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五魔(フィフス・デモンズ)  作者: ユーリ
聖魔最終決戦編
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最終決戦へ

 話が纏まった後、移動砲台改め移動要塞の建設はすぐい始まった。

 関係各所にすぐに手配し、必要な物資と人員の選出を行った。

 プラネからはドワーフの職人とドルイドの魔術師、更にサポート用のドリアードと力仕事担当のトロール達。

 アルビアからは魔甲機兵団の技術者達。

 ラバトゥの石動兵(ゴーレム)職人。

 ルシスの魔術師。

 ヤオヨロズからカラクリ技師と霧の里の人形技師達。

 そしてセレノアと蟲人、ルシフェルの天翼族達から各労働力となる人員を集め急ピッチで作業は進められた。

 作業自体は実にスムーズだった。

 その一番の要因はラバトゥの石動兵(ゴーレム)

 かつて魔族による襲撃の時に使った移動用石動兵(ゴーレム)バステド。

 それを数体利用する事で専用の石動兵(ゴーレム)を新たに作り出す必要がなくなった。

 元々国民を避難させる為に作られた事もあり軍を乗せて行軍させるのにも適している上、大きさ、広さ共に十分。

 後は砲台設置作業と軍用に各種調整を行えばいいだけだ。

 魔術による付呪や各種亜人の特性を活かした事も手伝い作業日程は大幅に短縮。

 結果約2日で多連式の砲台付き移動要塞としてのバステド5機が完成した。

 その完成により心配されていた一般兵士の士気も回復し、物資の搬入が済み次第イグノラへと進軍が開始される。





 ノエルは自分が乗り込むバステドの上にいた。

 もうすぐ物資の搬入が終わる。

 そうしたらすぐにでも進軍となる。

 そうなれば後戻りは出来ない。

 正真正銘の最終決戦となるだろう。

 そんな事を考えながらノエルは静かにイグノラの方を見つめる。

「何一人でしんみりしてんだよ?」

 振り向くと、そこにはリナがいた。

 リナはノエルに近付くと左腕をノエルの首に回してからかう様に軽く締める。

「り、リナさん苦しい」

「また一人で考え込んでんじゃねぇだろうな?」

「そんな事しませんよ。 ただ、どう転んでもこれで終わるんだなと思っただけです」

「終わりだ?」

「ええ。 少なくとも、ラミーア関連から始まった旅は、ここで終わる。 それだけは確実ですからね」

 それを聞くと、リナは納得し腕を離した。

「今考えるとお前もお人好しだよな。 禄に知りもしねぇ親父の側近に頼まれてこんな無茶始めやがったんだからな」

 ラミーアに関する生贄を見てしまったノエルの父だったノルウェの元側近アルベルト。

 彼がノエルを頼ってきたのが全ての始まりだった。

「そこまで人は良くないですよ。 ただ、父さんの意思を僕なりに守りたかっただけです」

「本当、単純なんだか、思い切りがいいのか」

「その単純な男に最初に力を貸してくれたのはリナさんですよ」

「うるせぇよ」

 照れた様にそっぽ向くリナに、ノエルは懐かしそうに笑った。

 おしとやかなただの少女のフリをしていたリナを助けようとして、逆に救われた。

 その後ライルが仲間が加わり、クロードとリーティア、ジャバにゴブラド達にラクシャダ、レオナ、そしてイトスとエルモンドが加わり、ついにはラグザ達亜人達とプラネを作り上げ王を名乗った。

 ラバトゥやルシス等の大国の王とも会い、とうとう敵対していたエミリア達アルビアと対決し今は共に歩んでいる。

 たった一人で始めた旅でこれだけの事が起こったのだ。

 それがじきに終わるとなると、なんとも不思議な気持ちになる。

「でもよ、お前もたまに腹黒かったよな? 最初クロードの事を金で雇おうとしたりよ」

「誰を雇うって?」

 声がして再び振り向くと、クロードとリーティアにジャバ、そしてレオナとライル、イトスが立っていた。

「決戦前に二人きりでデートなんて、なかなか余裕じゃないか」

「デデ、デート!?」

「んだノエル!? 姉さんと二人きりでイチャコラとかどういうつもりぶぎゃ!?」

「てめぇもわけわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!! つかお前らなんの用だコラ!?」

「なんか二人がこんな所でしみじみ語ってるのが見えてね〜。 いいムード邪魔しちゃった?」

「邪魔とか意味わかんねぇってのアホレオナ!?」

「なによバカリナ!?」

「ウガウ! 二人とも喧嘩やめる!」

 ライルの脳天に肘鉄を喰らわせレオナに喰ってかかるリナ、そしてそれを仲裁するジャバといった光景になんとなく懐かしさを覚えてノエルは笑った。

「たくよ。 決戦前だってのに緊張感ねぇな」

「と言いつつしっかりも付き合ってるでしょ」

「まあな。 つうか、ここんとここうやって俺達だけで集まんのもなかったしな」

 考えてみればそうだった。

 エルモンドがアーミラを復活させてから、クロードとリーティアはヤオヨロズに行き、他の皆も各所の救援や修行。

 集まっても他にもやる事が多く、こうして話す機会などなかった。

 こうやってみんなとドタバタと騒いでいたのが当たり前だったのに、随分短期間で変わったものだ。

 まあ、いい変化も当然あったが。

「相変わらず賑やかですね皆さんは」

 その変化の一つであるリーティアが楽しそうに笑顔で話しかけてきた。

「リーティアさんはこういうの苦手ですか?」

「いいえ。 自由に動けない時から見てましたから。 寧ろ漸く混ざれて嬉しいくらいです。 やっとノエル様達ともちゃんと話せますし」

「あんまりこっちにかまけてるとクロードが焼くぞ?」

「散々人の体を好き勝手動かしていたんですからいいんです」

 その言葉に何かがグサッと刺さった様に反応するクロードを見て、リーティアはいたずらっぽく笑った。

 二人のこういう姿を見れる様になって、ノエルとイトスは同じ様に笑った。

「おいノエル! ヘラヘラしてねぇでお前もこいつに言ってやれ!」

「残念! あたしはあんたと違ってノエル君に叱られる様な事はしてません!」

「喧嘩売っといてよく言うよこの野郎!」

「二人とも似た者同士だと思うけどぬが!?」

「「ちっとも似てない!」」

 二人から脳天に一撃もらい再びライルは悶絶する。

「俺、魔族とやり合う前にこの二人にやられるかも」

「ライル大丈夫! ライル強い!」

「はいはい。 リナさんもムキにならない。 レオナさんもすぐ挑発しないでくださいね」

 ジャバに励まされるライルを見て、ノエルも漸く二人を止めた。

 すると、ノエル達の頭にラミーアの声が聞こえてきた。

『坊や達。 準備が終わったよ。 みんなが集まり次第すぐに出るから、そろそろあんたらも降りてきな』

 ラミーアの声に全員の空気が変わった。

 だがその中で、ノエルは穏やかな笑顔のまま、皆の方を向いた。

「じゃあ、この続きはこれが終わったらということで」

「その時は、ノエルの料理付きでな」

「俺ケーキな」

「ええ。 だからその為にも、みんな無事に帰ってきてくださいよ」

 皆がそれぞれ返事をし、ノエル達はエミリアやラミーア達と合流し、それぞれの砦に向かうバステドに乗り込んでいった。

 最期の戦いを終わらせる為に。

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