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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
42/360

潜入

時間が空いてしまい申し訳ありません。

久しぶりの投稿です(^_^ゞ


 村の奥にある偽五魔の砦、そこは地形を利用した堅固な物だった。

 左右と後ろは高い岩壁に囲まれ進撃は不可能。

 唯一の出入りが可能な正面には石垣の様に組み合わせた壁と見張り台、更に大砲や弩弓(どきゅう)という巨大な矢を発射する装置まであった。

 門の前には元ごろつきの見張りが二人、まるで兵士の様にその場に立っている。

 すると、見張りの一人が前方からやってくる集団を見つけた。

「止まれ! ここがどこかわかっているのか!? あの伝説の五魔様の居城だぞ!?」

 見張りの言葉に集団のリーダーと思われる黒騎士が前に出た。

「我々は五魔殿に目通りさせてもらいたくやって来た。そこを通してもらおうか?」

 黒騎士は尊大な態度で見張りに言った。

「なんだ、部下希望か。五魔様は今お忙しい。話は通しておくからまた後日・・・」

「部下ではない。私は五魔殿の勇名を聞き話をしに来たのだ。今会わせてもらおう」

「んだと!?てめぇ急に押し掛けて五魔様と話してぇたぁ随分舐めて・・・」

「貴様らこそわかっているのか? 話をしに来たとはそれ相応の目的があるということだ。 無論、そちらにも利がある話だ。 それをたかが見張り風情が私を怒らせ破談にすれば、五魔殿の怒りを買うのは貴様らではないのか?」

 黒騎士の言葉に見張り二人は驚き顔を見合わせる。

 その様子を見ながら黒騎士・ノエルは内心ヒヤヒヤしていた。

 ノエルの立てた作戦はこうだ。

 偽の五魔と協力関係を結ぶという名目で偽五魔と会い、その真意を聞くこと。

 勿論、本来ならそんなことをしなくともリナ達の力を使えばこの砦を制圧するのは容易い。

 事実、村で見た偽の五魔は見た感じ一般人より多少強い程度の実力しかない。

 だがノエルにはあることが引っ掛かった。

 村の老人の話ではこの様な事をするようになったのはこの数ヵ月。

 つまりその間に何かあったのでは・・・そう考えたノエルは、偽五魔の真意を知るため、あえてこの作戦を考えたのだ。

 今のノエルの態度も、ある程度大物であると向こうに思わせるための演技である。

 「さあ、わかったらそこを通してもらおうか?ちゃんと手土産も用意している」

「あら、どんな素敵な物かしら?」

 ノエルが声の方に視線を向けると、見張りの二人は声の主を見るなり慌てて姿勢を正した。

「る、ルシフェル様!?デスサイズ様!?何故この様な場所に!?」

「ヒッヒッヒッ、見回りだよ見回り。お前ら気を抜くとすぐサボるからな~」

 偽のデスサイズがからかう様にナイフを向けると、見回りは恐怖で顔がひきつる。

「お止め、はしたない。 ただの散歩よ散歩。 そしたらなかなかの色男がいたんでね」

 ルシフェルと呼ばれた濃い化粧の男はノエルに視線を向ける。

「初めまして、素敵な騎士さん。 あたしが五魔のルシフェル。 この子はデスサイズ。よろしくね」

 愛想良く挨拶するルシフェルの表情はニッコリ笑っているが、その目は此方を品定めしているようだった。

「お目にかかれて光栄だ。 私は、黒騎士とでも呼んでくれ」

「あ?名乗れねぇってのか?」

「お止めデスサイズ。 本名なんて小さなことじゃない。 それより・・・さっき目的とかこっちに理があるとか言ってたのが聞こえたけど・・・具体的にそちらはあたし達とどうしたいの?」

「・・・協力関係を結びたい」

「なんで?貴方の目的は?」

「仲間になら話せるが、部外者に話すつもりはない」

「あら、言うじゃない。 つまりそっちの目的と教えず協力だけを求めるってわけ?」

「無論ただではない。 協力関係を結べば私もそちらの目的の為に力を貸そう。 少なくとも私は、そちらの雑兵全員よりは力はあるが?」

「自信過剰なのね・・・嫌いじゃないわそういう男・・・」

 妖しく微笑む偽ルシフェルに、ノエルは鳥肌が立った。

「おい、それよりさっき言ってた手土産ってのはなんだ?」

 二人のやり取りをイライラしながら見ていた偽デスサイズがノエルを睨みながら言った。

「ああ、それなら・・・ライル」

「へい。おら、こっちだ」

「きゃ!?」

 ノエルの部下のふりをしているライルが手に持つ紐を引っ張ると、手を紐で縛られたリーティア、レオナ、そしてリナが前に出てきた。

 リナは引っ張られた勢いで地面に倒れ込むと、弱々しい瞳をデスサイズ達に向ける。

「うほっ!こりゃなかなかの上玉じゃねぇか!」

 偽デスサイズは現れた美女3人に目を輝かせ、偽ルシフェルはつまんなそうに息を吐いた。

「なに? 手土産ってこの小娘達?」

「無論。 男所帯だと聞いて、色々と必要だと思ってな。 もっとも、既に一人美女がいたようだが」

「あら、なかなか見る目あるじゃない」

「なに真に受けてんだよ、世辞だよ世辞ぐのひ!?」

 誉められ喜んでいるところにチャチャを入れた偽デスサイズの頭に偽ルシフェルの蹴りが飛んだ。

「次いらねぇこと言ったら・・・それ引っこ抜くぞこら」

「わ、わかった・・・わかったからそんな睨むなよ」

 先程と違いドスの効いた太い声で脅すルシフェルに、デスサイズは震えながら少し怯えながらも、気を取り直してリナ達を見た。

「しかしま~よくこんなに集めたな~。 この赤毛の嬢ちゃんなんか、ディアブロが好きそうじゃねぇか」

「いや・・・やめてください・・・」

リナはディアブロに顔を触れられ弱々しく抵抗する。

 10年近く似たような手でチンピラを騙していただけのことはあり、偽デスサイズは完全にリナがか弱い女の子と思い込んでいた。

「ヒッヒッヒッ。いい声で鳴くね~。ま、こいつはディアブロにやるとして、俺はこの茶髪をもらおっかな」

「止めて・・・あたしには夫が・・・」

 「人妻か。それもまた・・・」

下品な笑みを浮かべる偽デスサイズに対し、レオナはか弱い演技を続けている。

 が、ノエルはレオナの目が怒っているのに気付いてた。

 仮にも自分の名を語っているのがこんな男では気持ちもわかるが、暴走だけは止めてと祈るノエルだった。

「あんた変態丸出しじゃない。 あたしはこっちの体格のいいお兄さんが・・・」

 偽ルシフェルに色目を使われ、ライルの肌に鳥肌が立った。

「ん、そろそろ話を進めたいのだが?」

 流石にこれ以上向こうのペースに合わせると本当にここで一戦交えそうなので、ノエルは話題を戻した。

「あらごめんなさい。 そうね・・・とりあえずディアブロに会ってもらおうかしら」

「おいおい、いいのかよ?またベクレムがうるせぇぞ」

「あたし達の頭はディアブロよ。 あんなのの顔色なんか伺ってたらキリがないわ。ちょっとそこのあんた」

「は、はい!」

 成り行きをずっと黙って見守っていた見張りの一人が、急に偽ルシフェルに声をかけられ慌てて返事をした。

「先にディアブロの所に行って自分の部屋で待つよう伝えてきてくれる?」

「は、はい!すぐ行ってきます!」

 そう言って見張りは急いで走り出した。

「デスサイズ、あんたはその素敵なお兄さんと小娘達を広間に連れてって。 バハムートとジャバウォックもいるはずだから」

「お前はどうすんだよ?」

「彼を部屋に案内したらそっち行くわ。 ディアブロが話をつけるまでお酒でも飲んでましょ。 それで構わないかしら黒騎士さん?」

 ノエルが見ると、ライル達は小さく頷いた。

「わかった。 但し交渉が済むまで、まだその女達には手を出さないでもらおう」

「勿論。 つまみ食いなんてさせないから安心してね」

 偽ルシフェルが目配せすると、偽デスサイズは「しょうがねぇな」と言いながらライル達を連れていった。

「じゃああたし達も行きましょ」





 偽ルシフェルに連れられ、ノエルは砦の中を進んでいった。

「殺風景な所で悪いわね。 つまんないでしょ?」

「気にしていない。・・・先程話していたベクレムとは?」

「あたし達の付き人・・・みたいなものね。 ほら、今日村で見たでしょ? 仏頂面で五魔様のお通りだ~って言ってた偉そうなおっさんよ」

 ノエルはそこまで聞くと、村で五魔を見た時近くにいた男を思い出した。

 体格は細目だが体つきがしっかりしていて、鋭い目をしていた印象がある。

 と、同時にノエルは偽ルシフェルにあの時自分が村にいたことがバレていることに気が付いた。

「・・・気付いたのか」

「そんな鎧じゃ隠れたってわかるわよ。 と言っても、あんたに気付いたのはあたしとベクレムくらいかしらね。 ま、あんたが村であたし達見て、なんのつもりでここに来たかなんてどうでもいいんだけど」

「?どういう・・・」

 意図を図りかねているノエルに、偽ルシフェルは妖しく笑った。

「ま、ディアブロと話せばわかるわよ。 ほら、そこよ」

 偽ルシフェルの視線の先に、大きな扉が見えてきた。


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