幕間 レオナとノエル
昨日投稿した話で書ききれなかった話です。
レオナの過去も出ます。
リナとイトスが話している時、ノエルはレオナと台所で料理をしていた。
「すみませんレオナさん。 こんな時に手伝ってもらって」
「ううん、いいの。 何かしてる方が気も紛れるしね」
レオナはニッコリ笑うと、リナ用のケーキをオーブンに入れた。
「後はクロードの大福とジャバのお肉だったわね」
「はい。 肉は軽く塩をまぶして準備しておきました」
「ありがとう。 じゃああたしが焼くから、ノエル君は大福の方お願いね」
「はい。 と言っても小豆はないから、何か代わりのものを・・・」
ノエルが物色する中、レオナは小さく笑った。
「ありがとうノエル君」
「え?何がですか?」
「あたし達の為にやってくれてるんでしょ? 悪いわね、気を使わせちゃって・・・」
「い、いえ。 僕に出来るのはこれくらいしかないですから」
自身の意図を言い当てられ少し照れるノエルを見て、レオナは笑い肉を焼き始める。
「あの、レオナさん」
「なに?」
「エルモンドさんって、どんな人だったんですか?」
レオナは少し手を止め、考え始める。
「ある意味あたしの・・・というか、あたし達全員の父親・・・てとこかしら」
「父親ですか?」
「そう。 もっとも本人はそんな気欠片もないけどね」
レオナは再び手を動かし始めた。
「前にも話したけど、エルモンドがあたし達を集めて五魔を作ったの。 その頃から皆なんだかんだ訳ありだったしね。 だから自分達を受け入れてくれたのが嬉しかったのよね」
「訳あり? レオナさんもですか?」
「そうよ。 なんせあたし、本当ならこの場所にいない人間なんだから」
「え? それってどういう・・・てうわっと!?」
驚いたノエルは、小豆の代わりに見つけたサツマイモを落としそうになり慌ててキャッチした。
「あたしね。 昔母親と二人暮らしだったの。 母さんもあたしみたいに鉄製のものを出せてね。 それでナイフやフォークとか作って売ってたの。 正直あまり裕福じゃなかったけど、それでも幸せだったな」
遠い過去を懐かしむ様に、レオナは語った。
「あたしもその頃から多少は能力は使えたんだけどね、その時失敗して自分の全身鉄で覆っちゃったのよ」
「解除は出来なかったんですか?」
「全然。 というか完全にパニクっちゃっててそれどころじゃなかったしね。 でも全身固まってるから当然動けないし、声も出せないし泣くことも出来ない。 おまけに鉄の固くて冷たい感触以外、何にも感じないんだもの。 しかも完全な暗闇の中よ。 よく自分でも狂わなかったと思うわ」
当時を思い出したのか、レオナの表情が若干暗くなる。
「それからどのくらい経ったか自分でもわからなくなった時、助け出してくれた人がいたの」
「それが、エルモンドさんなんですね」
レオナは静かに頷いた。
「エルモンドが見つけた時、あたしは露店商に売られていたそうよ。 しかも200年前の骨董品として」
「200年!? どういうことなんですか!?」
「エルモンドの話じゃ、あたしの状態は一種の冬眠みたいな形だったんだって。 全身鉄で保護して長期間生き長らえることが出来るようにする一族の能力らしいの。 結構年上でビックリしたでしょ?」
苦笑しながら話すレオナの姿に、ノエルは察した。
何故レオナが家族というものにこだわるのか。
200年経っていたということは、当然レオナの母親も既にこの世にはいない。
だからレオナは、かつて失った母親との幸せな時間を取り戻したかった。
暖かい温もりを失いたくなかった。
だからあれだけ家族というものにこだわっていたのだ。
「正直、最初は訳がわからなかったわ。 しかも長年鉄の中だったからろくに喋れなくなってたし、リナ達に会える体になるまで随分苦労したわ。 でも、エルモンドはそんなあたしにずっと付いていてくれた。 変人だったけど、いつもあたしを励まして、また前に進めるように手を差しのべてくれたの。 今こうしていられるのも、エルモンドのお陰なの」
レオナの懐かしさと寂しさが同居したような表情に、レオナにとってどのような存在なのか改めて知った。
レオナだけじゃない。
リナもクロードもジャバも、レオナと同じようにエルモンドに何らかの形で救われ、居場所を得たのだろう。
それこそ、エルモンドが父親と評される要因なのだろう。
「ほら、手が止まってるよ」
レオナは話ながらしっかり焼いていた肉を盛り付け終えると、話に霧中になり手が止まっていたノエルに笑いかける。
「大丈夫よ。 あたし達だって結構色々経験してるんだから、リナだって明日になればいつも通りに戻ってるわよ。 だから・・・今晩だけは、ちょっと許してね」
謝るレオナに、ノエルは頷いた。
「大丈夫ですよ。 ちゃんとわかってますから」
ノエルは笑顔で答えると、芋で餡を作り始めた。
リナが墓の前で動かなかった事を、レオナもクロードも咎めなかった。
その理由も今の話でわかったノエルに、それを止める理由などなかった。
そしてノエルは知っている。
大事な人を亡くした時には、必ずその人を想う時間が必要なことを。
レオナは「ありがとう」と言うと、ノエルと一緒に料理を続けた。
これで今年の投稿も終了です。
作品を読んでいただきありがとうございました。
来年も良ければお付き合いくださいm(__)m
それでは、よいお年を(^_^ゞ




