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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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再会


「ははは! いやゴメンね~。 この子見たら溜め込んでたもんぶちまけちゃってね。 あたしはミーネ。 うちの馬鹿息子が世話になったね」

 豪快に笑うミーネにノエル達は苦笑する。

 あの後ミーネを落ち着かせたノエル達は自己紹介をしそのまま家に上げてもらい、リビングでお茶を出されていた。

 ライルは殴られた箇所を冷やしながら消耗した表情でミーネの隣に座っている。

 ノエルは兜を脱ぎミーネと向かい合う形で座り、リナが隣に、レオナやエルモンド達はそれぞれソファー等手頃な椅子に座っている。

「しかし驚いたね~。 内の旦那から聞いてたけど、五魔って本当に女の子だったんだね。 しかもこんなに可愛い子が3人もいるなんて」

「そんな、これでももう人妻ですよ奥様」

「3人じゃなくて二人だけどな」

「聞こえてますよリナ」

 誉められ機嫌のいいレオナに対し、リナはリーティアに視線を向けボソッとつっこんだ。

「で、この子がノルウェ陛下の子かい。 まあ立派になって」

「初めまして。 ライルさんには色々とお世話になってます」

「そんなに畏まらなくても大丈夫だよ。 あたしなんてただのおばさんなんだから。 ハハハハハ!」

 明るい笑顔で笑うミーネに、ノエルは暖かみのある人だなと思った。

 実際先程ライルを散々殴ったが、それは本当にライルを心配していたからであり、冷静になったらすぐに水で布を湿らしライルの顔を冷やしていた。

 自分の母親と過ごしたことのないノエルは、母とはこういうものなんだなと感じた。

「ライルさんにはいつも組手の相手をしてもらってますし、本当に助けられてます」

「まあ、俺の舎弟としてはそこそこ役立ってるよ」

 リナの誉め言葉にライルの表情に生気が戻り明るくなる。

「どうだよお袋? 俺だってちゃんとやってんだぜ」

「あんまり調子乗んないの。 あんたはすぐ調子に乗るんだから」

 ライルを嗜めながらも、息子を誉められミーネは少し嬉しそうだった。

「それで、何か用があってきたんだろ?」

 ミーネに促され、ライルはこれまでの事を話した。

 ミーネは息子の話に真剣に耳を傾ける。

「なるほどね。 それであの人にね。 しかしま~聖帝の悪巧み暴くためにノルウェ陛下の子と五魔と一緒にか。 随分大事なこったねぇ」

「本当は俺が親父の所に行けりゃいいんだけどよ、俺一応脱走兵ってことになってるからいけねぇんだよ」

「そういやそんなこともあったねぇ。 砦の壁ぶち壊してそのままトンズラだもん。 あたしはそれ聞いた時流石に肝が冷えたよ」

「すまねぇお袋・・・俺は、」

「もういいさ。 無事帰ってきてくれたんだしね。 それにあの人もまたいらないこと言ったんでしょ? 本当あの人は不器用だからね」

 ミーネに対し、ライルは改めて頭を下げる。

「頼むお袋! 親父に連絡つけてくれねぇか!? そうすりゃ後は俺が話つけるからさ!」

「僕からもお願いします。 どうか、力を貸してください」

 頭を下げるライルとノエルに、ミーネは優しい笑みを浮かべた。

「全く帰ってきた早々しょうがない子だね。 厄介事持ってきた上、陛下の息子に頭を下げさせんだから」

「うっ・・・」

「安心しな。 せっかく帰ってきた息子の頼みだ。 やれることはしてやるよ」

「!お袋!」

 ミーネの言葉にライルは表情を明るくし、ノエルは感謝を伝えた。

「ありがとうございます、ミーネさん」

「いいのよそれくらい。 だけどね、ちょっと今困ったことになっててね」

「何かあったんですか?」

 リーティアの質問にミーネはため息を吐きながら頷いた。

「ここんとこどうもラバトゥがキナ臭くてね、あの人全然家に帰ってこないんだよ」

「キナ臭い? ラバトゥがか?」

「別にこっちに攻めてくるとかじゃないらしいんだけど、どうも軍備を増やしてるらしくてね。 戦区の砦は今警戒体制で簡単には入れないんだよ。 おまけにもう1つ厄介なのがいるからね」

「厄介?」

 リナは眉を潜めると、ドアをノックする音が聞こえた。

「あ、丁度いいのが帰ってきたね」

「丁度いいの? 他に誰か住んでんのか?」

「まあね。 あんたがいなくなった後世話してる若いのがいてね。 お使いやらなんやら色々してもらってるんだよ」

 ミーネはそう言うとドアに向かい「開いてるよ~」とドアの向こうの人物に声をかけた。

 ドアが開くと、やせ形の目付きのチンピラ風の男が入ってきた。

「ふぃ~、只今戻りやした。 遅くなってすいやせ・・・!?」

 その男は部屋の中をライルを見て目を見開き、ライルもその男を見た瞬間「あ~!!」と声を上げた。

「アッシズ!? アッシズじゃねえか!」

「アニキ!? 帰ってたんですかい!?」

 アッシズと呼ばれた男は驚きながらもライルに駆け寄り、ライルも嬉しそうにそれを迎えた。

「なんだよおめぇ! 相変わらず柄わりぃな!」

「アニキに言われたかねぇですよ! でもなんでまた・・・あ~!!!」

 ライルに会い喜んでいたアッシズだったが、リナの顔を見た瞬間叫び声を上げた。

「あ、あの時の化け物女ぐひゃ!?」

「こら! てめぇ姉さんに失礼なこと言うんじゃねぇ!」

 ライルの拳骨をくらい踞るアッシズを見て、リナは思い出した様に「ああ、」と言った。

「そういやこいつ、昔ぶちのめしたお前の取り巻きか」

「俺の舎弟のアッシズッス。 ほら、挨拶しろ」

「あ、アッシズって言いやす。 皆さんお見知りおきを」

 状況が掴めないながらもまた拳骨を貰いたくないアッシズはとりあえずリナ達に頭を下げた。

「俺がここ飛び出した後に隣町でチンピラ集めて自警団もどきやってたんスけど、暫くしてから姉さんにボコボコなされて・・・」

「懐かしいな。 つかあれ自警団だったのか。 どう見てもチンピラの集まりにしか・・・」

「ガラのわりぃのばっか集まってたんだからしかたねぇでしょ!? つかアッシズ、なんでてめぇがここにいんだよ?」

「へ、へぇそれが、アニキがその化けも・・・姉さんに着いていっちまった後、俺達一気に弱体化しちまいましてね」

「んだと!? ベイパーとかロッシとかまだいたじゃねぇか!?」

「そうなんスけど、あっしら基本頭使うの苦手で難しいこと大体アニキに頼りっきりだったじゃねぇですかい」

「ライルが?」

「頭脳担当?」

「本当ですか?」

「だぁ~! 俺だって頭くらい使えんだよ!」

 リナ、レオナ、果てはノエルにまで疑われ絶叫するライルに苦笑しつつ、アッシズは話を続けた。

「そのアニキが抜けて、しかも女に全員のされたって噂まで立っちまったもんだから、今まて大人しかった連中が一気に仕掛けてきちまって、もう本当大変だったんスよ」

「そうか。 苦労かけちまったみてぇだな」

「いえ、そいつはいいんスよ。 で、困ってた所をその、アニキの親父さんに拾われて」

「親父が!?」

 意外な所で出てきた父に驚くライルに、アッシズは続けた。

「へぇ。 敵対してた連中ボコボコにして、そいつら含めてほぼ強制的に戦区に連行。 殆どの奴等そこで兵士してまさ」

「なんで親父が・・・んなことを」

「さあ? 本人はたまたま通りかかったらうるさかったんでって言ってやした。 体力余ってんならこっちで使えって説教されやしてね。 もっともあっしは腕っぷしないんでここで手伝いさせてもらってやす」

「結構気が利いて助かってるよ。 お使いとか頼むと本当速くてね」

 ミーネに頭を撫でられて、アッシズは照れ臭そうにした。

「まあ、なんだかんだであの人もお前のことが気になってたんでしょ? あの人もラズゴートさんの半分くらい素直になってくれればいいんだけどね」

「頑固さは互角だぞあのおっさん達」

「ハハハ、確かにそこは同じだね!」

 リナのツッコミに笑うミーネは、アッシズに向き直る。

「ねぇアッシズ。 あの人に伝言頼みたいんだけど、お願い出来る?」

「旦那にですかい? でも今ボルゴーの野郎が煩くて・・・」

「ボルゴー? 誰ですか?」

「さっき言った厄介なことだよ」

 ノエルの質問に、ミーネはうんざりしたような顔をする。

 ボルゴーはこの辺りを統括する貴族で、主に経済や諸外国との流通等を取り仕切っている。

 実際彼がこの辺りを仕切るようになってから町は活気が増し、全体的に豊かになった。

 なので町の人達からの評判は悪くはないのだが、彼は今ある理由から戦区と対立していた。

「何があったんですか?」

「軍縮だよ。 もう大戦から10年経つんだから、そろそろ軍備を縮小して流通や経済の更なる発展にその金を使うべきだとさ。 うちの人がどんな思いしてここ守ってきたかも知らないで偉そうに」

 人当たりのいいミーネも、ボルゴーに関しては別らしくかなり怒っている。

 実際、ギエンフォードはこの国境を守るため右目を失う大怪我をしており、彼女からすればボルゴーの発言はそんな夫を蔑ろにしているのと同じだった。

「でも実際ボルゴーのお陰で豊かになった連中もいるだろ。 だからボルゴーに賛同する連中も多くてね、今じゃ軍縮派と維持派が対立してるんだよ」

「オマケにその軍縮派の連中、俺みたいに戦区に出入りする奴には滅茶苦茶厳しいんでさ。 ましてや俺なんかこんなの見た目ッスから絡まれるとかなり面倒で」

「ふひひ、なるほどね。 まあ、その彼の言ってることも間違ってはいないけどね。 それで争いを生んでるんじゃ意味ないね」

「そのボルゴーって奴のことは知らねぇのか?」

「知らないね。 恐らく大戦の時に貴族の地位を貰った成り上がりだろうね。 まあ統治出来てるんだからそれなりにやり手なんだとは思うけど」

 リナの質問に答えるエルモンドは、ボルゴーの人物像を想像しながら興味深そうにふひひと笑う。

 そんな中、ライルはアッシズに向かい合い頭を下げた。

 突然のライルの行動にアッシズは驚きあたふたした。

「あ、アニキ!?」

「アッシズ。 面倒かけるのを承知で頼む! 親父に伝言届けてくれねえか!? どうしても俺は親父に会わなきゃなんねぇんだよ!」

 真剣に頼むかつての兄貴分であるライルに、アッシズは覚悟を決めた様に頷いた。

「わかりやしたよ。 アニキは昔っから言い出したら聞きやせんからね」

「すまねぇ」

「いいんスよ。 あっしらはそんなアニキに惚れて一緒にいたんスから」

 照れ臭そうに笑うアッシズに、ライルは喜び抱きついた。

「お前! そこまで俺のことを~!!」

「ちょっ、アニキ! 苦し! 苦しい!!」

 抱き絞められて顔を真っ赤にするアッシズとそれに気付かないライルに苦笑しながら、ノエル達はその光景を眺めていた。

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