決戦!魔甲機兵団!
あけましておめでとうございますm(__)m
今年も頑張っていきますのでよろしくお願いいたします。
翌日、ノエル達は小屋の前でイトスと話していた。
「わりぃな。 随分騒いじまって」
「構わねぇよ。 普段人も来ねぇから楽しかった」
苦笑しながら謝るリナに、イトスはニカッと笑いながら答えた。
ノエル達が料理をリナ達に運んだ後、森から戻ったジャバ達やリーテイアから出てきたクロードも加わり、ちょっとした追悼会みたいになった。
イトスはリナ達から五魔時代の、逆にリナ達はイトスから隠遁時代のエルモンドの話を聞き、互いに懐かしみながら話していた。
ノエルとライルはエルモンドに会ったことがない為ほぼ聞き役だったが、それでも十分楽しめた。
何より、話すにつれ元気を取り戻してきたリナ達の様子に、ホッと胸を撫で下ろした。
「で、これからどうすんだ? 師匠ももういないし、五魔はもう・・・」
「それに関してはこれから話し合うよ。 なんにしろ、僕は止まるつもりはないから」
五魔復活が断たれたにも関わらず折れないノエルに、イトスはニヤリと笑う。
「ま、これも何かの縁だ。 師匠には及ばねぇけど、なんかあったら力になってやるよ」
「ありがとう、イトス」
二人は握手を交わし、笑い合う。
エルモンドがいないのは確かに厳しい。
だがいつまでも気にして立ち止まる訳にはいかない。
必ず聖帝と対峙に、父の守ろうとしたものを守る。
それがエルモンドを失いながらも、自分と共にいてくれるリナ達に対してのノエルなりの決意だ。
そう思っていると、ノエルは何かに気付く。
どこからか手を叩く様な音が森に響いている。
リナ達もそれに気付き、一気に辺りを警戒する。
「おい、どうしたんだよ?」
「イトス、僕達の後ろに隠れて」
唯一気付いていなかったイトスも状況を理解し、ノエルの指示に素早く従う。
徐々に音は大きくなり、ノエル達の横の森から聞こえて来た。
「誰だ!? 出てきやがれ!!」
ライルの叫びに応える様に、森から一人の男が拍手をするように手を叩きながら出てきた。
「いや、失礼。 君達とそこの少年とのやり取りに少々胸を打たれてね」
「!?あんたは!?」
男の顔を見た途端、レオナの表情に緊張が走る。
レオナだけではない。
イトス以外の全員がその者の正体に気付き、一気に臨戦態勢になる。
何故なら、男の肩にはかつてノエル達と戦った機械鳥、アンヌの姿があったからだ。
「レオナ殿以外は初めてだったな。 我が名はギゼル・ラグノア。 聖五騎士団最高幹部の一人にして、魔甲機兵団の長、聖人ウリエルの名を冠する者」
ギゼルが拍手を止めそう言い放つと、リナは好戦的な笑みを浮かべる。
「漸く出てきやがったか。 こちとらてめぇと会いたくてしょうがなかったんだ」
「私も同じだよ魔王ディアブロ・・・いや、今はリナ殿と呼ぶべきかな?」
五魔を前にしてその態度を崩さぬギゼルはノエル達を見据える。
「君達には、随分アンヌや部下が世話になったからね。 長たる者、礼はしっかりせねばと思い参上した」
「けっ! よく言うぜ! こっちからすりゃ漸くてめぇに借りが返せるってもんよ!」
「フランクを傷つけようとしたこと、たっぷり後悔させてあげる!」
ライルは拳を打ち鳴らし、レオナは両手に剣を出現させ、クロードも周囲を警戒しながらリーテイアに鎧を展開させる。
「なるほど、やる気は十分というわけか。 だがその前に・・・ノエル殿」
呼ばれたノエルは、ギゼルの顔を見据える。
「念のため聞くが、素直に投降する気はおありかな?」
「ありません」
即答するノエルに、答えがわかっていたギゼルは小さく笑みを浮かべる。
「まあ、そう答えるだろうな。 ラズゴート殿すら退けたのだから、当然だろう」
「なら此方も1つ、何故正面から出てきたんですか?」
今まで散々策を使ってきたギゼルが、五魔の四人にノエル達を加えた布陣に正面からぶつかるのはあまりにもらしくない。
いくら自分が強くとも、必ず勝てるよう何かしら仕込んでいなければ出てくるはずがない。
ノエルの問いに、ギゼルはクククッと笑う。
「敵に真意を聞くとは、なんとも正直な方だ。 まあ、いいだろう。 理由は2つ。 これでも私は君達に敬意を払っている。 いくら五魔とはいえ、私の作戦と部下達をその少ない勢力で破り、あまつさえあのラズゴート殿の部隊を退けた戦果のは素直に称賛に値する。 ならば此方もその力に敬意を表し、正面から相対することにしたのだ。 そしてもう1つは・・・」
「!?皆! 避けろ!」
ギゼルの手に魔力が集まっていることに気づいたクロードの言葉に、皆その場から飛び退く。
「正面からぶつかっても勝てると見込みがあったからだ! せあ!」
ギゼルが右手をかざすと半透明の膜の様なものがリナ達に放たれた。
回避しようとしたリナ達だったが、範囲が広く避けきれずに全員被弾した。
「のあ~!?・・・てあれ? 痛くねぇ?」
ライルを含め、リナ達の体には傷1つもなく、毒や痺れといった効果もなかった。
不発かと思った瞬間、ガシャンという音と共にクロードの叫び声が響いた。
「リーテイア!! どうしたんだリーテイア!?」
クロードの方を見ると、リーテイアが地面に力なく倒れていた。
それはまるで糸の切れた人形の様だった。
クロードはなんとかリーテイアを戻そうとするが、すぐに自身の異変に気付く。
「な・・・魔力が、発動しない・・・」
「なんだと!?」
驚くリナは急いで自分も重力を出そうとする。
だがリナがいくら力を込めても何も起こらなかった。
「そんな・・・僕の魔力が・・・」
ノエルも同様に魔力が出ないらしく、リナ達は困惑した。
「これぞ我が力! どの様な強者であろうとその魔力を完全に封じる! それこそがこのギゼル最大の秘技よ!」
「ちぃ!? そんなんありかよ!?」
「うがあああああ!!」
リナ達が動揺する中、素早くジャバとレオナがギゼルに飛びかかる。
「おれ! 魔力関係ない!」
「あたしとジャバのこと、計算に入れ忘れてるわよ秀才さん!」
ジャバの拳とレオナの剣が迫る中、ギゼルはニヤリと笑った。
「勿論計算済みだよ、お嬢さん」
その時だった。
突如ギゼルの後ろから2つの影が飛び出してきた。
「ムッハ~!!一番首はこのシグマがもらった!! ティラノハンド!!!」
全身装甲の巨漢シグマの右腕が巨大な蜥蜴の頭に変化し、レオナに襲い掛かる。
「く!?」
両手の剣で防ぐレオナだったが、そのあまりの怪力に苦悶の表情を浮かべる。
「竜の劣化種ながら現在地上最強のパワーを持つ恐竜の力を再現した装甲だ。 たっぷり堪能してくれ」
「レオナ!」
「オ~ッホッホッ! 貴方の相手はこのイプシロンがしてあげましょう!」
貴婦人の様な姿のイプシロンは、その大きなスカートから2丁の大型の銃と取り出し、更に両手首と肩から無数の砲門を出現させると、ジャバに向け一斉射撃を開始した。
「うぎゃう!?」
「ジャバ!・・・このっ!?」
なんとかシグマを弾き返したレオナはジャバを助けるためイプシロンに向かう。
だがその時、上空から鳥のそれとは異なる飛行音が鳴り響く。
レオナが見上げると、鉄の翼を背負った男が上空から猛スピードで旋回している。
「ターゲットロックオン・・・ファイヤー!!」
デルタは羽の下から筒状の爆弾を出すと、一斉にレオナとジャバに向かって発射された。
「きゃあ!?」
「ぐがうあ!?」
直撃はしなかったものの、爆発によりレオナとジャバは吹き飛ばされる。
「今のは魔道爆雷筒、通称ミサイル。 先程のイプシロンのは魔力弾を発射する特製の連射式大口径銃だ。 遠距離戦を想定した私の自信作だよ」
「ちくしょう!!」
「姉さん!」
魔力が封じられているにも関わらず、リナはレオナ達を助けようと走り出す。
ノエルとライルもそれに続き走り出す。
だがそのリナ達の前に、一人の男が立ちはだかる。
「お前達の相手は俺がしよう」
純白の全身装甲を纏った魔甲機兵団総隊長、オメガが淡々とリナ達に言い放つ。
一方ラクシャダの方では、異変を察知したゴブラドは部下のゴブリン達と進軍しようとしていた。
「皆急げ! ノエル様達を御守りするのだ!」
「ぎゃう!!」
「どうしたジンガ?・・・!?避けろ!」
ジンガの意図を察したゴブラドの指示に従い、ゴブリン達は散開する。
瞬間その場にいくつもの矢が刺さり、爆発した。
「これは、まさか!?」
「ここから先は行かせない」
ゴブラドの視線の先には、ノエル達と何度も対峙してきたアルファが木の枝の上でボウガンを構えていた。
「貴様は!?」
「おっと、俺達もいるぜ」
すると轟音と共に地面から右手にドリルを付けた巨漢ガンマが、正面から槍を携えた無精髭の男ベータが姿を現した。
「く! 足止めか!」
「漸く復活したんだ。 ディアブロ達と再戦できねぇのは残念だが、存分に暴れてやろうってわけだ!」
ベータは槍を構え、ガンマも気合い十分というように地面を踏み締める。
「あなた達には恨みはないけど、ギゼル様の邪魔はさせない」
「それは此方も同じだ! ゴブリンの戦士達よ! なんとしてもノエル様達の元へ駆け付けるのだ!」
ゴブラドの号令と共にジンガは咆哮と共にベータに襲い掛かり、それに続きゴブリン達が攻めこむ。
今ここに、ノエル達と魔甲機兵団が開戦した。




