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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
五魔捜索編
40/360

難航

 最後の魔人・ルシフェルを探し始めて既に2か月、ノエル達は行き詰まっていた。

 ジャバの鼻が効かない中、なんとかルシフェルの足跡を探そうと町に出て情報を集めようとするが収穫はゼロ。

 ジャバも鼻の代わりに鳥達にルシフェルを探すよう頼むが、それでもそれらしい人物は皆無だった。

「エルモンドの野郎・・・何やってやがんだ?」

 最近は会議室の役割を果たすようになった応接間で、リナはイライラしながらケーキを頬張っていた。

 因みにこのケーキはノエルではなくレオナ作。

 ノエルはあれから体調はすっかり回復し、以降レオナやリム達に助けられながらいつも通り家事をしている。

「そもそもエルモンドさんってどういう方なんですか?」

「変態だ」

「・・・え?」

 リナの答えに質問したノエルが混乱すると、レオナが補足した。

「エルモンドは元々ノルウェ陛下に遣えていて、あたし達五魔の最初の一人よ。 あらゆる知識を持っていてあたし達の知恵袋だったわ。 ・・・ただ・・・性格がちょっと変わってて・・・」

「だから変態だ」

「ちょっとリナ、チャチャ入れない! ・・・まあ、本の虫って言葉があるでしょ? 彼はそれの知識版なのよ」

「?どういうことです?」

「要するに、知識を得るために自分で体験しなきゃ気が済まねぇんだよ。 例えば危険だって言う毒沼がどのくらいの威力か知る為にそこに飛び込んだり、灼熱の火山の熱がどんなに熱いのかマグマに触ったりとか、とても正気じゃねぇよ」

「マグマって・・・ええ!?」

「な、変態だろ?」

 驚くノエルにやれやれと首を振るリナ。

「なんで・・・そんなことを?」

「本や人伝で知るのはただの情報、経験してこそ真の知識・・・てのが、あいつの信条らしくてな。 だから何か新しいことを知ると自分で確かめねぇと気が済まねぇんだよ」

「まあ、そのお陰で色々造ったり、相手の行動を推測したりとか出来たんだけどね」

「でもそれで敵の目の前で敵の作戦やら能力やらのいい点や改良点解説したりすっからしょっちゅう相手怒らせて大変だったじゃねぇか」

「・・・本人無自覚だったから余計達悪かったわね」

 リナとレオナが当時を思い出しため息を吐くと、ノエルは苦笑した。

「なんか・・・色々凄い人ですね・・・」

「おれ! エルモンド好き!おれの毛皮! エルモンドが綺麗にしてくれた!」

 窓からジャバが嬉しそうに語る。

「ま、あいつには色々助けられてッからな。 いりゃ確実に助けにはなるわな」

「まあね。 あたしもあの人には色々教えてもらったわね」

 なんだかんだ言いつつ、リナ達がエルモンドを認めているのを感じたノエルは、改めてエルモンドを見つける難しさを感じた。

 五魔の知恵袋ということは、当然聖帝に見つからない工作は万全にしているはず。

 恐らくジャバが匂いを見つけられないのもその為だろう。

 となると、地道に国中を探さなければならない。

 その間に聖帝が目的を果たしてしまったら・・・考えているノエルの耳に、ドタドタと走ってくる音が聞こえた。

「あ!姉さ~ん!! 大変だ~!!」

 外でリーティアと共に情報収集をしていたライルが血相を変えて部屋に駆け込んできた。

「うっせ~な! なんだよ?エルモンドでも見付かったのか?」

「いや・・・エルモンドっていうか・・・五魔全員揃ってんだよ!」

「「「・・・は?」」」

 言葉の意味がわからず3人は間抜けな声を出した。

「お前・・・頭でも打ったか?」

「んなもんいつも姉さんに殴られてったからぶろぁ!?」

「いらねぇこと言ってんじゃねえ!!」

 頭に拳骨を落とされたライルはその場にのびてしまった。

「かわいそうに・・・リナに殴られ過ぎてとうとうおかしく・・・」

「てめぇもいらねぇこと言ってんじゃねえ!」

 リナがレオナに反論していると、漸くリーティアが追い付いた。

「全くライルさんったら、慌てすぎですよ」

「あ、リーティアさん。 何があったんですか?」

「ええ・・・実は・・・どうも奇妙なことになってて・・・どうも五魔が全員この近くの村にいるって噂が流れてるんです」

「「「・・・は!?」」」

 リーティアの言葉に、ライルの時とは違う声を出した。

「ちょっと待て! なんでそんな話が出てんだよ!?」

「おれ! ここにいる!!」

「ちょっと落ち着きなさいよ二人とも! ・・・どういうことなのリーティア?」

「いえ・・・どうもこの周辺の村は五魔がごろつきや盗賊から守っているらしいんです」

「なにそれ?」

「リナさん達の偽物・・・てことですか?」

「そうなりますね」

 ノエルの質問にリーティアが答えると、リナは「マジかよ・・・」と項垂れた。

「よくいたなそんなもの好き・・・」

「まあ私達の名前は色々都合がいいんですよ」

「それで? その偽物がどうしたの?村を守っているならいいことじゃない」

 レオナの言葉に、リーティアは首を横に振った。

「それがそうでもないんですよ。 どうも最近近くの山岳地帯の村に砦を造って、税金としてお金や食糧を徴収したり、退治した盗賊とかを部下にしてるらしいんです」

「そうなんスよ姉さん!!」

 先程までのびていたライルが勢いよく起き上がった。

「そいつら姉さん達の名前語ってやりたい放題らしいんスよ! 俺はそれがムカついてムカついて・・・ここは本物としてぶちのめしに行きましょうよ!」

「・・・て言ってるけど、どうすんだノエル?」

 リナに急に聞かれ、ノエルは戸惑った。

「え?なんで僕・・・」

「今俺達の一番しなきゃなんねぇのはエルモンドを探すことだし、そんなパチもんに構ってる暇はねぇ・・・が、俺達はお前の意思に従ってここまで来た。 そいつらをどうするかもお前が決めろ」

 リナのまっすぐな言葉を受け止め、ノエルは思考を巡らせる。

「・・・その人達の所に行きましょう。 このまま放置する訳にもいきませんし、何より僕も、五魔を名乗って悪事をするのは許せませんしね」

 ノエルの答えに、リナはニヤリと笑った。

「よし! そんじゃいっちょ偽物退治と行くか!」

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