、行動はいくらか予測が立ちます」

「本当か!?」

「ノエル様とディアブロが組んだのであれば、次にすることは十中八九五魔(フィフス・デモンズ)の復活でしょう。 となれば、彼らが探す場所に目星を付けることはできます」

 軍師はそう言うと魔力を込め、宙に地図を浮かび上がらせる。

「彼らがいたノットには既にその痕跡はありませんでした。 しかしここから予測するに、彼らが通る可能性が高い場所は2ヵ所。 北のニクラと、南の歓楽街アラビカスでしょう」

「なぜそう言いきれる?」

「簡単ですよアーサー様。 五魔(フィフス・デモンズ)はこの10年姿をくらましていた。 根なし草の様に目的なく旅をする者、人目に付かない場所に身を潜める者、国外に・・・は彼らのしたことを考えれば恐らくないでしょうが、逃げやすくするために敢えて国境付近にいる者もおりましょう。 となると、国境に割と近いニクラと、歓楽街で人の出入りが多く素性を問わないアラビカが、ノットから近い場所では現段階で一番可能性が高いと思われます」

「なるほど・・・」

 軍師の推察に素直に頷くアーサーに、フェリペスは号令を発する。

「ならば聖帝の名において命ずる! ニクラとアラビカス、そしてノットからそれらに繋がる道を全て捜索させろ!」

「ノエル様とディアブロはどうします?」

「・・・ノエルは我が血族だ。 可能な限り保護しろ。 ディアブロも大人しくするなら手は出すな・・・但し! もし抵抗するならディアブロ、及びそれに与する五魔(フィフス・デモンズ)は容赦なく処分せよ!」

「御意。 直ちに手配いたしまする」

 頭を下げながら、軍師は微かに口角を上げ、ニヤリと笑った。


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