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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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ギエンフォードの提案


 ボルゴーの護送とその兵隊にされていた者の保護を部下に任せたギエンフォードはノエル達の案内でラクシャダの中の屋敷に来ていた。

 情報の共有と今後についての話し合いをする為だ。

 ギエンフォードの砦で行おうという話もあったのだが、万が一聖帝側に漏れる可能性を考えここを会談場所にした。

 会談にはノエル達いつものメンバーに加えゴブラドも参加した。

 席に付いたギエンフォードに、ゴブラドはおもむろに近づき頭を下げる。

「お久しぶりでございます、ギエンフォード殿」

「ゴブラドか。 10年も蛇の番とは、お前も相変わらずの変わりもんだな」

「ノルウェ陛下の恩に酬いる為ですからな。 最も、今はそれと関係なくノエル陛下に支えていますが」

 陛下ということを敢えて強調するゴブラドの意図を察してか、ギエンフォードは苦笑する。

「こいつが陛下ね。 まあ、俺は民が守れりゃ誰が王だろうが構わねぇよ」

「そう言っていただけると思っていましたよ」

 ギエンフォードにノエルが新しい王になることを改めて了承させ、ゴブラドは軽く会釈し1歩下がった。

 その様子を観察していたエルモンドは、面白そうに笑みを浮かべながら口を開いた。。

「さてさて、そろそろ始めようか。 まずギエンフォード君はこちらの事情をどれだけ知っているのかな?」

「お前らがアッシズに話したことは大方知っている。 聖帝が昔の魔女とか言う化け物復活の為に生け贄捧げてるって話だろ」

「そうそう。 それで、もう事態としてはノエル君を王にして聖帝と対決しなきゃならない所にいるんでね、君に是非後ろ楯になってもらいたいんだよ」

「そいつは構わねぇよ。 で、一体俺に何をさせたいんだ?」

「今は拠点が決まった時の当面の物資の工面位かな」

「あ? おっさんの砦使うんじゃねぇのかよ?」

 リナの疑問にギエンフォードは呆れたように息を吐く。

「相変わらず頭は鈍いな」

「んだとこら!?」

「まあまあ落ち着いて」

 リーティアは宥めるとリナに分かりやすいように説明をした。

「ここは国境守護の要、つまり現アルビアにとっての重要な場所です。 それだけ聖帝側の目も厳しいですし、もしバレればこちらの準備が整う前に聖五騎士団による総攻撃が行われるでしょう」

「更に言えばここは国境の外からの攻撃には強いけど中からの攻撃には弱い。 砦のある戦区はともかく、一般人の多い民区に大きな被害が出るだろうね」

 エルモンドの補足もあり、リナは納得しその場に座り直す。

「ま、そういうことだから拠点は別に探さなきゃならないってことだね。 それでここの兵力は今どのくらいなんだい?」

「10年前よりは少ねぇが約5200の兵士がいる。 加えて武器、防具も戦区の鍛冶屋のお陰でそれなりに揃ってるよ」

「ふひひ、流石だね。 となると後はその子達の中で聖帝に繋がってる可能性は・・・」

「いねぇよ。 内の連中の殆どが今の聖帝派からのあぶれ者が多いんでな。 聖帝様のご機嫌伺いが得意な野郎はいねぇんだよ」

「あぶれ者? どういうことです?」

 ノエルの質問に、ギエンフォードはパイプをふかせながら答えた。

「言っちまえば、ここは10年前の大戦で死にぞこなった連中や、聖帝をあまりよく思ってねぇ連中が集められている。 死にぞこなった連中は温い中央より戦場に近い場所を求めて、聖帝嫌いは魔帝の救援には行かなかったが、ラズゴートの様に明確に裏切ってない当時の英雄の俺なら上手く纏められるだろうってことでアーサーが寄越した。 まあ、中にはうるせえごろつき連中もいるがな。 つうわけだから、幸か不幸かここには向こうと仲良くできる品のある奴はいねぇんだよ」

 ノエルが納得したのを確認すると、ギエンフォードは切り出した。

「それとお前らに協力するのは構わねぇが、ちっとこっちの厄介事も1つ引き受けてもらいてぇんだが」

「え? あたし達に何かさせる気?」

「あたりめぇだろ。 こちとらお前らが思ってる以上にヤバい橋渡るんだ。 そっちもそれなりに働いてもらわねぇとな」

「それはそうかもしれないけど」

「レオナ、ここはギエンフォード様の言うことを聞きましょう。 ちゃんと此方の誠意も見せないと、不公平になりますからね」

「・・・わかったわよ」

 リーティアに宥められレオナが了承する。

「それで、僕達は何をすればいいんですか?」

「まあそう構えんな。 ある意味お前らとも無関係じゃねぇ話だからな」

「どういうことです?」

「ガマラヤって村知ってっか?」

「ガマラヤですと!?」

 その名にいち早く反応したのはゴブラドだった。

「知っているんですかゴブラドさん?」

「知っているも何も、ノルウェ陛下から頂いた我ら亜人の最初の領土。 我らゴブリンを始めとしたこの国の全種類の亜人が集う場所です」

「要するに、ある意味ゴブラド達の故郷ってこったな」

 リナがそっと付け加えるとギエンフォードは話を続けた。

「そこはここから西に行った場所で割と近くてな。 内が警護やら流通やら提携してやってんだよ」

「警護? どういうことです?」

「亜人の技術ってのは俺達より進んでるもんが結構あんだよ。 ドワーフの鍛冶がいい例だ。 俺達に出来ねぇ金属の加工方、特殊な武具や鎧の製作、日用品ですらドワーフ製のもんは高級品として店に並べられる」

「それを盗む人達がいるってことですね」

「そういうこった。 今はこの国中亜人は暮らしているが、あそこは古参で腕のいいドワーフやエルフ、亜人が大勢いる。 まだあそこが出来たばっかの頃はそこに盗みに来る馬鹿が多くて内から警護用の兵士を数人、それと国境にあることを利用して、商品の輸出するための商人を派遣してんだよ。 まあ兵士な関しちゃ、連中の方が強いからあまり意味がねぇけどな」

「なるほど、あの場所ならノエル様の拠点にまさに相応しいですな。 それにあそこはノエル様と出会った時に放った伝令が向かった場所。 既にノエル様の存在は伝わっているでしょうし、何より彼らも私同様ノルウェ陛下に多大なる恩があります。 きっと我らに賛同してくれるでしょう!」

 ギエンフォードの意図を理解し、漸く同胞が一丸となりノエルの役に立てるとゴブラドは高揚した。

「まあそういうこった。 だがちと最近そこに問題が起こってな」

「なんですと?」

「さっき話したそこに送った兵士達からの連絡が最近途絶えてんだよ」

 ギエンフォードの言葉に、その場にいた全員、特にゴブラドの表情が一変した。

「どういうことですかギエンフォード殿!? 我が故郷に何かあったということですか!?」

「ゴブラドさん、落ち着いて!」

「・・・申し訳ありません、少々取り乱しました」

 ノエルに宥められたゴブラドは我に返り、頭を下げた。

「具体的に連絡が取れなくなったのはいつからだい?」

「半月程だが、恐らくその前からなにかしらあったんだと思っている」

「というと?」

「実際内が派遣した兵士達以外に商人もここ暫く連絡が取れねぇ。 いや、正確には連絡があったらしいが、俺がその商人どもに会ってねぇ」

「なるほど、ボルゴー君か」

 エルモンドの指摘にギエンフォードは頷く。

「実際あの野郎はこの町の経済をほぼ取り仕切っていたと言ってもいい。 ガマラヤに向かった商人もあいつが管理してた連中が多い」

「つまり、実際はガマラヤで何か起こっていたけど、ボルゴー君が裏で手を回してそれを隠蔽していたということか。 でもそれだとさっき言った亜人製の商品が扱えなくなって彼自身の利益も減るね。 彼が兵隊にした奴隷や調教用の薬品の値段を考えると、普通にあまり彼にメリットがあるようには思えないね」

「普通に考えればな」

「ふひひ、そういうこと」

「なんだよ? 何かあんのかよ?」

「簡単だよリナ。 つまりボルゴー君にとってそれは亜人製商品の利益より大きな利益が得られるってこと。 そしてそうなる様に仕向けた誰かさんがいるっおことだよ」

「それを僕達が調べてくればいいんですね」

「ああ。 本当なら俺が直々に行きてぇ所だがボルゴーの馬鹿の後処理で暫く動けねぇ。 あの野郎まだ調べ途中だってのにボロボロ埃が出てきやがる」

 アッシズからの途中報告を思いだし、ギエンフォードは心底うんざりした顔をした。

「わかりました。 ガマラヤは僕達が引き受けます」

「助かる。 ああ、後もう1つ・・・」

「なんだよ親父? まだなんかあんのかよ・・・のわ!?」

 ギエンフォードはライルの言葉を無視して自分の方へ引き寄せる。

「この馬鹿をここに置いてけ」

「は!?」


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