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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
333/360

暴竜VS地竜王2

 アースは今を生きる古竜の中でバハムートに次ぐ古参だ。

 その為バハムートからも信頼が厚く、現在竜族の中で唯一対等に話している事からもその事はよくわかる。

 そんな長い時を生きてきた彼だが性格は基本は良く言えば温厚、悪く言えば流れに身を任せ過ぎる所がある。

 彼の言う弱肉強食というのも、結局は世界の流れに逆らわないというある種の諦めの様な感情からくるものだ。

 この力はともかく自分達より優れた者が現れたならばそれに従う。

 そうやって世界は回っている。

 今度は今まで君臨してきた自分達竜が衰退する番なだけ。

 そうやってアースは現状を受け入れていた。

 だからなのか、目の前の小さな蜥蜴人(リザードマン)に興味が湧いた。

 普通の竜とは違う形で進化した遠い親戚の様なその種族の男が、力では圧倒的に劣るにも関わらず自分達の神と戦うと言っている。

 自分よりも弱く若い存在に過ぎないのになぜそうまで挑もうとする?

 無知故か、それとも他の何かがあるのか?

 珍しく好奇心が疼いたアースは、それを確かめる為真の姿へと変わっていった。






 ガルジは目の前をアースに珍しく体が震えているのに気付いた。

 竜の姿となったアースの巨体は、甲羅を背負った陸亀の様な姿だった。

 その甲羅には森の様に植物が生え、まるで大地そのものの様な佇まいは人間の姿の時に重く強い何かをガルジに感じさせた。

「ハッ! それがてめぇの正体化! 道理でトロ臭えと思ったぜ!」

 武者震いをしながら凶悪な笑みを浮かべるガルジを、アースは静かに見下ろした。

「この姿を見てまだ吠えるか。 愉快愉快。 ならば、どこまで吠えられるか試してみるか」

 アースは軽く前脚で地面を叩くと、ガルジの足元から地割れが起きる。

 ガルジは竜人化してすぐに宙に飛ぶが、広がった地割れは人も魔族も飲み込みそのまま閉じていく。

「空中なら安心と思ったか?」

 アースは甲羅の森なら蔓を何本も伸ばしてガルジの体に巻きつこうとする。

「くだらねぇ!!」

 ガルジは爪で伸びてくる蔓を切り裂きながらアースへと突っ込んでいく。

 だがその時腹部に衝撃が走る。

 ガルジが見ると何か巨大な種の様な物がまるで砲弾の様に腹に直撃している。

「わしが持つ名は地竜王。 だが実際は大地のみでなくそこに根付く植物も我が協力者となる。 まして、ここは土壌が良いからのう。 存分に力を振るう事が出来る」

 アースは背中の木々から種の砲撃をガルジに向けて浴びせ続ける。

 ガルジはそれを避け、切り裂きなんとか突破口を見つけようとする。

 すると今度は真下から蔓が伸び始める。

 見ると避けて地面に落ちた種の砲弾が芽を出し、ガルジに向かって伸びていく。

「言ったじゃろう? ここなら存分に力を奮えると」

 真下から伸びた蔓はガルジの足に絡み付くとその隙に更にアースから伸びた蔓がガルジの体に巻き付いていく。

「この、ウザってぇ!!」

「そうがなるな。 せっかくこちらに引き寄せてやろうというのに」

 アースは蔓を引き甲羅の森の中に引き込もうとする。

 抵抗しようとするがガルジはそのまま森の中へと引き込まれる。

「くっ、そが!?」

 ガルジは力を込め蔓を切り裂くと、そのまま周囲の木を切ろうとする。

 だが急に意識が遠のきそうになりよろめいてしまう。

「な、なんだ?」

「そこの花粉を吸えばほとんどの連中の意識が飛ぶ。 そしてそのまま木々の栄養となるわけじゃ。 お主もそのままそうなるといい」

 ガルジが膝をつく感触に、アースは少々ガッカリしながらやはりなと思った。

 弱肉強食は覆らない。

 抗おうと大きな流れの前には意味を成さない。

 ならば流れに身を任せるしかないのだ。

 もはやガルジの事など眼中にないアースは、そのまま力を使い周囲の者達を狩り尽くそうと歩き出そうとする。

「舐めんなっ亀ジジィが!!」

 すると突如ガルジの声が響き、同時に甲羅の上から熱線が放たれる。

「これは、ブレス!? 馬鹿な! 蜥蜴人(リザードマン)如きが竜のブレスを会得するなど!」

「てめぇみてぇな枯れたジジィと一緒にすんな! こっちはな、ぶっ倒してぇ野郎が大勢いんだよ! てめぇ如きで足止めされてたまっかよ!!」

 ガルジが更にブレスを吐き出すと次々と木を焼切り、その熱で木が燃え出していく。

「い、いかん!」

 アースは土を操り甲羅の上へと降り注がせ火を消そうとする。

 ガルジは降り注ぐ土を避け上空に飛ぶと息を吸い込む。

「これでどうだジジィ!!」

 ガルジは三度ブレスを吐くとアースの頭に直撃させる。

 鋭く熱量の高い一撃にアースは血を流しグラつく。

「まだ、この程度ッ!?」

 踏ん張ろうとするアースの頭に更に衝撃が走る。

 ガルジが爪を前に出し回転しながらアースの頭を抉っていく。

「終いだぁ!!」

 抉られた脳天から血が吹き出し、アースの巨体はゆっくりと倒れていった。

「ヒャ〜ッハハ〜!! やっぱ肩慣らしにもならねぇな!! シャア! このままバハムートの所に殴り込みと行くか!!」

 飛び去っていくガルジを、アースは倒れたまま見送った。

「全く、結界の事を忘れておるとは、なんちゅう単細胞じゃ。 それに破れておるわしが言えることではないが」

 負けてなんとなくアースはなぜ竜が、というより自分が人に負けたのか理解した。

 人の持つ抗おうとする力。

 困難な状況や敵だろうと往生際悪く最後まで抗い、そしてそれを超える力を手に入れる。

 それは自分を含め竜が持たない性質だった。

「時には抗う事も必要か。 じゃが、結果は変わらん。 わしを倒せても、フレイザーを倒すのは、出来ん・・・」

 アースはそのまま倒れ意識を失った。

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