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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
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劣勢


 レオナ達を助けようとするリナ達の前に、オメガが立ちふさがる。

「てめぇ一人で俺達を相手にするだと? なめんじゃねぇぞ!」

 リナはオメガを突破しようと殴りかかる。

だがオメガはその腕を造作もなく掴んだ。

「予想範囲より約10%上のスピードとパワーか。 魔力もないのに大したものだ」

「ざけんな!!」

 リナは腕を捕まれながらも逆にそれを軸にし飛び上がり蹴りを叩き込む。

 オメガはそれを右手でガードする。

「おらぁ!」

 その隙に回り込んだライルと、いつの間にか鎧を外したノエルがそれぞれ正拳と上空からの踵落としでオメガを狙う。

 オメガはリナを投げ飛ばしライルに激突させ、ノエルの踵落としを体をずらして回避する。

「な!?」

「貴方も予想よりも強いようだ。 良き師に恵まれたなノエル殿」

 オメガはノエルの横っ腹に掌底を叩き込むと、ノエルは息をつまらせながら吹き飛んだ。

「ノエル! こんちくしょうが!!」

 ライルは受け止めたリナを下ろすと再びオメガに殴りかかる。

「お前は邪魔だな」

 オメガは迫るライルの懐に素早く移動すると膝蹴りを腹部に叩き込む。

「っか!?」

 防御する間もなく重い蹴りを食らったライルに、オメガは間髪いれずくの字に曲がったライルの首の付け根に肘鉄を食らわせた。

 更に止めとばかりにライルの顔面に拳を叩き込み吹き飛ばす。

 ライルはピクピクと痙攣しながら地面に倒れた。

「てめぇ・・・」

 ライルを倒され怒るリナだったが、先程の様な突進はしなかった。

 いくら魔力を封じられようと百戦錬磨のリナとヴォルフを倒したノエルを抑え、魔力の影響のないライルを簡単に倒してしまった。

 それはオメガの強さが本物だという何よりの証拠。

 リナはそれを理解しているからこそ、無謀な突出を止めたのだ。

「・・・先程あなたは俺がなめていると言ったな。 それは逆だ。 俺達はあなた達に最大の警戒をしている。 だからこそ俺がこうして来たのだからな」

「大した自信じゃねぇか。 あの野郎に改造された鉄くず野郎のくせによ」 

 リナの挑発に、オメガは一切反応せず淡々としていた。

「鉄くずか・・・ある意味間違いじゃない。 少なくとも俺に関してはな」

「?んだと?」

 オメガは徐に自身の兜を取った。

 その瞬間、リナとノエルは青ざめた。

 兜の中には顔はなく、逆に透明な様に特殊な液体と一緒に入れられた脳みそがあった。

 オメガはそれを気にすることなく兜を被り直した。

「ご覧の通り、俺の体は脳みそ以外全てギゼル様に造っていただいた機械だ。この声もギゼル様が昔の俺の声に似せた合成音声でしかない」

「そんな・・・どうして・・・」

 驚愕するノエルにオメガは淡々と話した。

「俺達魔甲機兵団が先の大戦で大怪我を負ったのは知っているだろう? 俺の場合、脳みそ以外もはや使い物にならなくなったからこうして全て機械に変えただけだ」

「でも・・・これは・・・」

「そう。 もはや人と呼べる姿ではない。 だがそんなことは些細なことだ。 俺はこの体を与えてくれたギゼル様の為に戦うのみだ」

 あくまで冷静に、だが鋼の意思と呼ぶに相応しい強さを持つオメガの言葉に、リナは最大限の警戒をした。






「ふふふ、オメガめ。 余計なことを」

『でも作戦事態は順調ねお父様』

 アンヌに言われ、ギゼルは満足そうに笑みを浮かべる。

 高いパワーと防御力を誇るシグマをレオナに、遠距離から付かず離れずの戦いを得意とするイプシロンをジャバに当て、デルタの爆撃で援護をする。

 そして魔力を失ったリナ達を魔甲機兵団最強のオメガで倒す。

 アンヌが人格プログラムの最高傑作なら、オメガは肉体改造での最高傑作といえる。

 生身の脳を使うため睡眠は避けられないが、痛みもなく食事も必要としない究極の肉体、それがオメガだ。

 加えて高い戦闘力と自身の格闘センスもあり、オメガはギゼルが最も信頼する戦士となった。

 だからギゼルはリナ達3人を倒す役をオメガに任せたのだ。

 オメガの期待通りの活躍に、ギゼルは己の考えの正しさを確信した。

「ここまでは計画通り。 後は私が・・・」

 ギゼルが何かを察し急いで飛び退く。

 振り返ると自分に蹴りを放っていたクロードの姿があった。

「貴様を抑えれば、我が布陣は完成する」

「随分余裕だね? 私一人なら簡単に倒せるとでも?」

 冷静に振る舞うクロードに、ギゼルはアンヌを離れさせ小さく笑う。

「ふふふ、無理をするなバハムート。 本当は怒りのまま私を殴り飛ばしたいのだろう? 貴様の大事な人形を動かなくした私を」

 ギゼルの言葉に、クロードは怒りを抑える様に睨み付ける。

「だがその自制心は見事だ。 私など貴様にアンヌを傷つけられた時、激昂し冷静さを保つのに苦労した」

「その仕返しというわけか。 なるほど、それなら大成功だ。 私をこれだけ怒らせたのだからね。 だけどそれは失敗でもある」

「貴様の体術なら私も知っている。 ラズゴート殿との戦いは私も知っているからな。 確かに私の身体能力では貴様には勝てない。 ただし・・・貴様の弱点をつかなければという話だ」

 クロードはギゼルの右腕が帯電していることに気付き、動かなくなったリーティアの方へ向く。

「魔鋼を初めとする金属製の鎧の最大の弱点は 、知っているな?」

 ギゼルはそのまま腕から雷撃をリーティアに向けて放った。

 クロードは駆け出し、リーティアを守る為に前に立ちはだかる。

「ぐあああああああ!?」

 雷撃を受け全身に電気が駆け巡る激痛に、クロードは思わず膝をつく。

「やはり庇ったか。 予想通りだ」

「ず、随分な真似をしてくれるじゃないか」

「生憎私は研究者でな。 戦士の様に正々堂々よりも合理的に、確実に目的を遂行することに重きを置く。 とは言っても、私は貴様の行為を愚か者と罵るつもりはない。 少なくともアンヌが同じように狙われれば、私は迷わずアンヌの盾になる」

「ふ、なるほど。 奇しくも似た者同士と云うわけか」

「そう言うことだ。 だからアンヌを傷付けた貴様に対し、私がこれからすることも予想が付くだろう?」

 ギゼルは再び雷撃を生み出し、クロードへと容赦なく浴びせた。

「くああああああ!?」

「アンヌを傷付けた罪! その身を持って償うがいい!!」

 怒りを滲ませた笑みを浮かべ、クロードいたぶる様に雷撃を浴びせるギゼル。

「クロード! 助ける!!」

 クロードの窮地に、ジャバはイプシロンの集中放火を浴びながら空気を一気に吸い込む。

「デルタ!」

「ファイヤー!!」

 それを察知したギゼルの指示にデルタは即座に反応する。

 ミサイルをジャバの顔面めがけ発射し、全て命中させる。

「うぎゃう!?」

「貴様の声の威力もゼータとシータの戦いで研究済みだ」

「ジャバ!」

「おっと貴様の相手はこのシグマだ!」

 ジャバを心配したレオナに、シグマのティラノハンドが迫る。

「いつまでも調子のってんじゃないわよ!」

 レオナはそれを避けると素早く懐に潜り込む。

 そして両手の剣でシグマの胴体を切り刻む。

「甘いわ! ダイナソーテール!」

 シグマは左手を恐竜の尻尾の様に変化させると、レオナに巻き付け一気に引き剥がす。

「きゃ!?」

「このシグマ! パワーと頑丈さなら魔甲機兵団1よ! 貴様の攻撃に耐える等、造作もないわ!」

 シグマはそのままレオナを地面に叩きつける。

「レオナ!? ちぃ!」

 リナは舌打ちをしながら目の前のオメガに構え直す。

「焦っているな。 だが此方も任務だ。 容赦はしない」

 オメガが右手で拳を作ると、指の付け根から4本の爪を飛び出した。

 そしてその爪はそれぞれドリルの様に回転すると、右腕全体にバチバチと小さな稲光が発生する。

(これは・・・ヤバイ!)

「ライトニングフィスト!!」

 危険を察知したリナはすぐに回避行動を取った。

 その横を、オメガの拳から繰り出された雷撃の渦が通り過ぎる。

 リナとノエルは攻撃の痕を見て驚愕する。

 それは規模こそ小さかったが、かつてラズゴートがやったそれと同じ様に森が完全に裂けていた。

(おっさん並の力かよ・・・冗談じゃねぇ)

 無論怪力のみでやったラズゴートの技とは別物だが、今のオメガの攻撃は十分ラズゴートに匹敵するレベルだった。

 だが弱点がないわけではない。

 恐らく今の技は爪を回転させ腕全体を帯電させなくてはならない。

 つまり技を放つのにはタメが必要だということ。

 魔力が使えないリナにとって、それが数少ない勝機となる。

「やはり遠距離用のライトニングフィストではかわされるか。 ならば」

 再び回転を始める爪を見て、リナは一気に攻勢に出ようとオメガに向かった。

「もうこの技の隙に気が付いたか。 流石魔王といったところか。 ならばこれならどうだ?」

 オメガはリナを迎撃せず、その視線をダメージからやっと起き上がったノエルに向ける。

「(やべぇ!!)ノエル!!」

 リナの叫びより速く、オメガはノエルに突進する。

 今のノエルの体では確実にやられる。

 そう思ったリナは、オメガの攻撃を阻止しようと全速力で追いかける。

「かかったな」

 瞬間、オメガはリナの方に向き直る。

「てめっ!?」

 リナはハメられたと気付いたが既に遅かった。

 普段なら斥力で緊急回避できるが、今はそれも出来ない。

 リナの焦りを煽る様に、オメガの右腕が輝きを増す。

「ダメ押しだ」

 オメガは爪だけでなく、手首と肘をそれぞれ逆回転で高速回転させた。

「ライトニングドライバー!!!」

 リナがかわせず、オメガの拳が炸裂した。

 血飛沫が飛び、純白のオメガの体を赤く染める。

 だがその光景を見たノエルの視線は、リナではなく、その間に立ちふさがった人物に注がれた。

「ラ・・・ライル!!!」

 絶叫したリナの目の前には、リナを庇う為腹部を貫かれたライルの姿があった。

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