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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
359/360

元凶

 タナトスの告白に、イトスやギゼル、ラミーアですら驚きで言葉を失った。

 特にイトスには、ジャンヌの兜の効果でタナトスの言葉が全て真実だとわかってしまう。

 タナトスは自分を神ではないと言ったが、その存在はまさに世界の理の一部であり、上に等しい存在と言っていいものだった。

「大分驚いてくれたみたいだね。 それでこそここまで隠した甲斐があったよ」

 今まで軽く見られがちだったタナトスはイトス達の反応にそれまでの溜飲が下がり笑みを浮かべる。

 そんなタナトスに対し最初に口を開いたのはギゼルだった。

「貴様が正真正銘、人智を超えた存在というのは理解した。 だがだからこそわからない。 いくら地上に憧れたからとはいえ、今まで管理してきた死者を弄ぶ様な行為をなぜ平気で出来る?」

「そこが君達の小さな所だよ。 なにせ僕の計画が成功すればそんな事気にする必要なんて無くなるんだから」

「なんだと?」

「君達が死を怖がり悲しむのは、死んで消えてしまうと思っているからだ。 まあ確かに、魂自体はそのままでも今までの中身が消えてしまうんだからその感情は正当だろう。 本人じゃなくても、大切な存在が別物へと変わってしまうんだから嫌がるのは当然だ。 なら、その死を無くしてしまえばいい」

「馬鹿な!? そんな事が出来る訳がない!!」

 ギゼルが動揺する中、ラミーアはある可能性に気付き表情を変える。

 それに気付いたタナトスは楽しそうにその言葉を口にした。


「冥界と地上を融合させる」


 瞬間、ギゼルとイトスが更に動揺し、ラミーアはやはりと言う様に目を細めた。

「そもそも冥界、冥府というのは不定形なものだ。 それを地上、というよりこの生の世界と融合させれば、死者も何もない。 決して滅びる事のない世界が産まれるんだよ」

「そんな事、可能なのかよ?」

 イトスがラミーアに視線を送ると、ラミーアは肯定する様に頷いた。

「実際融合してどうなるかはわからないけど融合自体は理論上は可能だよ。 ただしその為には複雑な魔術式を組み立てる莫大な時間と魔力がいる。 時間に関してはあいつにはほぼ無限にあるから問題ない。 そして魔力の方は、あたしの片割れを使う事でどうにでもなる」

「本当、君の存在を知った時は嬉しかったよラミーア。 魔術式は優秀な魔術師の魂を使役する事でなんとかなったけど魔力だけはどうしようもなったからね。 本当はあのまま死んでくれてれば操れて楽だったんだけど、お陰で余計な時間がかかっちゃったよ」

 そこまで言うと、タナトスは昔を思い出す様にラミーアを見つめる。

「本当に苦労したよ。 今日の為の人材集めもだけど、君を追い詰める為に色々しなきゃならなかったからね」

「どういう事だい?」

「言葉のままさ。 君がアーミラに乗っ取られる前に死を選ぶ様に、解決策を考え付きそうなバハムートを封じる必要があったからね」

「!? まさか、巨人族(ジャイアント)を全滅させてウォッキーを襲わせたのは・・・」

「僕に決まってるじゃない! 巨人族(ジャイアント)を手駒にするのもだけど、死んだ自分の仲間に襲われて狂ったジャバウォックを使ってバハムートと戦わせる為にね!」

 タナトスの告白に、ラミーアは体を震わせ動揺した。

 そんなラミーアを見てニヤニヤとしながらタナトスは更に続けた。

「ついでに言うと、ディアブロが魔界に閉じこもらなきゃならない状況を作ったのも僕さ。 魔力って無限に湧くと思ってた? 実はそうじゃなくて、総量は決まってるんだよ。 消費された魔力は冥界に送られて魂の様に循環して地上に戻るんだけど、その量を極端に減らしたんだよ。 お陰でディアブロはその問題解決の為に魔界に引きこもらなきゃならなくなって君達に協力出来なくなったって訳だよ」

 笑いながら言うタナトスに対し、ラミーアはショックを隠し切れない様子だった。

 魔族の魔力不足も、巨人族(ジャイアント)の悲劇も、竜族の衰退も、更に天翼族の天界墜落も、全てはタナトスが自分の助かる可能性を断つ為にした事だったのだ。

 自分の大切な者達に起きた悲劇が全て自分が原因と知り、ラミーアの心は闇に沈む様な感覚に襲われる。

「でも、まさかノーマークだったデスサイズが君の為にあそこまで動くなんてね〜。 あいつがいなければルシフェルはアーミラの封印も出来ず、君は驚異になる前に自死を選ぶと思ったのに。 本当ふざけた殺人鬼だよ。 でも今はあいつも僕の手のひらの上。 その上魔族も竜族も僕の思惑通りに動かざるおえない状態。 そう考えれば悪くない結果さ」

「ディアブロは、そのこと知ってんのかよ?」

「さあね。 なにかしら勘付いているだろうけどどうしようもないからね。 結局、お前達を片付けた後僕とアーミラの奪い合いをするしかないんだし。 ま、安心しなよ。 地上との融合が実現したら死んだ連中も地上に還れる。 そうすればつまらないいざこざも無くなって楽しい世界が待ってるんだ。 だから、安心して死になよ」

 タナトスは急接近し間合いを詰める。

 ギゼルは反応し右腕を構えるが直接掴まれ即座に折られる。

「グガッ!?」

「魔術を跳ね返す奴には物理だよねやっぱり」

『お父様!』

 アンヌはすぐにギゼルを抱え距離を取る。

 その間追撃されない様にイトスが斬りかかる。

 タナトスはそれを止めながら今度はラミーアを攻撃しようと手を伸ばす。

「させるかよ!」

 イトスはイフリートの炎とタイタンの怪力を全開にしタナトスを止め、ウンディーネの盾のから発生した水でラミーアを覆う。

 しかし当のラミーアは先程告げられた真相のショックからまだ立ち直れず動けずにいた。

「呆けんのは後だラミーア! 今はコイツを倒す事が先だ! そうすりゃディアブロ達とだって戦わずに済むかもしれないだろうが!」

「残念。 万に、いや億に一僕を倒せても意味はないさ。 急激に魔力をこっちに戻すと色々バランスが崩れるからね。 かと言ってバランスを考えながらじゃ間に合わないかもしれない。 ならアーミラを使う方が確実。 どの道和解なんて出来ないんだよ」

「随分口が回るな! 俺達の事を怖がってるくせにさ!」

「? 何分けのわからないことを・・・」

「お前がさっき使った炎とか冥府の力だろう!? つまり、同じ力を使うルシフェルならお前を倒せる可能性は十分あるって事だ!」

 イトスの指摘に、タナトスは微かに表情を変えた。

「だからルシフェルに昔の仲間をぶつけたり、さっさと俺達の心を折ろうとゴチャゴチャ言ってるんだろ!? ルシフェルと俺達が組んだら本当に倒される可能性が高くなるからな!」

「意外と頭が働くじゃないか。 流石エルモンドの弟子ってところか。 でも、少しお喋りが過ぎたね」

 タナトスは青白い雷を放った。

 イトスは盾で防ごうとするが、雷は盾を突き抜けてイトス本体を貫いた。

「がぁ!?」

「ただの雷ならそれで防げるんだろうが、指摘通り冥府の雷なんでね。 精霊の盾程度どうとでもなるんだよ」

 イトスの全身を雷が駆け巡り思わず膝をつく。

 その隙にタナトスはラミーアを狙う。

「お前が死ねばルシフェルは戦う意味を無くすからね。 安心しな。 すぐにみんなまた地上で暮らせるさ」

 タナトスはラミーアへと手をかざした。

 瞬間、砦の天井から何かが突っ込んできた。

 タナトスは慌てて距離を取りその何かを見た。

「よく我が君を守り抜いた。 貴様達にしてはよくやった」

 ラミーアの守護者、漆黒の堕天使ルシフェルが降臨した。

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