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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
332/360

暴竜VS地竜王

 水楼とリヴァイアの戦っていた頃、巨大な津波が発生したのを見て地竜王アースは白髪の頭をポリポリとかく。

「やれやれ、離れとって正解だったか。 しかしリヴァイアにあそこまでさせるとは、人もなかなかやりおる」

「よそ見してんじゃねぇクソジジイ!!」

 ガルジは爪を出してアースの頭に振り下ろす。

 アースは防ぐ様子もなくそのまま頭に受けるが、少しも効いている様子はなかった。

「元気な小僧じゃ。 お主位の子竜はそうでなくてはのぉ」

「ガキ扱いすんじゃねぇ!!」

 ガルジは連続で爪を繰り出す。

 最高硬度の魔鋼ですら切り裂く自慢の爪だが、アースには全く効いていない。

 それどころかまるで子供と戯れるかの様な態度でまるで戦う気が無い様に見える。

 ガルジはそんなアースの態度が頭に来てしょうがなかった。

「てめぇ! やる気あんのかこら!?」

「ないぞ」

「はぁ!?」

「わしの役目はお主らをバハムートに近付けん事だ。 じゃったらこうしてお主と戯れとれば、後は勝手にフレイザー達が片付けてくれる。 それに人と魔族どちらが勝とうが、勝った方を潰さんといかんからのぉ。 体力温存じゃ」

 明らかに残りの二人とやる気の違うアースに違和感を覚えながらも、ガルジはそれ以上に完全に自分を舐めているアースにブチ切れた。

「てめぇ、いい加減にしやがれ!!!」

 ガルジは全身を変化させ竜人化させた。

 翼と尾を生やし、力も体格も大きく上がったその姿に、アースは感心した様に唸った。

「これは驚いた。 まさかここまで先祖返りしておった者がおったとは」

 ガルジはアースの頭を掴むと地面に叩き付け、そのまま地面を削りながら押し付けていく。

「くたばれ!!」

 そして飛び上がると尻尾を使いアースのに叩きつける。

 地面に亀裂が入る程の衝撃がアースに直撃するが、ガルジは直ぐに違和感に気付く。

「やれやれ。 一端の戦士にはなっとったか。 小僧には違いないがな」

 アースは太い尻尾を掴むとガルジの体を振り回し始める。

「戦士ならば、多少まともに相手をせんと礼に失するな」

 アースは先程のお返しと言う様に尻尾を掴んだままガルジの巨体を地面に叩き付けた。

 全身強固な鱗に覆われているガルジですら、その衝撃に息が詰まる。

(何度も受けるのはやべぇ!)

 そう感じたガルジは敢えて竜人化を解いて尻尾を消す事によってアースの拘束から逃れた。

 掴んでいたが急に無くなりアースが軽く前のめりになるのを見逃さず、ガルジは爪で防御力の低そうな目を狙う。

 だがその手はアースにすぐに掴まれる。

「ほほ、なかなか機転が効く。 ただの暴れん坊と思っておったが意外と頭を使いよる」

 感心するアースはガルジを放り投げると落ちてくるのを見計らい地面を踏み締める。

 すると地面が隆起してガルジの腹部に当たり吹き飛ばした。

 鱗でガードしたガルジはなんとか体勢を整えて着地して構える。

 だがアースは追撃する様子もなく、のんびりとガルジの様子を観察していた。

「ふむ。 防御力もなかなか。 リザードマンにしておくのは惜しいのぉ」

 アースの様子に、ガルジは怒りより違和感の方が大きくなる。

 自分を舐めているだけならまだわかる。

 今の攻防でそれだけの力があるのはわかるし、ダメージらしいダメージを与えられていない。

 実力の差は明白。

 だとしてもこれは竜族の存亡を賭けた戦いでもある筈だ。

 体力温存だと言っても、あまりにも気迫というものがない。

 それは完全にガルジを舐めているのとはまた別の理由がある様に感じた。

「てめぇ、一体何考えてやがる? まるで俺だけじゃなく全部がどうでもいいみたいなツラしやがってよ」 

「ほ、意外と鋭いのぉ。 まあこれでも全くやる気がないわけじゃないんじゃが」

 本心を言い当てられ弱ったと言う様に頭を掻きながら、観念した様にアースはその場にドカッと座った。

「わしはな、本当言うと竜族が滅びても構わんと思っとる」

 意外な言葉にガルジは少し驚くが、すぐに可笑しそうに笑い出した。

「ヒャッハッハッ! なんだそりゃ!? 随分薄情な野郎じゃねぇか!」

「世というものは弱肉強食が常じゃ。 優れたもんが生き残り、劣っとるもんが滅びる。 いかに強かろうが竜より人が優れとったから竜は滅びかけとる。 それだけの事よ」

「弱肉強食か! 嫌いじゃねぇが、なら益々わからねぇな! ならなんでてめぇはここにいる!? 負け認めてんならなんで戦いに参加してんだ!? 勝ってその状況ひっくり返してぇからじゃねぇのか!?」

「バハムートへの義理と言ったところか。 奴とは昔からよくつるんでおったしのぉ。 にも関わらず全てを背負わせてしまった。 ならわしだけ逃げるわけにはいかんじゃろう」

 淡々と語るアースの言葉は、既に全てを諦めている様だった。

 バハムートが動こうがアーミラを手に入れようが竜は滅びる。

 それは避けられない事で仕方ない事。

 完全にそう割り切り、ただ義理というだけで戦いに参加した。

 そんなアースの態度が気に入らず、ガルジは笑うのを止め舌打ちした。

「はっ。 なんだくだらねぇ。 とんだ腑抜けジジィと当たっちまったな。 これじゃバハムートとやり合う肩慣らしにもならねぇ」

「おかしな事を言う小僧だ。 わしに傷一つ付けられとらん癖にバハムートとやる気か?」

「誰が傷つけられねぇって?」

 そう言うと、アースは頭に小さな傷が付いているのに気付く。

 ガルジの猛攻の内の一撃が、微かだが確かにアースの硬さを上回っていた。

「こりゃ驚いた。 まさかわしに傷を付けるとは。 しかし、こんな掠り傷程度付けるのがやっとのお主では、バハムートとは戦いにすらならんじゃろうが」

「ハッ! んなこと誰が決めたよ!? 俺は俺が気に入らねぇ奴らをぶちのめす! 俺より強かろうがなんだろうが、最後に勝てば俺の勝ち! 竜のバハムートもクロードもアーサーもカイザルも、全員纏めて俺がぶちのめして俺が一番になる! その為なら何度だってやってやらぁ!!」

 この大陸の命運を賭けた戦いの中堂々と自分本位な事を言い放つガルジに呆気を取られるアースだが、ふぅと小さく息を吐くとゆっくり立ち上がった。

「全く、ここまで馬鹿で自己中心的な男も珍しい。 じゃが、嫌いではないのぉ」

 するとアースを包む空気が変わり、ガルジは後ろに飛び退いた。

「ガルジと言ったか? 少しお主に興味が湧いた。 お主が本当に竜の神に届くかどうか、ゆるりと試してやろうか」

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