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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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五魔の由来


 ギゼル達との戦闘が終わり、ゴブラド達も合流したノエル達は負傷者の手当てをしていた。

「つかよ、なんか奇妙な光景だな」

 リナの視線の先には、手当てされるクロードやジャバ達の近くで先程まで戦っていた魔甲機兵団の隊長達を修理するギゼルの姿があった。

 あの後すぐに引き上げようとしたギゼル達だったが、オメガ達の損傷具合が思ったより酷かった為ギゼルが応急処置をさせてくれと懇願。

 ノエルが了承し今に至るというわけだ。

 現在アルファ達に手助けされながらギゼルはオメガの腹部を直している。

「まあ、こっちも人の事言えませんけどね」

 ノエルの視線の先には、ボコボコに殴られ地面に倒れているエルモンドの姿があった。

 イトスを落ち着かせた後、エルモンドはリナとレオナにボコボコに殴られたのだ。

 理由は仮死状態で自分達を騙したこと。

「でもこれは流石にやり過ぎじゃ・・・」

「別に平気よ。 いつものことだし。 ねぇリナ」

「そういうこった」

 悪びれる様子のないリナとレオナに苦笑しながらノエルがイトスの治療を受けるエルモンドを見ると「ふひひ・・・二人の成長を経験できて・・・幸せだな・・・」と薄ら笑いを浮かべながら満足そうにしている。

 ノエルはその姿にリナ達が悪びれない理由と、昨夜のイトスの「色々予想外で驚くぞ」という言葉の意味がわかった気がした。

 実際リナ達も手加減しているのはわかったし、普段からよくあることなのだろう。

「つかよ、なんでわざわざ死んだふりなんかしたんだよ? お前ならそんなまどろっこしいことしなくてもどうにでもなっただろ?」

 リナに質問され、エルモンドは体を起こした。

「理由は2つ。 1つは単純に聖帝軍の追っ手から姿を眩ますため。 勿論色々手段はあったけど、死んだ事にするのが一番手っ取り早かったしね」

「死ぬのが手っ取り早いっていうのもどうかと思うけどね」

 レオナに呆れたように見られ、エルモンドはふひひと笑った。

「で、もう1つがイトスの成長の為だよ」

「俺の?」

 自身の名が出て目を丸くするイトスにエルモンドは頷いた。

「君は僕の優秀な弟子だ。 そこは僕が自信を持って言える。 多少喧嘩っ早く口が悪くても補えるくらいにね」

 誉められているのか欠点を指摘されているのかわからないエルモンドの言葉を、イトスは真面目に聞いていた。

「僕の事も慕ってくれて、今もそうして素直に僕の話を聞いてくれている。 素晴らしいことだけど、君の場合少し僕に依存している所があった」

「依存・・・ですか?」

「そう。 僕の言うことすること全てが正しい。 僕の言う通りにすれば間違いない。 意識していたかどうかまではわからないけど、多分無意識にそういう思考になっていたはずだよ」

 思い当たる節があるのか、イトスは複雑な表情した。

 言われてみればノエルにも思い当たることはある。

 イトスと最初に会った時、彼は五魔時代のエルモンドの格好をしていた。

 今思えば、あれはエルモンドへの憧れもあったのだろうが、依存の現れだったのかもしれない。

「でもそれじゃもったいない。 君は君なんだ。 僕じゃないし、僕のコピーでもない。 君にしか感じられないこと、君にしか思い付かないことが沢山あるんだ。 それを全て僕で埋め尽くすのは非常につまらない。 だから僕から離れて、自分自身で成長していってほしかったんだよ」

 エルモンドの言葉に、イトスは深々と頭を下げた。

「申し訳ありません師匠。 師匠の気持ちに気付けず俺は・・・」

「ふひひ、な~に、謝ることはないさ。 僕がいない間君は自分で考え判断してこの3年間を生き抜いてきたんだ。 それだけでも素晴らしい進歩だよ」

「師匠・・・」

 エルモンドが優しく笑いかけると、イトスは顔をあげ答えるように笑みを浮かべる。

「なるほど、魔人という名の割には弟子に随分甘いようだ」

 声の方を向くと、応急処置を終えたギゼルが隊長達を連れ近付いてきた。

「おや、もう終わったのかい?」

「あくまで応急処置だ。 最低限動ける程度にしか直せていない。 戻ったら本格的にメンテナンスしなければ」

「申し訳ありませんギゼル様」

「気にするな。 それが私の役目だ」

 頭を下げるオメガにそう告げると、ギゼルは視線をイトスに向けた。

「確かにある程度の評価は出来るが、人を分析する能力が欠けている。 これからどうするかは知らんが、その様な欠点を持つようでは大した働きは出来んぞ」

 ギゼルの指摘が当たっている事を理解しているイトスは苦い顔をするが、エルモンドは嬉しそうにふひひと笑う。

「いやありがとう。 イトスはあまり人と関わる機会が少なかったからね、僕も気にしていたんだよ。 敵の改善点をんざわざ教えてくれるなんて、君は優しい人間だね」

 エルモンドの言葉にイトスがハッと顔を向けると、ギゼルはバツの悪そうな顔をした。

「ふん。 私は借りを作るのが嫌いなだけだ」

「へへ、思ったより潔いじゃねぇか。 俺はてっきり直したそいつら使って不意討ちでもすんのかと思ったぜ」

「舐めるなディアブロ! ギゼル様の名誉を傷付けるような真似をするわけあるか!」

 リナのからかいに簡単に引っ掛かるシグマを制止ながら、ギゼルはノエルに頭を下げる。

「改めて、そちらの好意に感謝する。 我々はこれより約定通り撤退させてもらう」

「ええ。 こちらも追撃するような真似はしないので安心してください」

「それを聞いて安心した。 だがその前に、先程話した通り私は借りを作るのが嫌いだ。 だからそちらの欲しい情報があれば教えよう」

 ギゼルの申し出に、リナ達は驚きの表情を浮かべる。

「ちょっとちょっと! それ本気なの!? 仮にもあなた向こうの幹部なんでしょ!?」

「問題ない。 どのみちノエル殿が逃がすと言わなければ良くても捕虜となっていた身だ。 答えられる限りで良ければ答えるつもりだ」

 驚くレオナに答えるギゼルを見て、ノエルは頭の中で何が必要か吟味する。

「・・・聖帝の目的はなんですか?」

 ノエルの質問に、ギゼルはピクリと反応した。

「それは生け贄行為のことか?」

「知っているんですか!?」

 身を乗り出すノエルに、ギゼルは首を横に振った。

「私がその事を知ったのはそちらと交戦したゼータとシータからの報告があったからだ。 詳細については知らん」

「そうですか・・・」

 考えてみれば生け贄についてはラズゴートですら知らされていない程の極秘にされていた。

 ギゼルに知らされていないのも当然のことだ。

「だが生け贄行為に関しては、こちらも秘密裏に確認している」

「本当ですか!?」

「ああ。 地下の祭壇に反乱分子を数人生け贄として捧げている。 ここ最近の生け贄の人数は多くても1度に10人程で、皆祭壇から現れた触手に貫かれミイラの様に干からび絶命している」

 かつてアルベルトが命懸けで伝えた通りの内容に、ギゼルの言葉が嘘ではないとノエル達は判断した。

「そうか。 とうとうフェルペスはあの祭壇に手を出してしまったか」

 その言葉に皆の視線がエルモンドに注がれる。

 エルモンドは先程までのにこやかな表情ではなく、神妙な面持ちをしていた。

「聖帝が何をしているかわかるんですか!?」

 ノエルの質問に、エルモンドは静かに頷いた。

「君が五魔を集める理由で想定した中では最悪の部類に入る行動だよ。 正直それだけは避けたかった」

「なんなんだよ? その祭壇に何があるんだよ?」

「・・・そうだね。 話した方が良さそうだ」

 リナの言葉にエルモンドは少し考えるとギゼルの方を見た。

「君達も聞いていくといい。 いや、仮にもこの国の中枢にいるなら、この事は知るべきだよ」

 ギゼルは無言のままその場に座ると、オメガ達もそれに従った。

「そうだね、どこから話すべきか・・・あ、そうだノエル君。 魔女と5人の仲間達という話は知っているかい?」

 突然振られ戸惑いながら、ノエルは頷いた。

「え、ええ、知ってます。 小さい時祖父母が読んでくれた童話です」

「その通り。 知りたがりな魔女が、いたずら好きな小悪魔、素直じゃない天使、物知りなとかげ、大きく優しい獅子、そして口の悪い喋るナイフの5人の仲間と共に冒険をする昔話だよ」

「私も知っているわ。 でもその童話と祭壇になんの関係がありますの?」

 イプシロンの問いに、エルモンドは話を続けた。

「実はこれ、ただの童話じゃなくてね、実在する話なんだよ」

「どういうことです?」

「この5人の仲間、何か気付くことはないかい?」

 ノエル達が首を傾げる中、クロードは何かを察した。

「まさか、私達五魔か?」

「なんだと!? どういうこった!?」

 リナ達が驚く中、エルモンドは静かに頷いた。

「クロードの言う通り、この5人の仲間は五魔を表しているんだよ」

「だからどういうことなんだよ!? ちゃんとわかるように話せよ!」

「わかってるよリナ。 実はこのお話はある史実を間接的に残すために創られたんだよ。 つまり、このお話の中に起こった出来事や人物は実在していたんだよ」

「つまり、公には出せないが当時の者がどうにかしてその事実を残そうとその物語を作ったと?」

「その通りだよ。 流石ギゼル君は話が早い」

「ちょっと待てよ。 てことはよ、そ話に出てくる奴等が本当にいたってことは

、大昔に五魔がいたってことか?」

「ふひひ、リナも理解力が上がってるね。 まさにその通りだよ」

 五魔に関する衝撃の発言に皆が驚く中、エルモンドは話を続けた。

「そもそも五魔のディアブロとかの名は僕がこの話の元、つまり当時の五魔の名前をそのまま君達に付けたんだよ。 大きく優しい獅子は、当時の巨人(ジャイアント)族1の戦士と呼ばれたジャバウォック。 口の悪いナイフは一晩で千人もの人間を殺した殺人鬼デスサイズ。 物知りなとかげは当時竜の神とまで讃えられた伝説の竜バハムート。 素直じゃない天使は一人で天界を滅ぼしたとされる堕天使ルシフェル。 そしていたずら好きな小悪魔は、魔界に君臨する魔族の王ディアブロ。 それが君達の名の元となった約1500 年前の五魔達だ」

「1500年!? そんな昔に五魔がいたんですか!?」

「あたし殺人鬼の名前なの!? 改名しようかな」

「おれ、そんな前にいないぞ!」

「魔界や天界って、流石に話でかすぎねえかおい?」

 ノエルやリナ達がそれぞれ驚きの言葉を口にする中、クロードとギゼルは事態を整理しようとしていた。

「つまりエルモンド。 あなたは私達にかつて存在した五魔の名を付け、他国への抑止力にしたと?」

「その通りだよ。 まあこの物語の真意に気付いた人が当時何人いたかは知らないけど、それでも十分インパクトのある名前だったからね」

「貴様はどうやってその事に気付いたのだ? この話が1500年前の史実で、五魔だけでなく魔界や天界等という荒唐無稽な存在が実在するとどうやって確信した?」

「話事態は単純に正史との類似点に気付いたからだよ。 五魔や魔界とかは各地に残る伝説や伝承から共通点を探し分析し予想し想定した。 結果魔界や天界は存在し、五魔の素性も完璧ではないけど見付けることは出来た。 というより、そう考えざるおえない」

 エルモンドの説明を聞きながら、ノエルはあることに気付いた。

「待ってください。 物語の五魔が実在するなら、この魔女もいるってことですか?」

 ノエルの指摘にエルモンドは頷く。

「そう。 それこそノエル君がギゼル君に聞いた事の確信でもある」

「それってつまり・・・」

「魔女の名前はラミーア。 かつて五魔を束ねた魔女にして、聖帝が生け贄を捧げている例の祭壇に封じられた者だ」


漸く生け贄の理由判明しました。

これからまた色々動き出すのでおたのしみに(^_^ゞ

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