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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
330/360

忍びVS水竜王1

 水楼がクナイを構えて向かっていくと、リヴァイアはその場から動かず水の槍を形成して水楼の顔を貫いた。

 すると水楼の体が霧散し、同時に周囲に濃い霧が立ち込める。

 更にリヴァイアの手に霧に紛れた水の刃による傷が付けられる。

「人間らしい姑息な手ですね」

「姑息結構。 我々忍びにとって目的を果たす事こそが最優先。 その過程で罵られるなら、それこそ我等の誉れだ」

 水楼の声が終わると、霧の水滴が刃となりリヴァイアに襲い掛かる。

 しかしリヴァイアは動じる事なくただ静かに立つのみだった。

「なるほど、理解しました」

 瞬間、リヴァイアに向かう水の刃が消え、同時に霧も全て消滅した。

 姿を顕にした水楼は再び霧を生み出そうとするが空気中の水分を操る事が出来ない。

「これはッ!?」

「私の手に傷を付けたその技量は評価しましょう。 ですが、私相手に水で戦おうというのは愚かの極みですね」

 リヴァイアは先程よりも水流の塊を2つ生み出し水楼にむけて放った。

 水楼はまさに水の龍といえるその水流を避けながらなんとか術を発動させようとする。

 が、空気中の水分は水楼の術に答えず寧ろリヴァイアに引き寄せられていく。

「何故だ!? 何故術が使えない!?」

「どこまでも愚かですね。 同じものを操るならより技量の上の者が支配権を得るのは道理でしょう。 ですからこんな事も可能です」

 リヴァイアは技量の差を見せつける様に水楼が作ったものと同じ水の刃を作り出し飛ばしていく。

 水楼はクナイで逸らそうとするが、クナイが当たる瞬間に弾けて水の散弾となり水楼を襲う。

「ぐっ!?」

 水楼はなんとかそれを振り払うが、体から血が流れ思わず膝を付きそうになる。

「人にしてはしぶといですね。 とはいえ、やはり数に頼らねば人は私達に敵わない様ですね」

「随分と舐めてくれるな。 まだ俺は力の全てを見せていないというのに」

「あら、それはこれの事ですか?」

 すると水楼の体内で内臓に斬られる様な痛みが走り、口から吐血した。

「先程から私の体内を切裂こうと必死だったので、お手本をお見せしようかと思ったのですが、やり過ぎてしまいましたか?」

 水楼は自身の狙いが見抜かれていた事に驚き膝をつく。

 大規模な術が使えないと慌てるフリをして、リヴァイアが吸い込んだ僅かな水分を操る事に全意識を向け、その体内を切り刻もうとしていた。

 だがそれも通じず逆に体内を斬られた。

 しかもリヴァイアは文字通りその場から一歩も動いていない。

 その事実は肉体のダメージ以上に水楼に打撃を与え、そしてリヴァイアの実力が自分以上と認めざる負えないものだった。

「これだけの力を持ちながら、他者に従うとは。 一体、貴様らのバハムートとは何なんだ?」

「決まっています。 バハムート様は我等の神であり導き手。 尊敬すべき先達であり真に竜を纏める崇高な存在なのです」

 バハムートに対する崇拝にも似た感情を顕にするリヴァイアだが、そこで表情が少し曇る。

「ですがそのせいで、私達はあの方に全てを背負わせてしまった。 たかだか1500年程度の眠りの間、一族を守れずここまで衰退させてしまった。 あの方に認められた存在としてあまりにも不甲斐なく情けない体たらく。 あまりにも優れたあの方に頼り過ぎていたのです。 ですから、私達も覚悟を決めたのです。 あの方にどこまでも付いて行き、今度こそ本当の意味でお支えすると。 その為に、私はあの不敬な男を始末しなくてはならないのです。 貴方には申し訳ありませんが、これで終わりにします。 とはいえ、人の身で単身私に挑んだ無謀さに免じ、何か言い残す事があれば聞きましょう」

 自身の決意を語りトドメの水の槍を作ったリヴァイアに見下される中、水楼は俯いた顔を少しずつ上げていく。

「そうだな。 貴様の覚悟とやらはよくわかった。 お陰で一つわかったことがある」

「あら、それはなんですか?」

 そう言って上げた水楼の顔はマスク越しに笑みを浮かべていた。

「貴様ら竜は人を舐め過ぎだ」

 瞬間、リヴァイアの足元から赤い刃がその体を切り裂いた。

 突然出てきた赤い刃に戸惑うリヴァイアに更に刃が迫ってくる。

 リヴァイアは後方に避け刃をかわし、その正体に気付く。

 水楼傷口から出た血が細い線の様に自分の足元まで流れてきていた。

「いくら技量があろうと、自分の体の一部だったものなら俺が操れるのは道理だろう」

「貴方、まさかわざと傷を?」

「いや。 だがそれが勝利に繋がるならなんでも使うのが俺の主義でな。 先程も言っただろう? 姑息だろうがなんだろうが目的を達成する事こそ我等の誉れだと」

 水楼は手に付いた血を飛ばすと鋭い針の様になりリヴァイアに飛んでいく。

 リヴァイアが水の壁でそれを防ぐ中、水楼は更に口を開く。

「貴様は結局何も理解していない。 人は弱い。 だから工夫をする。 困難を乗り越える為、大切な者を守る為、あらゆる手段を考え、進化してきた。 貴様らは元々の強さに自惚れそれを怠った。 それが竜の衰退した原因だ。 それを理解出来ない限り竜の衰退は止まらないし、貴様の神とやらの支えにもならない」

 淡々と述べる水楼にリヴァイアは目を見開くと、突然水の壁を消し血の針を自ら体で受けた。

 突然の行動に驚く水楼だが、それ以上にリヴァイアの空気が変わった事に警戒を強める。

「随分好き勝手言ってくれますね。 しかし、礼を言いましょう。 確かに私は貴方を見下し過ぎていた様です。 ですから、本気で貴方を押しつぶして差し上げます」

 リヴァイアの足元から巨大な水柱が吹き出しその全身を包み込む。

 そして咆哮が聞こえると、水柱から美しい青い鱗を持つ巨大な水竜が姿を現した。 

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