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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
350/360

旧魔王

「なんなら〜!!!」

 アクナディンはサンダリオンを3つに分割しベアードに斬りかかる。

 ジャグリングの様な不規則かつ多角的な攻撃がベアードを襲うが、その一つ一つを正確に杖で捉え受け流されていく。

「この様な攻撃にも関わらずこの重さ。 魔界であれば四天王に数えられてもおかしくはないですな」

「ただの杖で受け流しちょるくせに言いよるわ」

「ほぉ、良い目を持っているようですなミスターアクナディン」

 アクナディンと日常会話をする様な態度を取りながら、ベアードは後ろから刺しに来るエドガーの尖槍をも受け流す。

「貴方のその容赦の無さもいいですねミスターエドガー。 戦いにルールなど無いですから不意打ちもどんどんしてください」

「なら言葉に甘えようか」

 エドガーの態度に何かに気付いたベアードが杖を見ると杖の一部が凍っていた。

「おやこれは・・・」

風刃裂断(ふうじんれつだん)

 気配に気付いたベアードは咄嗟に杖を構えようとする。

 そして迫るダグノラの剣を受け流そうとするが、すぐに後ろに退き距離を取る。

「風を纏わせた刃ですか。 なるほどそれは受けられませんね」

 魔鉱すら両断する風の刃の性質に初見で気付いたベアードにダグノラは深追いせずにアクナディンとエドガーの近くで構える。

 ベアードは杖を見ると氷が少しずつ広がり、手まで伸びようとしている。

「これはもう使えませんね。 気に入っていたのですが」

 ベアードは残念そうに杖を捨てると少しだけ楽しそうにアクナディン達の方を見る。

「ミスターアクナディンが陽動で大きく動きミスターエドガーとミスターダグノラが防御不能な技で攻撃。 それもミスターマークスが敢えて前に出ずサポートに徹する事で他の皆さんが躊躇なく動けるという事ですか。 初めての共闘でしょうにお互いの特性をよく理解した連携ですな」

「参ったよ。 折角サボってるふりしてたのに見抜かれてるとはね」

 後方で杖を構えるマークスは苦笑しながらベアードの恐ろしさの根本を見た気がした。

 それはただの杖でアクナディンの剛力を受け流す技量でも、不意打ちに即座に反応出来る素早さでも、滲み出る魔力の大きさでもない。

 ベアードの最大の強みはその分析力。

 たったこれだけの手合わせでこちらの技の性質や狙いを瞬時に見抜かれた。

 元々の能力か長年戦い続けた経験から来るものなのかはわからないが、厄介である事には変わりなかった。

「君みたいなタイプが一番苦手なんだよね本当」

「ふふふ、そう言いながらなにか手を考えているのでしょう? 貴方の様な方は不利だろうとなんだろうと思考を止めないものですからね。 しかし、計算違いはする様だ」

「計算違い?」

「ええ。 貴方方は先程私を足止めすると言いましたが逆です。 今ミスターディアブロのいる砦には結界が張ってあり、それは私を倒さなければ解けない仕組みになっています。 つまり私を倒さない限り、ミスターノエル達は我らが魔王に辿り着く事は出来ない。 万一貴方方が私を倒して結界を解いたとしても、その間に我が軍がミスターノエル達に襲い掛かり消耗は免れません。 そんな状態でミスターディアブロに勝てると思いますか?」

「おどれはわしらを甘く見過ぎじゃ。 そがァな事でノエル達が止まる思うとるんか?」

「思っていませんよ。 しかし私に構っていればその分勝率は下がる。 そして私も元は魔王と呼ばれた者の一人。 その力、貴方方なら十分理解していると思ったのですがね」

 その時、ベアードは何かに気づき宙を見上げた。

 その様子に気付いたアクナディン達も同じ方向を見ると、何かがこちらに向かってくる。

「なんならありゃぁ!?」

「高魔力の塊? しかしあんなもの一体誰が?」

「この魔力・・・まさかッ!?」

 魔力に覚えのあったベアードはすぐにその正体に気が付き迎撃をしようとする。

 しかし間に合わず、魔力の塊はディアブロのいる砦の結界に激突した。

 衝撃と共に結界は砕け散り、魔力は砦へ直撃した。

「結界が、破れたじゃと?」

「という事は味方の誰かか? だがあんな余力がある者が今の私達にいるとは思えないが」

 ダグノラとエドガーが疑問に思う中、ベアードは迎撃に放とうとした魔力を消すと小さく舌打ちした。

「相変わらず型破りな方だ」






 砦内のディアブロの間。

 そこでディアブロは玉座に座りながら吹き飛んだ壁の辺りを冷静に見ていた。

「んぁ〜あ。 悪いねディアブロちゃん。 随分硬い扉だったんでつい入り方が派手になっちゃった。 下品だったかねぇ?」

 ディアブロを前にして首をゴキゴキ鳴らしながら軽くいうその影は、徐々にその筋骨隆々な体躯を現し始める。

 その姿を見ても、ディアブロは冷静に返した。

「貴様が行儀のいい時などあったかサタン?」

 名を呼ばれ、元最強の魔王サタンは不敵に笑った。

「随分失礼な事言うねぇ。 こう見えてもおじさんそれなりに気遣い出来る様になってんだから」

「貴様に最も似合わない言葉の一つだな」

「そうでもないよ。 何せ昔ディアブロちゃんがおじさんの城に乱入してきた時も同じ様な感じだったしね」

「忘れたなそんなものは」

「大人になっちゃってまぁ。 いやこの場合、“魔王様”になっちゃってって方が的確か」

 肩をすくめるサタンに、ディアブロは感情も薄く口を開く。

「何故今更ここに来た? まさか今更余が滅ぼした一族の敵討ち等とは言わんな?」

「それならとうの昔にやってますっての。 おじさんは、色々後始末をしに来たってわけよ。 魔王って名前に押し潰された可愛そうな後輩君の後始末をね」

「余と戦う気か。 敵討ちでもないのに貴様が面倒毎に首を突っ込むとは、地上とは本当に魔族を変える土地だな」

「お前を変えちゃったのは、おじさんの責任だけどね」

 サタンの空気が微かに変わったのを察知し、ディアブロはサタンに意識を向ける。

「あの戦いで、おじさんはディアブロちゃんが魔界を変えると感じた。 おじさん達みたいなバトル馬鹿とは違う、本当の意味で王になれる。 そして実際魔界は変わった。 秩序が生まれ、新たな価値観が生まれ、魔族達は新たな力の使い道を見つけた。 その過程で不穏分子を消した事も理解している。 だから火種になりかねないおじさんの一族滅ぼしたのも納得済みよ。 ただ、今回のは流石に悪手だと思ってね。 止めに来たんだよ」

「止められると思っているのか? かつての余にすら敗北した貴様が今の余に本気で勝てると? そこまで耄碌したか?」

「ま、正攻法じゃ勝てないだろうね」

 瞬間、サタンの背後から雷を纏った強風と青い炎、そして高魔力を宿した槍がディアブロへ向かって飛んでいった。

 その全てがディアブロに直撃した様に見えたが、煙が晴れると破壊されたのは玉座のみでディアブロは無傷で立っていた。

「まさか、貴様らは」

「あらあらあら、相変わらず頑丈そうね」

「ま、僕が出張ったんだからその位の力はないとね」

「はぁ、面倒臭いな」

 白いドレスを纏いハエの羽を背中に持つ貴婦人。

 赤い目を持ち残虐さと無邪気さを同居させた様な笑みを浮かべる少年。

 そして顔色の悪いスーツ姿の細身の男。

 その3人魔族を見て、漸くディアブロは微かに驚きの感情を表した。

「まさか、貴様らは」

「ハエの女王ベルゼブブ。 邪神ロキ。 そして地獄の騎士ルキフグス。 ディアブロちゃんに会う為の特別ゲストこと、おじさんの喧嘩仲間の旧魔王達で〜す」

 サタンはイタズラが成功した子供の様に挑発的な笑みをディアブロに向けた。

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