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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
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竜の進撃


 ライル達がヒュペリオスと戦うより少し前、クロードとリーティアはその砦に向かっていた。

 魔族やワイバーンを蹴散らしながら進んでいくと、竜達が飛び交うその砦の様子にそこに誰がいるのか推測する。

 ほぼ間違いなくいるのは魔竜バハムート。

 大陸中の竜を従える竜の神とまで言われた知恵ある竜。

 自分の異名にもなっているその名の本家がいる場所を前に、クロードは意識を集中する。

「さてと、まず挨拶と行こうかリーティア」

「ええ、クロード」

 二人は魔力を集中しフレアランスを放った。

 しかしフレアランスは結界に弾かれ、砦には傷一つ付かない。

「厄介だな。  中央以外にもう一つ結界とは」

 ジークに乗ってクロードの近くに降りてきたカイザルはその結界を見つめる。

 アルビア城を覆う結界を解くにはなんとしても砦にいるミューの仲間を開放せねばならない。

 なのに更にまた別の結界に砦が覆われているのは戦力的、時間的にも大きなロスになる。

「向こうは人より長い歴史を持つ魔族や竜だからね。 あの規模ならあの位の強度の結界を張る位なら出来るだろう」

「だがどうする? 壊せないとなるとどうやって中に?」

「結界なら術師か何か術の要になる物がある筈。 それを消せば破れる筈なんだけど」

「ほぉ、目の付け所はいいな」

 声と同時に飛び退くと、クロードとカイザル達がいた場所に炎が吹き出す。

 炎が収まるとその場に高い魔力を持つ3人の人物が立ち塞がっていた。

「魔族? いやこの感じは、竜の上位種か!?」

 カイザルの指摘に恰幅のいい老人は感心した様に唸る。

「この姿のわしらを見分けるか。 これはこれは、流石我等が同胞を従えてるだけはあるのぉ」

 感心する老人とは裏腹に、逆立った燃える様な髪をした若者は忌々しそうにカイザルとクロードを睨みつける。

「貴様如きがその竜に跨がるとは。 どんな手を使って誑かした人間?」

「ジークの事か? 別に誑かしてはいない。 彼と私は一心同体のパートナーだ」

 ジークも同意する様に吠えると、若者は目を血走らせる。

「貴様っ! その竜がどういう竜か分かって・・・」

「お止めなさいフレイザー。 彼も自分の意思であちらに付いているのです。 それも我等が神に逆らう覚悟を持ってね。 それを否定するのは彼に対する侮辱に繋がりますよ?」

 女神の様な女性に嗜められ、若者は言葉を飲み込み下がった。

「名乗りもせず失礼しましたね人の戦士達。 私はバハムート様に仕える三竜王が一体リヴァイア。 以後お見知りおきを」

「同じく地竜王アースじゃ。 よろしくのぉ小僧共」

「同じく炎竜王フレイザー。 俺は覚えなくていいぞ人間共。 どうせこの場で死ぬんだからな」

「丁寧な挨拶感謝するよ。 本来ならこちらも名乗り返すのが礼儀なんだろうけど、そちらには不要の様だね」

「ええ、不敬にも我が神の名を受け継ぐ者よ。 特に貴方達の事はよく知っています」

 言葉は丁寧だが敵意を滲ませるリヴァイアに、クロードは苦笑する。

「やれやれ。 どうやら私達は貴方達に余程嫌われている様だ。 まあ、理由は理解出来るけどね」

 自分達が神とまで崇める存在の名を語る不敬者と同族、恐らくリヴァイア達からしても同格に位置する竜を乗りこなす者。

 そんな相手を見れば敵意を抱かない訳がない。

 もっとも、そんな相手でもあくまで冷静さを保っている彼らの精神性の方がクロードにとって脅威に感じられた。

「では、不敬にも我が神に挑む者達よ。 貴方達の推測通り、あの結界はある条件を満たせば消えます。 逆に条件を満たせなければあの結界を打ち破るのは不可能とお思いください」

「条件を教えてくれるって事は、それさえ満たせば私達が進むのを認めてくれるって事かな?」

「勿論。 しかしそれは不可能です。 何故ならその条件とは私達を倒す事なのですからね」

「随分余裕じゃないか。 人数的には4対3で不利なのはそっちじゃないかな」

「ふふふ、青いのぉ、人のバハムートよ。 数程度問題ではない事くらい気付いとるくせに、わざと会話を伸ばしてこちらを見極めようとするとはなんとも青い。 しかしそういう所は嫌いではないがのぉ」

 意図に気付かれたクロードは、それよりもアースの次の行動にすぐに意識がいった。

「カイザル君!」

 クロードが叫ぶとカイザルはジークと共に上昇。

 同時にアースは地面を両手で掴むとちゃぶ台返しの様にひっくり返した。

 地面毎ひっくり返された事でクロードはバランスを崩しながらもリーティアと共にすぐに空へと脱出する。

 自分達が立っている地面をそのままひっくり返すアースの怪力に驚いていると、次にクロード達を水流が襲い掛かる。

「リーティア!」

「ジーク!」

 クロードとカイザルが名を呼ぶと二人はそれぞれフレアランスと雷撃で水流を粉砕する。

 水辺でもないのに巨大な水流を作り出したのがリヴァイアの能力と気付いたクロード達はすぐに次が来ると思い周囲を警戒する。

「どこ見てんだよ?」

 声がした方を見ると空中にいるクロード達より更に上でフレイザーが巨大な火球を作り出していた。

「蒸発しろ人間。 貴様らには悔いる時間すら惜しい」

 フレイザーが火球を投げようとするとクロード達は迎撃しようと魔力を高める。

 すると、周囲に霧が立ち込め始めた。

「? リヴァイアなんだこの霧は?」

「私ではありません。 かと言って彼らの能力でもないようですが」

「せりゃあ!!」

 瞬間、フレイザーの脇腹に勢いよく蹴りが打ち込まれた。

「ぐっ!?」

 いきなりの奇襲で完全に不意をつかれたフレイザーは火球を消すと蹴りを入れた相手を見た。

「何者だ貴様!?」

「ふん。 クロード達の事を知りながら妾の事を知らんとは、トカゲ共は情報収集が怠慢と見える」

 蟲人の女王リリィは挑発的な笑みを浮かべそう言うと、フレイザーは目を血走らせ怒りを顕にする。

「トカゲ? 貴様は俺達竜をトカゲと言ったか!?」

「己らが頂点と驕っておる様な愚物などトカゲで十分じゃろう」

「きさっ!?」

 挑発するリリィに気を取られていたフレイザーを今度は重い何かが掴みかかっていった。

「悪いが共に来てもらおうか」

 蟲人最強の戦士であるヘラクレスが角でフレイザーを挟み込みそのまま遠くへ連れ去っていった。

「リリィ陛下!」

「あやつは妾達に任せ、そち達は行くが良い!」

「蟲人か。 こりゃまた珍しい者が出てきたもんじゃ」

「ヒャ〜ッハッハッ〜!!」

 上空に気を取られていたアースは腕を出し迫って来る爪を防いだ。

 凶悪な笑みを浮かべて現れたその男にアースはまた珍しそうに唸る。

「今度は蜥蜴人(リザードマン)とは、流石地上の連合軍だけあって色々おるもんだ」

「余裕ぶってられんのも今の内だぜジジィ!! バハムートの前の肩慣らしに細切れにしてやらぁ!!」

 アルビアの暴竜ガルジは手応えのある獲物と見て猛攻を開始する。

「ガルジ殿!」

「これは一体・・・」

「さっさと行け。 貴様らが足止めされれば、折角手を組んだ意味がない」

 霧に紛れた聞き覚えのある声に、クロードは驚きながらも小さく笑った。

「すまない。 借りという事にしておくよ。 行こうカイザル君」

 カイザルも察したのか、ジークに指示を出しクロードとリーティアと共に砦の方へと飛んでいく。

 それを見送ると、リヴァイアは霧の中を見つめた。

「なるほど。 この霧は貴方のせいという事ですか」

 すると霧からクロードの弟である霧の里の忍び、水楼が現れる。

「俺の位置を特定するとは、流石竜族といった所か。 それよりも、あいつらを見逃していいのか?」

「構いませんよ。 貴方をすぐに消せば追い付きますから」

「それは無理だな。 貴様はここで俺に倒されるのだからな」

 クナイを構え、水楼はリヴァイアへと向かっていった。

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