アジトへ…
今回は新キャラ登場です(^_^ゞ
ディアブロであるリナと思わぬ形で再会したノエルは「騒ぎになるだろうに消えるぞ」とリナに連れられ、町外れに来ていた。
「あの、リナさん」
「後にしろ。話はアジトに戻ってから・・・ほら、あれだ」
リナが指差した先には、小さな小屋があった。
だが近付くにつれ、ノエルは違和感を覚えだす。
「あの・・・リナさん?」
「なんだよ?」
「これ・・・小さな過ぎませんか?」
ノエルは足元の小屋を指差しながら言った。
そう、小屋は完全にミニチュアサイズで、とても生身の人間が入れるようなものではなかった。
「持ち運び出来て便利だろ」
「いや!そうじゃなくて!」
「ゴチャゴチャうるせえな。とにかく入るぞ」
そう言うと、リナは小屋のドアをノックした。
「おい。帰ったぞ・・・」
「姉さ~ん!!」
言い終わるよりも早く大声と共に小屋のドアが開いた。
すると中から男が飛び出し、リナに向かって飛び付いてきた。
瞬間、リナの拳を頭にくらい抱きつく前に男の頭は地面にめり込んだ。
ノエルはミニチュアの小屋から、筋骨粒々の大男が飛び出してきた事に驚きを隠せなかった。
殴られた大男は勢いよく頭を地面から抜いた。
「ぶはっ!?何すんすか姉さん!?」
「なにすんだじゃねえよライル!!なんでお前は毎回俺が帰るととびだしてくんだよ!?」
「だって姉さん帰り遅くて心配だったんすよ!!」
「余計なお世話だ!」
「姉さ~ん・・・ん?」
ライルが情けない声を出していると、ふとノエルの存在に気付いた。
「あ・・・こんにちは・・・」
「ああ~ん!?てめぇ何もんだこらぁ!?さてはお前、姉さんをたぶらかしぶふ!?」
ノエルを見るなり威嚇し睨みつけるライルに、再びリナの拳骨が降り下ろされた。
「てめぇはいちいちうるせぇんだよこのアホが!」
「ぐ・・・ぐふ・・・」
ライルは、黒いボブスタイルの髪に褐色の肌をしており、上半身裸で如何にも力自慢と言ったような男だ。
「悪いなうるさくて・・・」
「いえ、大丈夫です。あの、大丈夫なんですか?」
「気にすんな、いつものことだ。この馬鹿はライル。俺の雑用係だ」
「ちょっ!?舎弟って言ってくださいよ姉さん!つかこいつなんなんすか!?やけに姉さんに馴れ馴れしいっすけど!?」
「こいつは俺の昔馴染みだよ…魔帝関係のな」
リナの言葉にライルは表情を変えた。
どうやらディアブロの事は知っているようだ。
「魔帝って・・・あの?」
「ああ、ちょっと話があるから、中に入れてやってくれ」
「・・・分かりやした」
ライルは立ち上がると道を開け、ノエルに入るように促した。
「普通の家に入るみたいに扉に向かって歩けばいいんだよ。こんな感じだ」
どうすればいいか戸惑うノエルに見せるように、リナは小屋に近付いた。
するとリナは小屋に吸い込まれる様に入っていく。
ノエルは後に続くように近付くと、一気に体が引っ張られた。
小屋に入ったノエルは思わず目を見開く。
そこは小屋の見た目からは想像できないくらい広く、普通の二階家くらいの大きさだった。
「これって・・・」
「スゲェだろ?エルモンド…魔人ルシフェルな。そいつが造った簡易型移動宿だ。小せぇから持ち運びも便利だし敵にも見付かりにくい優れもんだ」
自慢げに話しながらリナは中央のテーブルの椅子に座る。
ノエルもリナと向かいの席に座ると、ライルがリナとノエルの前に男が紅茶を出してくれた。
どうやら客として認めてくれた様だ。
若干まだ目付きが怖いが。
「ありがとうございます」
ノエルは礼を言うと一口口に含む。
リナも同時に口にすると、二人揃って勢いよく吹き出した。
「だ、大丈夫すか!?」
「てめライル!渋すぎんぞこれ!どうやったらこんな味になんだよ!?」
「す、すんません姉さん!入れ直してきます!」
「いいよ!どうせ似たようなのしか出来ねぇんだから」
「め、面目ねぇ・・・」
ライルは申し訳なさそうにリナの後ろで小さく立っている。
少し気の毒に感じるノエルに、リナは「さてと・・・」と切り出した。
「本当なら俺に色々聞きてぇだろうが、俺もお前に聞きたいことがある。先にそっち答えてもらうぞ」
「・・・わかりました」
「よし・・・じゃあまずは、なんでお前が今頃一人で旅なんかしてるかってことだ。しかも俺達に力を借りたいってのはどういう意味だ?」
リナの言葉にライルが驚く中、ノエルは静かに語り始めた。
「そうですね・・・あれは大体一年くらい前の事でした・・・」
一年前・・・僕はあの屋敷で普通に暮らしていました。
その時は既に自分の素性も知っていましたし、魔帝の…父の死も漸く受け入れる事が出来ていました。
そんなある日、ある人が僕の屋敷に来たんです。
その人は父の側近だったアルベルト・ティアーズさんでした。
父が死んだ後、聖帝に実務能力を買われ魔帝側だったにも関わらず聖都で働いていたそうです。
アルベルトさんは悲痛な表情でこう言いました。
「ノエル様・・・お許し下さい・・・私は陛下の・・・貴方の父上の最後の命に背きます・・・ですが・・・もはや手はもうなかったのです・・・貴方を頼るしか・・・」
「アルベルト・・・あのおっさんか」
「知ってるんすか?」
「五魔として会ったことが何度かな。で、おっさんはお前に何を頼んだんだ?」
「・・・アルベルトさんは聖帝を止めてくれと・・・」
「聖帝を?どういうことだ?」
「リナさんは城の地下に何があるかご存じですか?」
リナは思い出すように考え込む。
「確か・・・祭壇だかがあるってノルウェのおっさんやエルモンドが言ってたような・・・」
「祭壇?なんのっすか?」
「俺も詳しいことは知らねえよ…ただノルウェのおっさんの話じゃ、千年くらい昔にいたなんかを封印した・・・て話だ」
「・・・なんかってなんすか?」
「知らねえっつってんだろ!」
リナはライルに拳骨を見舞った。
「で?そいつがどうした?化け物でも化けて出たか?」
「・・・ある意味正解です」
「・・・なんだと?」
ノエルはそのまま話を続けた。
その日アルベルトさんはある夜城の地下に誰かが二人の男に連れていかれる所を見たそうです。
普通なら気にしないんですが、その時一緒に聖帝フェルペスがいたそうです。
不審に思ったアルベルトさんがこっそり後を追うと、そこは例の祭壇でした。
フェルペスともう一人の男に連れてこられた男は祭壇の前に突き出されました。
すると、祭壇から黒い触手の様なものが伸びて、逃げようとする男を捕まえました。
触手は男を捕らえると何かを吸い上げるように動き、やがて男はどんどん干からびていき、まるでミイラみたいな姿になったそうです。
その時聖帝フェルペスがこう言ったそうです。
「もう少しで・・・この国を救える・・・」
「救うだと?奴が国を?」
リナはその言葉に不機嫌そうにしかめた。
「その後アルベルトさんは恐ろしくなりその場を逃げ出した後、祭壇の事を調べて僕の所に来たそうです」
「・・・で?アルベルトのおっさんはどうした?まさかお前に丸投げって訳じゃないだろ?」
「・・・アルベルトさんは亡くなりました」
「亡くなった!?死んだってことか!?」
ライルが驚き質問すると、ノエルは頷く。
「僕にその事を話して去った3日後・・・近くの川で水死体として発見されました」
「口封じ・・・てことか・・・」
「ええ・・・表向きには自殺でしたが・・・」
リナはチッと舌打ちすると、だんだん表情が険しくなっていく。
「あのヤロウ・・・ふざけやがって・・・」
「あ・・・姉さん?」
普段と違うリナにライルが声をかけると、その目は明らかに怒っていた。
「フェルペスの野郎・・・ノルウェのおっさんの事散々悪しき者に魂を売ったとかほざいてた癖に・・・今度は自分が隠れてなんかやってるだと?・・・おっさんが何のために死んだと思ってんだ!?」
怒りのままテーブルを粉々にしたリナにライルが飛び退く中、ノエルは静かに訪ねた。
「あの・・・リナさん」
「ああ!?」
「・・・父は・・・父さんが死んだのにはやっぱり訳があったんですね?」
ノエルの質問に、先程まで怒りを露にしていたリナは口をつぐむ。
「おかしいとは思っていたんです。父さんは自身も魔帝として強かったのは勿論、あなた達五魔までいた。それなのに聖帝により魔帝は倒された。しかも被害があまりにも小さい。一国を滅ぼすと言われたあなた達がいたにも関わらずです」
「・・・こまでは強くねぇんだがな・・・」
一瞬はぐらかそうかとも思ったが、ノエルの顔に、リナは諦めたように白状した。
「・・・そもそもノルウェのおっさんが魔帝なんて名乗り始めたのは、国を守るためだった」
「国を・・・ですか?」
「ああ・・・当時の国は周辺の国から侵略されていた。徐々に領土は占領され、ノルウェのおっさんが王になった時には建国した時の3分の1程度の領地しか残ってなかった。このままいけば確実に国は滅び、民は蹂躙される・・・そう考えたおっさんはあることを思い付いた。それが魔帝と五魔だ。おっさんは各地から俺みたいな特別強い連中を集め五魔を結成。そしてあえて戦闘時に圧倒的な力を見せ付け、相手に恐怖を与える戦いをさせた。お前が昔見た鎧姿もその一環だ。威圧感抜群の上正体も隠せるからな。そしておっさん自身は魔帝になった。5人の化け物の力を使う恐怖の魔帝にな。実際一番最初の戦闘では先陣を切って力を見せ付けた。魔帝はおっさんが国を守るために取った苦肉の策って訳だ。結果国はかつての領土を取り戻し、周辺諸国は侵略を中止した・・・だが・・・」
そこまで話すと、リナは表情を曇らせる。
「おっさんの計画はそれだけじゃなかった・・・」